薔薇咲く  有川知津子

ときどき写真がとどく。メールでとどく。

写真だけがとどく。件名も本文もない。

もちろんときどきお礼の返事を書く。

ありがとう、とか、きれいだね、とか。

それで、それきりになる。
そんなことが年に数回ある。

ところが、昨日届いたメールには、本文があった。

 「何とか咲きました」

わずか8文字の本文。

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            《昨日届いた写真。蔓薔薇のアンジェラ》

アンジェラは、私が選んだ。

潮風の吹きぬける島の庭に育ってくれそうな薔薇を調べて。

選んで植えて島を出た。

あとはずっと父が世話をして、ずっと母が眺めている。

  
  蔓薔薇の咲きそろひたるひと房を仰ぐ父をり海辺の庭に


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# by minaminouozafk | 2017-05-17 05:11 | Comments(7)

毎週水曜日は和裁の日。

今は祖母の箪笥にあった古い龍郷大島を仕立て直している。



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                     龍郷大島の裏を取り、解体。洗ったのち、アイロン。

                     再び、背縫い、脇縫い、衽を縫い付けたところ。

                     胴裏に深い緋の八掛を縫い合わせて今回は終了。





私の着物歴は3年目。外出するときはほぼ着物。洋服で出かけようと思っても、新しい服を買っていないので、結局あきらめることになる。その点、着物はいい。流行がないので、季節さえ外さなければ何十年前のものでも着用可。実際、私の着物の多くは祖母や、母、叔母、知人からのいただきものだ。




洋服を着ていたころは、買ったその足で補正屋さんに持ち込んでいた。抜け首、なで肩、扁平でくびれのない胴、太い手脚…。この身体で洋服を美しく着こなすには、洋服自体に立体感を盛ること、そして、ハイヒールでボディバランスを整えること、これが必須であった。若いうちはそれも楽しかった。しかし50も半ばになった今、目まぐるしく変わる流行を追うのすら面倒だし、扁平幅広のエジプト足を細いヒールに押し込んで、腰痛、肩凝り、頭痛に苦しむなんて真っ平である。ではカジュアルな服装を、と思っても、志垣太郎似の舞台顔には似合わない。



そんな私の救世主が着物。洋装には欠点となる身体的特徴が、和装には理想的条件である不思議。非常に安価なウールの着物を着ていても、見ず知らずの方からお褒めの言葉をいただくことしきり。すれ違いざまに呼び止められて、「うちの箪笥の着物、もらって下さらない?」と言われたこともある。(もちろん鄭重にお断りしました。)着物がきっかけで生まれるコミュニケーションはなかなか独特で面白い。




「でも着物って着るのが大変でしょう?」

「あんなに紐で締めて苦しくない?」

ええ、たしかに。

着始めたころは1時間半かかっていた着装も、今はどうにか15分。振袖などの見せる着物は補正も丁寧に、作り上げなければならないだろうが、紬やウール、木綿の着物はいくら高価であってもカジュアルライン。ざっくり、楽に着ればいい。紐も、締めるというより、押さえる感じ。お端折りを作る腰紐だけは、背中側の第4脊椎できゅっと締め、お臍の上あたりでしっかり結ぶ。身体のサイズは実は毎日違う。洋服のウェストサイズは変えられないが、着物は纏い方ひとつでサイズ調節可能なスーパークローズだ。



                        古い結城縮の単衣に科布(しなぶ)の帯。

                        科布は、科の木の繊維で織った布。

                     科布は現在、生産数が少なく、高価な素材となっているが、

                          この帯は暖簾からのリメイク。

                  長さが足りないのでうちにあった麻のテーブルランナーを縫い付けた。

             要するにただの幅30センチ、長さ3メートルちょっとの布。これでも帯になる。着物って自由。





        むらきもの今日の在り処を探りつつ胸ひも腰ひも打つ位置を決む




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# by minaminouozafk | 2017-05-16 01:00 | Comments(7)


