小島ゆかりさんの第14歌集『六六魚』を読んだ。

f0371014_01002923.jpg


ついこの間『馬上』について書いたような気がするが、あれから二年。ゆかりさんの執筆ペースを考えると、ちょうどいいタイミングなのだろう。

『六六魚』は「りくりくぎょ」と読む。鯉の異名らしい。体側に36枚の鱗が一列に並んでいるからというのが由来という。


この歌集、面白いのはもう言うまでもないし、様々な角度から鑑賞できる一冊なのだが、私が一番心惹かれたのは、変容してゆく家族の姿を見つめるゆかりさんの眼差しであった。現歌壇の中心的役割を担いながら、ゆかりさんが大事にしているのは日々の暮らしの手触りである。ジェンダーに厳しい昨今、こういう発言は憚られるが、ゆかりさんは女性として受けた生を謳歌し、全うしている。幸せなことばかりではない。いや、悲しみの嵩は常人よりずっと多いかもしれない。でもゆかりさんはそれを女性ならではのしなやかさとしたたかさで越えてゆく。そしてそのたびに歌は肥え、雑駁に豊かになってゆくのだ。


・病む母を時間の谷に置くごとくいくつもの秋の旅を行くなり

・世の中によくあることがわが家にも起きて驚く鳩の家族は

・あぢさゐはぎつしりみつしり咲(ひら)くゆゑ母たちの愛のやうで怖ろし

・人は死に血は混じり合ひ 雨あとのあざみのやうに家族鮮(あたら)し

・海のをんなは海の呼吸で山のをんなは山の呼吸で子を生むならん

・母といふこのうへもなきさびしさはどこにでも咲くおほばこの花

・四世代容(い)れれば入(はひ)る破れさうで破れない古い巾着わたし

・赤子泣くそこは世界の中心でそこは世界の片隅である

・まだ棄てぬ臍の緒ふたつ ゆふかぜに枯蟷螂はあゆみはじめぬ

・ゆく夏の母のわたしは油蟬、祖母のわたしは蜩(ひぐらし)ならん

・亀しづみ蜻蛉とび去り秋天下われがもつとも難題である

・新年にわらわら集ふもののうちわたしはだれを生んだのだらう

・母となり祖母となりあそぶ春の日の結んで開いてもうすぐひぐれ


20年前、私は「小島ゆかり論」を書いた。それはとても稚拙な一篇であったと自覚しているが、その中で、小島ゆかりという歌人は少女から聖母になったような人だと書いた記憶がある。そんな人がこの先、歌人としてどのように変容してゆくのか、当時とても興味があったのだが、この『六六魚』には二十年前のその問いの答えがあるような気がしている。


急流に逆らい、くきくきと身を捩り泳ぐ鯉。水流に鍛えられたその身はみっちりと締り、輝く鱗に覆われている。これは華甲を過ぎたゆかりさんのイメージ。豊饒で強い。そしてこの鯉はさらに高みを目指す。六六魚の行方を見逃してはならない。物語はまだまだ続くのだ。



わうごんの鱗かがやく六六魚登竜門を登らむとして


*ゆかりさん、平成三十年「短歌研究賞」ご受賞おめでとうございます。



[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-25 01:04 | Comments(7)


ようやく雲が秋になってきた。もう彼岸、秋分である。

墓地のすみにもちょっとだけ彼岸花は咲いている。


f0371014_07093345.jpg


3連休はお墓参りをすませたあと、新米をいただきにでかけた。ここ数年、岩国市の錦川の上流のお米を食べている。今年はひとめぼれ、去年はこしひかりだった。稲刈りの終わった田んぼはまだ2割くらいだろうか。穏やかな秋の日差しに刈り取りを待つ金色の稲穂、それを曼珠沙華の赤が縁取っている。開花予想などなく彼岸花はいつも彼岸のころに咲く。午後の強い陽射しが似合う。いきなり茎を伸ばし赤花が開く。


f0371014_07111413.jpg



曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる径

木下利玄


稲と一緒に中国から伝わってきた曼珠沙華。最近は園芸種もあって庭に植えている人もいる。彼岸花、曼珠沙華のほか死人花、幽霊花、剃刀花とか異名が多い。


f0371014_07103080.jpg


緑色の大きな毬の栗の木の下にも群生している。ひとつの花にひとつの球根。球根にできる子球で増えていく。土の中にならんでいる球根を思うとちょっとゾッとする。



f0371014_07105334.jpg

お彼岸のお彼岸花をみほとけに

歩きつづける彼岸花咲きつづける

悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる

彼岸花さくふるさとはお墓のあるばかり

曼珠沙華咲いてここがわたしの寝るところ

種田山頭火



f0371014_07101077.jpg


ふるさとが山口の山頭火。なんとなく胸が絞めつけられつつも、すとんと心に入ってくる。曼珠沙華のうえで寝るとは・・極楽浄土のような。歩きつづける彼岸花咲きつづける・・つぶやきながら畦道をたどる。

