何気なくネットオークションを覗いていたらちょっと気になる着物発見。私の着物の多くは祖母、母、親族、友人から譲り受けたものなのだが、ネット購入品も少なからずある。サイズ、特に身丈、裄丈が合っていて(自分で補正できそうなものも可)、自宅で洗えるもの、そして想像していたものと違っていてもまあ仕方ないと済ませられる価格のものしか購入しないと決めている。

そんな厳しい条件をクリアした一枚。
信頼できるネットショップの出品で、サイズは良し。単衣の紬。よく驚かれるのだが、私は単衣なら紬は洗う。袷を洗うと「袋になる」と言って、表と裏の収縮率が違う関係で、裾がもたついてしまうが、単衣ならそれがない。多少縮んでも清潔になる方がいいし、しかも、たいていの場合、縮むことはない(私見です)。色柄も好み。というか、これ、ひょっとして紅花紬じゃないのかなあ?という印象。以前、これとよく似た反物を呉服屋さんで勧められたことがあった。画像ではよくわからないけれど、黄色、緑、紫の色素が紅花染ならではの優しくて自然な色合いだし、織りの中の節の感じがなんとなく似ているのだ。うーむ、どうするか。

価格は問題ない。いや、逆に問題か。安すぎるのだ。商品紹介にはとても丁寧に現状説明がされていて、かなりダメージがあるらしく、着物としての着用はお薦めできず、材料としての購入を、とのことだった。価格、知りたい?……、英世一枚です。まあ、これなら失敗しても後悔はないし、実際材料として何かには使えるだろう、で、ポチる。翌日入金をすませ、待つこと二日。

届いた包みを解くとほのかな保管臭が(笑)。問題のダメージを確認すると、うん、確かに確かに。下前に当たる右身頃なら問題ないが、上前になる左身頃に深刻な染みが多い。糸力も抜けていて、あちこち綻びており、裾は擦り切れ、袖付けも切れている。もう着用は無理なレベルだが、しかし、あきらめきれない魅力がある一着だ。

綻びてはいるものの、仕立てがうまい。かなり古くて傷んではいるが、愛用の一着だったことがわかる。ヘビロテのあとが見える。そして実物を見てやはりこれは紅花染では?という気持ちを強くした。このままでは着られないけど、何とかして着たい。どうしても着たい。そう思ったらもう止まらない。着物を解き、洗濯し、濡れているうちにアイロンをかけて布目を整える。織りの布は裏表を返すことができるので、身頃の左右を入れ替える。擦れ切れた裾は切り取る。問題は袖付けの切れ。かなり大きく傷んでいる。カケツギの費用は出せない。アイロンで補修布を貼り付けるか。そして、少し裄は短くなるが、切れた部分を内側に折り込んで袖を付けるか。とにかく何とかしなくては。
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解き洗いしたパーツを完成予想図的に配置。
好みの色柄。
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袖付け部分。
ダメージ、深刻。
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身頃部分のシミ。
下前にくるよう入れ替える予定。


はっ、私何してるんだろう。英世一枚で買ったがために、逆に、出さなくていい欲をかいているではないか。恥ずかしい。でもこの着物、何とか甦らせたいんだよね。明後日、和裁の先生に相談してみよう。あー布フェチの血が騒ぐ。


  一着の着物を解けば八人の長き短きイッタンモメン



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# by minaminouozafk | 2018-09-18 00:30 | Comments(7)

つゆくさ 百留ななみ


夏はふっつりと終わり急に涼しくなった。夕暮れも早く人恋しい季節。

秋雨前線のため秋晴れではなくはっきりしない天気がつづく。


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あらここにも露草の蒼。本当にここかしこで露草が群生している。露草は初夏の花、紫陽花のころと思っていた。季語では秋だから夏の終わりには少し残っているイメージ。たぶん、いつもはそうだった。


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犬蓼や水引草もツユクサに混じって咲いている。あらあらと日陰に群れて咲いている露草をながめていると、なんだか顔にみえてくる。青い二つの花びらが耳のようでミッキーマウス顔。色も淡いブルーの花もある。ちょっと非対称や囓られたのもあって個性ゆたか。


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この夏91歳で亡くなった伯母のお墓参りに出かけた墓所でも露草は花ざかりだった。大好きだった祖母のお墓にもお参り。萩の女学校ではいちばん背が高く美人だった祖母。女の子は小さいほうが絶対イイよ。といつも言ってくれていた。隔世遺伝を期待したが残念。露草の花群から祖母や伯母の声が聞こえてくる。


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徳富蘆花が 「花ではない。あれは色に出た露の精である」 と書いた露草。露草のくっきりとした蒼はむかしから染料として使われている。


鴨跖(つき)(くさ)に衣色どり摺らねどもうつろふ色と言ふが苦しき  万葉集 巻7 1339


露草で衣を染めようとするが変わりやすい色なので大変、つまりあの人の色に染まりたいけど移ろいやすい心が心配・・・つゆくさの古名は月草。

あれほどの蒼なのに水に弱い。だから友禅染の下絵を描くのにずっと大切にされてきた。



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この秋もここかしこで咲いているように蒼花は儚そうに見えて実は生命力に満ちている。茎は地面を這い節からつぎつぎと根を出していく。たぶんかなり干涸らびた状態からも蘇れるのだろう。だからこの夏の炎暑をじっと耐えて秋雨のなかうれしそうに群生している。排水路の中から覗いているのもある。