実家から株分けしてもらった赤いガーベラが花ざかりです。昔ながらの素朴な赤い花。花言葉は「神秘」「かぎりなき挑戦」。


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 ゴールデンウィークに植えたトマトや胡瓜、茄子、ピーマンなどの苗もすくすく大きくなってきた。おや、茄子の葉っぱがちょっとレース状に。葉っぱのうらを見ると、やっぱり天道虫の幼虫が。成虫も1匹飛んでいる。正確にいうとテントウムシダマシあるいはニジュウヤホシテントウと言うらしい。每年、忘れずにやってくる。


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3年ほど前に植えたレモンの木にはじめて花が咲いた。うれしい。たしか、ちょっと前、庭に今年はじめての揚羽蝶が飛んでいるのを窓越しに見た。いるいる、いい匂いを放って咲いている白い花のそばに黒いアゲハの幼虫が。せっかく発見したのだが、しのびなくて殺せない。だから每年、食べられっぱなし。


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花の後なかなか実にならなかった絹サヤ、よく見るとあちこちに実をつけていました。空豆はもうちょっと先。絹サヤはさっとベーコンと炒めて青臭さをたのしもう。



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茎が枯れてきた玉葱も収穫。小ぶりだが、しっかりしている。そのままスライスして、鰹節とポン酢で。


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ついでにジャガイモも試し掘り。茹でたてをバターで。


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 せっかくなので久しぶりにデッキにテーブルを出す。長い長い5月の夕暮れ。冷蔵庫にはタコとトマトのマリネが冷えている。ワインもビールも。キビナゴの一夜干しをさっと炙るのもおいしい。すこしだけ草取りを終えた庭を眺めつつとりあえずビールを開ける。


種まけば芽ばえ実れりこの国のゆたかな水と土と太陽


ななみ



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# by minaminouozafk | 2017-05-15 07:27 | Comments(7)

藤棚の下で 大西晶子





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アメリカCNNから「日本の最も美しい場所31選」に選ばれた〈河内藤園〉が北九州市八幡東区の河内貯水池の近くにある。

北九州で育った私だが、娘から聞くまで、一度も噂すら聞いたことが無かった。母が住んでいたケアハウスから車でほんの十分ほどの所だったのに。


娘はインターネットで知ったと言う。

一昨年は、外国人観光客の団体がどっと来て「藤を見るのに道路が渋滞し、5時間かかった」などという話を聞いた。ところが、昨年は見物客が比較的に少なかったらしい。

今年は424日に用があり八幡に行ったので、足を延ばし行ってみた。カメラを持っていなかったので、お見せできないが、まだ蕾が大半だった。その日の入場料は500円、園の入り口で払った。

ゴールデンウィークの間はコンビニで1500円の前売りチケットを買った人だけが入場できるとのこと。

団体のバスは、以前からの予約済みのもの以外は入れないらしい。

団体観光客が増え過ぎて、藤の根が踏まれ傷むので、入場者を制限しているとのことだった。

ゴールデンウィークの後、花の咲いた状態を見たくなり、510日にまた出かけた。朝、ホームページで確認すると、前売りのチケットを買わなくても、現地で券が買える。

入場料は1000円だった。

最盛期は1500円、盛りを過ぎると1000円、ほとんど蕾の時は500円。値段設定がリーズナブルだ。



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少し散り初めていたが、長い虹色の花のトンネルや、藤の花房をかき分けながら歩く広い藤棚の下、ドーム型の藤ハウス?の中では花の香にむせそうだ。ともかく藤の多彩と種類の多さに驚き、美しさを堪能した。

その日、中国語を日本語よりも多く耳にしたが、皆うっとりと花を見上げたり、カメラに収めている。噂に聞くようなお行儀の悪い人もなく、ここでは皆、藤の花を静かに楽しんで居た。

「中国人の観光客は皆お行儀が悪い」は偏見だったと恥じる。

国に帰って、日本の藤が美しかったことを思い出し、日本は良い国だったと思ってもらえたら嬉しい。




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 七色の藤のトンネルとほり抜け藤棚の下の花迷路ゆく

 
 風ふけば藤のはなぶさ浪になり藤棚の下は花弁のしぶき



      
 