小さな石仏さまのまわりも彼岸花。

淡紫のツルボと一緒もやさしい。



f0371014_07100118.jpg


今年の新米は上出来のようだ。その中にたっぷりの炎天をたくわえた曼珠沙華の赤。イノシシは罠に17頭も掛かったけど、田んぼの被害はなかったそうだ。しかし、この夏の強烈な陽射しは稲だけではなく稗などの雑草も大きくしたようで、稲刈りのまえの草取りが大変そうだ。



f0371014_07112622.jpg



でも倉庫に積み上げられている米袋はまさに豊かなる秋だ。気持ちまでゆたかになる。友人の分も一緒に5キロの玄米を27袋車に積み込む。数年前に小さな精米機を買って五合ずつ7分つきにしている。さっそく白むすびでいただく。曼珠沙華を手折ったことはない。あの燃える赤を思いつつこの秋の新米をゆっくり味わう。



f0371014_07112040.jpg





新米のおにぎり美味し()の赤の剃刀花は不動明王







[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-24 07:47 | Comments(7)

f0371014_17120667.jpg
 

f0371014_17272522.jpg
              閉店間際の店内、商品がほとんど無くなっている(9/11撮影)


 大野英子さんが8月31日の記事にさつき豆腐を「道の駅むなかた」で購入したと書かれていた。
 その「道の駅むなかた」はわが家から車で20分ばかり、新鮮な魚や野菜が豊富なので、時間に余裕のある日に月に数度ほど行く。

 午前中の早い時間に行くと、日によっては駐車場に入るのに長い列ができる。
 昨年、世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群、に宗像大社などが指定されてからは、天神からのバスが入るようになり、大型観光バスも留まり、買い物客が多くなった。駐車場に空きを見つけられずうろうろすることも多い。

 数年前に米粉のパン工房「姫の穂」、今年の春にお土産品の「おみやげ館」ができた。10月には子供があそべる公園や、広い第二駐車場もオープンする。

 売っている商品は新鮮な魚・野菜・果物を中心に水産加工物、宗像牛、豆腐、地元の商店の醤油、調味料、菓子、惣菜、弁当、さらに工芸品と多彩。
 英子さんおすすめの「さつき豆腐」は本当に美味しい。地元菓子店「さかした」のおはぎや大福もおすすめ。宗像牛も知る人ぞ知ると言う美味しさだそうだ、まだこちらは食べたことがないので、いずれご報告を。

f0371014_17130648.jpg


f0371014_17123689.jpg


 とれたての魚は朝が一番豊富なのだけど、昼頃にも魚が冷蔵ケースに追加されることがあるので、あまり期待をせずに行き掘り出し物に遭うこともある。今日は小型の鯖4尾300円、掌よりやや小さめのチダイ17尾で250円というのを見つけた。
 買った魚を有料でさばいてくれる窓口もあるので、家で生ごみが出るのが嫌な人にも便利。



f0371014_17103423.jpg
                         11時頃に行くとこのように(9/21)

f0371014_17113581.jpg
                      野菜もまだこのとおり

  
f0371014_17110590.jpg
      野菜の補充に来られた生産者


 野菜は棚に少なくなったころに、補充に来られることがあり、生産農家の方とお話しできるのも楽しい。

 道の駅の中に「はまゆう」というセルフサービスのレストランがあり、とれたての魚と野菜で作った料理を食べることもできる。と良いことづくめなのだけど、ここに来るとついつい食品を沢山買い過ぎてしまうのが問題かもしれない。


   目の澄める烏賊得てかえる道々に大豆のみどり濃き畑ひろがる










[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-23 07:00 | Comments(6)

新聞のこと  栗山由利

 通っているカルチャーセンターに行くと、受付の前にはいろんな講座の紹介のチラシと一緒に、朝日新聞が出している小冊子が置いてある。いつもカルチャーのお仲間のNさんがみんなの分も持ってきて、渡してくださる。