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ここ数年白花の外来種のトキワツユクサが繁茂しているのを見て、青花の露草の危機を思ったのだが杞憂だったようだ。少なくともこの秋に出会う露草はすべて蒼色。


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数年前から青い薔薇を咲かせることが話題となっている。そのときに露草の遺伝子を薔薇に入れてみたりしたらしい。試行錯誤のすえ、色はブルーになったけれど露草そっくりの薔薇になったという。

いまでも青い薔薇といっても薄紫。露草のクリアーな蒼はむつかしそうだ。薔薇に蒼をもとめなくても。この国の秋の野には青い花が多い。桔梗も竜胆も松虫草も・・・




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つゆくさの群れ咲く墓地に聞こえくる運動会の玉入れの声






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# by minaminouozafk | 2018-09-17 06:00 | Comments(7)

秋の入り口 大西晶子


 孫の勇太が9ヵ月を迎えた。這い這いとつかまり立ちが上手になり、油断していると、筆記用具、眼鏡、スマホ、マウス、リモコンと何にでも手を出す。体重も10キロを超え、ちよっとしたチビ怪獣だ。

 4月に宮地嶽神社で力石をお借りして、手術の成功と無事な成長を祈願したが、もう大丈夫ということで勇太、長女と一緒に石を返しに出かけた。宮地嶽神社では以前から気になっていたオガタマノキの実のその後も見たかった。

オガタマノキは本殿の脇にあるが、遠くからでも桃色の実がたくさん見える。予想した神楽鈴の形はすでに崩れ、どちらかというと葡萄のちいさな房のよう。熟すと赤くなるらしいので、またしばらくしたら見に行こう。

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                  祈願やお礼のことばが書いてある力石




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                      オガタマノキ

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                    オガタマノキの実

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                 誰が置いたのか、袋入りのオクラが
                  神馬像に供えられていた。馬の好物?



 帰りに寄った宗像大社では、ご神木の楢に実が生っていた。毛むくじゃらの殻の中から顔を出したまん丸の青い実がかわいらしい。
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 気がつくと市内のあちこちで木の実が生っている。まだ少し暑い日もあるが、夏から秋に確かに変わったのだと実感する。

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                     自由ヶ丘中央公園で


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                    グローバルアリーナで



 


            

        秋は今ほんの入りぐち子供らのいまだ気付かぬ青きどんぐり






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# by minaminouozafk | 2018-09-16 08:04 | Comments(6)

 月に二回通っている朝日カルチャーセンターは博多駅の博多口正面にある。大野先生の『現代短歌の実作と鑑賞』の充実した時間のあとには、先生を囲み昼食をご一緒するのも楽しみのひとつだ。そして、折角、街に来たのだからと駅ビルのお店を覗きながら最後にデパ地下に立ち寄るのがいつもの流れになっている。


 昨日も、なにかないかなあと向かった鮮魚売り場で珍しいものを見つけた。北海道産の鮭の白子である。刺身や切り身を取った後の、鯛や鰤のアラを置いているこのコーナーは掘り出し物によく遭遇するので、まず足を運ぶ。鮭の卵巣は、言わずと知れたイクラでこれはよく見かけるが、白子は初めて見た。九州では季節になると、鰤の真子や白子が店頭に並んでいることがある。コレステロールが高いことを気にしながらも、こっくりとした煮物の味に誘われて買い求めるのだが、鮭の白子を見た途端に頭に浮かんだのは茹でて大根おろしとカボスでいただくというものであった。


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 レジに並んでいると、後ろに居た同年代の紳士の視線が私のカゴの中に行っているのに気づいた。そしてすかさず、「その白子、どこにありました?」と声を掛けられた。「そこのボックスの中ですよ」と教えはしたものの、秋鮭を捌いたときにたまたま入っていたものだろうから、2パックしか残っていなかったので、手に入れることができたのかと気になり振り返って見ていたら、列に並び直したその紳士と目が合った。満面ニッコリの笑顔が、その結果を物語っていた。私も笑顔で「良かったですね」のサインを送った。


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<北海道産 1パック100円の表示>

 帰って調理をしながら、あの人はどういう一品にして楽しむのだろうと想像が膨らんだ。きっと私と同じで、晩酌の肴にぴったりと思ったに違いないと思うのは、私が呑み助だからだろうか。

 居酒屋メニューのような品々が並ぶわが家の夕餉だが、完璧な下戸である夫にもこの白子は好評だった。


 産地の北海道は先日の地震の影響が長引きそうだと聞いた。札幌に住む次男夫婦に聞くとまだ、欲しいと思ったものがなかなか手に入らないという。これから急速に冬にむかっていく北海道で、被災された方々が少しでも早く元の暮らしを手に入れて欲しいと願うばかりだ。農産物、海産物、畜産品、道産の乳製品や小豆を原料にしたスイーツも美味しい。これまでにも増して、北海道産のものを選んでいこうと思っている。