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# by minaminouozafk | 2017-05-14 07:00 | Comments(6)

 私は虫が苦手なことは以前、このブログに書いたことがあるが、実はもう一つ鳥もあまり得意ではない。それほど街中育ちではないし、鳥に嫌な思い出があるわけでもない。群舞するフラミンゴは美しいし、北海道の自然の中で見たオオワシやオジロワシには厳かな気分にさせられた。ただ一つ共通して苦手なのがその足である。触ったことはないが、硬そうなうろこ状にみえるのが駄目なのである。

歌を詠むようになって、まわりの方々が花木、動物、鳥などについて多くの知識を持たれておられることに感心させられている。今までの生活では鳥であれば、カラス、鳩、雀程度の分類で支障はなかったが、やはり少し興味を持って苦手を克服していかなければいけないと思っている。


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 最近、その取っ掛かりとなるかもしれないことが起きた。一年以上前になるが、明け方のぼんやりとした耳にカツカツと軽い金属音が聞こえてきて、何事かと音のする方を見ると雨戸のサッシに雀が止まっていた。あとで見てみるとサッシのすみに鳥の糞がたまっている。これは雀さんがここで休憩をしているのだと思いエサ台を取り付けた。その時は糞を片付けたのがよくなかったのか雀の訪問は減っていったのだが、最近また時折り来ている気配があったので試しにご飯粒を置いてみた。

来ました、来ました。一羽、二羽とやってきてご飯粒を咥えては飛んでいく。しばらくするとまたやってくる。カーテンの後ろからスマホを差し出し撮影することが出来ました。間近に見ると目はまん丸で可愛いし、台に止まる直前の羽を広げたホバリングも格好いい。

 もしかするとこの雀さんたちが、鳥嫌いを克服する突破口になってくれるかもしれないとひそかに期待している。

 

 餌台に飯おくわたしは願はくは「雀のお宿」の良きおばあさん


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# by minaminouozafk | 2017-05-13 09:35 | Comments(7)

四王寺山散策 大野英子

少し遡って、ゴールデンウィークに入る前、四王寺山を散策した。
もう、何年も前に<歩かんね太宰府>というイベントの中から、政庁跡から大野城跡~増長天基礎石群~岩屋跡などを弁当持参で巡る7キロ(6時間)コースに、ハイキング気分で参加した。
一度ガイドさんと歩けば後は個人で楽しめるかな、くらいの軽い気持ち・・・だった。しかし、獣道のような険しい道も多く、まだ健脚だった頃とは言え、政庁跡に戻った時はヘロヘロで、絶対個人では無理と悟った。
太宰府市主催の毎年実施されるイベントだが、その後両親の病でそれどころではなく年月は流れ、今は膝の痛みや足の痺れで、長時間歩くことは無理となった。

それでも、散策なら大丈夫。県民の森から車道沿いに宇美側へ下る。

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百間石垣。大野城最大の石垣で、表面だけでなく内部まで石を積めた「総石垣」構造。

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水が流れる隙間(水門?)も見える。

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石垣と車道を隔てる脇の流れ。自然に出来たとは思えない岩の形状は、石垣作りのために切り出された跡かもしれない。この四王寺山には多くの石垣跡がある。全てが手作業だった時代を思うと、気が遠くなりそう。

どんどん下ると脇道から東に登る北石垣がある。その途中に、私の大好きな場所がある。
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見返りの滝。小さな滝だが光の射し具合が気にいっている。

小流れの脇には小さな石仏がずらり。

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どの石仏も良いお顔をしていて見飽きない。

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枯葉に埋もれるように〈四王寺33カ所石仏第20番札所〉とあった。後になって調べると四王寺山には土塁線上を中心に三十三体の石仏があるようだ。寛政12(1800)に西国霊場の霊土を集め建立された事が判明したとのこと!

写真の石仏は新しいもののようだが、いつか33体の石仏を探して巡りたい。

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両親の墓参りの後の月に一度の遠出、県民の森に戻るまで約一時間、フィトンチッドにたっぷりと浸って歩いた。やはり自然っていいな。

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新緑の楓。今ごろは、楓のみどりも濃く勢っていることだろう。

まばら雨降るやまみちに差し伸べる楓若葉の小さき手あまた


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# by minaminouozafk | 2017-05-12 06:52 | Comments(7)

ブログ記念日⑧

今日は第8回目のブログ記念日。


萩往還は桐の花の盛りを迎えています。

新緑のみずみずしい今月は新しい命や花嫁さん、また、こどもの幸せを願うレポートが多く綴られたように思います。

「短歌は祈りだと思う。」とおっしゃった方がいました。

大切な人たちと過ごすふつうの日々の幸を祈りつつ、言葉の力を信じつつ、歌を詠んでゆきたい…と思います。


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写真は萩往還の桐の花。かつては女の子が生まれると桐を植えて、結婚する際に箪笥を作って嫁入り道具にする風習があったといいます。そして『桐の花』は北原白秋の第1歌集の名前。コスモスにゆかりの深い花です。



くるりん   鈴木千登世


くるりんと世界転ずる不可思議の力あるなり生まるるといふは

瀬戸内の光あまねし閉づる目の彼方に光る海を感じぬ

笑ひゐる一匹をらん鯉のぼり若葉の風に身を洗はれて

さやかなる風に吹かれて詩を聴きぬ中也の声のひびきを思ひ

()()()り終はり無人のステージにゆらめきてをり声の余韻は



水鏡   大野英子


今もなほこころに住まふ猫を抱きまあるくなつて今宵も眠る

いくつかの死に占めらるるわが生のおぼろになりゆくうつつのくらし

満開のさくら、菜の花、麦畑、春いろ満ちる水郷のまち

紋白も揚羽もくわんぎのはねおとをたてるや春のはなばな巡り

道真(みちざね)の嘆き映せし水鏡(みづかがみ)いま花嫁のはぢらひ映す



まつ白の羽   栗山由利


薄紅のさくらさらさら手のひらにうけむとすればさらふ風吹く

旅立ちの足袋の形のさくらばな青空に舞ふ朝風吹きて

生魚(なまいを)に振りむきもせず家猫は贅沢グルメのカリポリを喰む

はじめての一歩を踏みだす靴の端につけてあげたいまつ白の羽

若夏の人になりたしひるがへる青いスカーフ肩にまとひて



鏡の中   大西晶子


明日は土にかへる桜の花びらが御寺の庭をうすべにに染む

大き足で地面を踏みてめぐりたり若葉あかるき〈桜公園〉

倉庫から出したる母の鏡台におしろいの香がほのかに残る

婚の日の母をかざりし鼈甲の櫛に彫られし菊の金色

父を恋ひ紅ひく母のわかき顔見えぬか母の鏡の中に



たいせつなこと   百留ななみ


石畳に散り敷く桜よいしよよいしよ越冬斑猫ふみしめてゆく

生まるるはたいせつなことていねいに誕生仏に甘茶をそそぐ

いまほどの人間せはし、むくむくし大山椒魚のひとりごちたり

花のこる青葉のさくらに11羽あつまりてゐる花を喰ふ鳩

あるがままなる大山椒魚その口に寄りたる生のみパクリいただく



空の奥行   藤野早苗


のびしろはまだまだあるぞ筍のてんかちの指す空の奥行

山鳥の尾のしだり尾の花房はひそかに山を領しむらさき

ラベンダー紫藍、翠緑 女王になることなくて50年過ぐ

結実の時を思はず今を咲け苺の花は地にほしいまま

わたくしを眼前に置きてみづからの闇を開きぬ白き蔓薔薇



大瞬間   有川知津子


この道をゆくは六度目このひとと会ふは七度目春の雨ふる

カワニナの上にカワニナその上にカワニナカワニナ島の春昼

散る花の大瞬間を待つてゐる黒きカメラにあそぶはなびら

馬上から川を見下ろす鷗外の姿おもへば強きかぜ吹く

うながされヴェールをはらふ花婿よおぢいちやまには長すぎるキス(4月23日)



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# by minaminouozafk | 2017-05-11 07:00 | ブログ記念日 | Comments(8)