    あまたなる生まれなかつた鮭の子が口で溶けゆくとろおり秋の日


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# by minaminouozafk | 2018-09-15 09:52 | Comments(6)

夏の終りに  大野英子

先週は、ぐっと冷え込み今朝も肌寒さで目覚めたが、また週末は少し暑さが戻るよう。

夏のくらしの記事も三度目となり、前回触れたようにクーラーをできる限り使わない暮らしを今年も何とか乗り切った。

2011年からというのはもちろん、東日本大震災からの節電の呼びかけがあっての事。
早速、パソコンの光熱費の欄に前年対比が出るよう設定。
目標値があるとがぜん張り切るのが、百貨店で鍛えられた性というもの。
それが現在まで続く。

そして体質。
めったに居ない家では、外出するときは遮光カーテンをしっかり閉めて、帰宅時すぐにベランダの戸を開放すれば、海風が抜けるわが家はそう暑さを感じない。
さすがに在宅時は海風が熱風に変わる午後3時から3時間ほど、クーラーのお世話になった。設定温度は29度、直接風の当たらない隣の部屋のクーラーをつけた。
それでも冷えて、時々ベランダに出て体温調整をする。
実は、クーラーに弱く、すぐにお腹がいたくなる。
そして、足が攣るのだ。
扇風機も足に当てるのは危険。
クーラーが効いた職場では常に足が半攣り状態。

先日刊行された小島ゆかりさんの第十四歌集より

   冷えやすき女のからだひたひたと雨を溜めゐるふくらはぎあり
                       『六六魚』
60歳という年齢の紛れもない体感。

お腹が痛くなる事や、足の攣りの恐怖を思えば暑さなんてやり過ごせた。

室温が28度を切ると肌寒さを感じる。だんだん目覚めも悪くなる。冬が恐怖。いっそ、冬眠したい。

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       雲ながくみつめつづけてゐるうちに過去へと戻りゆくやうな秋

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# by minaminouozafk | 2018-09-14 06:52 | Comments(7)

前の日より10も低くなるなど、気温が乱高下した週末。足先が寒いという家人と湯田温泉の「狐の足あと」を訪れた。「狐の足あと」は湯田温泉観光回遊拠点施設で湯田温泉観光に必要な情報を提供しているという。

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「狐の足あと」の文字の下にはYUDA-ONSEN WELCOME SQUARE とある。英語になると軽やか。漢字の湯田温泉観光回遊拠点施設との落差が面白い。



気になりながらいつもは前を素通りしていたけれど、今日は連れがあるので思い切って入ってみる。

入ってすぐはカフェ。

中也メニューとあったので、おそるおそる注文してみた。


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中也のカフェジェリッチ「朝の歌」(ミルクの中にコーヒーゼリー)。

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中也のシルエットラテ「かの女」。台紙には中也の詩が印刷されている。

利き酒メニューもあった。窓辺は足湯に浸りつつ庭を眺められる席となっていて、観光客だったら足湯に浸りながら味わうのもよさそうだ。

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中也の展示コーナー


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帽子とマントは無料レンタルで写真撮影ができる。


生誕110年だった去年は「文豪ストレイドッグス」というコミックとのコラボイベントが開かれていた。コミックをきっかけに中也の詩に興味を持った人も少なくなく、私の若い友人もその一人。観光の中也は自分の中の中也とはどこか違っているけれど、新たな中也像として魅力を伝えていくのだろう。

狐の足あとには3つの足湯があった。一つはカフェの窓辺の湯で、もう二つは屋外の庭に設けられていた。


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ちょっと熱めの湯に足を浸していると、体の芯がほかほかと暖まって足も軽くなってきた。奥に見える楓は今は緑だけれど、もう少しすると紅く色づくことだろう。風はもう秋の風。詩が恋しくなる。湯田の街中にいるというのにいつもと違うどこか別の時の中に座っているようだった。



ああやはり おまえは何をしてきたと風が吹くなり中也の風が







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# by minaminouozafk | 2018-09-13 06:25 | Comments(7)

白秋は、南の魚族」という言葉を

その絶筆となった『水の構図』の「はしがき」の結びで使っている。


ああ、柳河の雲よ水よ風よ、水くり清兵衛よ、南の魚族よ。


この「はしがき」は、昭和17年10月6日に、病床で書かれたものである。

故郷柳河に思いを馳せながら、水くり清兵衛という、人の名をもつ魚族を親し

く思い出している。亡くなるまでひと月もなかった。



「水くり清兵衛」は、オヤニラミというスズキ科の魚のこと。

この清兵衛さんをしばらく人のことだと思って読んでいた。



「はしがき」では、次の冒頭部分が多くの人の耳に親しいであろうか。


 水郷柳河こそは、我が生れの里である。この水の柳河こそは、我が詩歌

母体である。この水の構図この地相にして、はじめて我が体は生じ、我

風は成つた。



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  澄むといふことのしづけさ秋空は会ひたきひとを映せるかがみ



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# by minaminouozafk | 2018-09-12 07:46 | Comments(7)