 二種類あるが、両方ともさっと目をとおして一読で処分するのは勿体無い内容だ。暮らしのこと、健康に関すること、お料理、旅の話題などとても役に立つ情報が満載である。以前は新聞の集金の人が持ってきてくれていたのだが、最近はもらうことがなくなっていた。やはり新聞の購読者が少なくなっているからだろうか。


f0371014_05265063.jpg

 実際、息子たちは新聞をとっていない。ネットの情報で事足りるという。そうだろうか?家を出て働き出してからというもの、私たちの世代は独身の時から新聞を購読していた人が多いのではないかと思う。もちろんネットなど便利なものはなかったから、情報はテレビやラジオ、新聞で得るしかなかった。新聞をとるということはあの頃は一つのステ―タスであったような気がする。今では私もネットで情報を得ることもするが、やはり便利ではあるが何かしら少し違う気がする。

 ネットだとどうしても興味の行く方に偏って情報を集めてしまう。新聞をばさっと開いて全体を見渡してから選んでいくこととの違いを感じる。

 同じ新聞を読んでいても、読む記事がなかなか夫と重ならない。お互いに興味の向きがちがっているのだろう。私は大きな記事よりも、隅っこの小さな記事や広告が好きだ。新聞一部の情報は膨大であるから、毎日すべて端から端まで読むことはかなわないが、私はまだ紙媒体からの情報収集を大切にしたいと思っている。



   とりあへず新聞ひらき一日の情報つめてエンジン始動


[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-22 05:42 | Comments(6)

葛の花  大野英子

今月の宗像歌会の日は、ぐっと気温が下がった土曜日。
朝からの雨も上がり、久しぶりに東郷駅から会場である東郷コミュニティーセンターまでの道のりを楽しんだ。

道沿いの小川のフェンスのうちそとには夏草と勢いづく葛やヤブガラシの中に秋を感じさせる女郎花や待宵草の姿も。
蔓をフェンスに絡ませて、蕾も開花した姿も可憐な花を発見。

f0371014_06201481.jpg
9月10日のななみさんのブログの最後の写真に、同じ白い花が写っていて何だか嬉しかった。
早速、名前を調べるとセンニンソウ。
弾けた果実の花柱が仙人のヒゲのようなのでこの名前。

f0371014_06195605.jpg
全開花も蕊の弾け具合が楽しい。猛々しい野生種の中の艶やかで繊細な白花は小さいながらも存在感あり。

おっと、私の本来の目的は葛の花。
昨年のちーさまのブログで葛の花の香りについての記事を読んでから、葛の開花を待ちわびていつも茂みを覗いていた。

f0371014_06194176.jpg
そして、ついに発見!
全開花にはまだ早いが、嗅いでみた。
ほのかに甘い。どちらかというと甘酸っぱさ寄り。
これから開花が増えると、辺りは甘い香りに包まれるのかな。

ネットで検索していると、葛は今日9月21日の誕生花だった。
何という偶然。花言葉は「活力、芯の強さ」
どなたか存じませんが、おめでとうございます。

       葛の花匂へる秋を待ちわびてまづは葉陰の花のこゑ聴く
       活力でここまで育つてきたぞつて不敵な笑みの葛の花言ふ




[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-21 06:21 | Comments(6)

秋である。今年は火星が大接近して、晶子さんのブログ(826日)で紹介されたが、私も明るい光を何度も見上げた。写真を撮るのだけれど、なかなか光を捉えられない。星がよく見えるところに住んでいて、星空の写真を撮りたいのに持っているデジカメやスマホでは満天の星が写らない。

メンバーの素敵な写真を見るにつけ、ブログの写真ももう少しメリハリの効いたものというか、雰囲気のあるものにしたいと思っていた。


思い立って初心者向けのカメラの本を購入した。

紹介されているのは一眼レフのものだけれど、いまは手持ちのデジカメとスマホのカメラもできることをやってみようと考えている。そして、多少わかってきたら一眼レフにも挑戦したい。
夢は星空の写真。


マジックアワーという何を撮っても絵になる時間がある。映画や本のタイトルにもなっているので、言葉としては知っていたけれど、実際にはよく知らなかった。でも、紹介されている写真の雰囲気があって素敵なこと。プロのカメラマンの作品なので当然なのだけれど、初心者でもこの時間帯を狙って撮るだけでプロみたいな写真が撮れるという。


マジックアワーとは日の出と日の入り直前の、ほんの数十分間の時間。太陽が地平線に沈んでいるのに空が明るく、うっすらとグラデーションになる。
映画でも印象的なシーンを撮るために使われるという。

条件は、空気の澄んだ晴れの日であること。

f0371014_02215317.jpg

旅行したときの偶然の1枚。


これからの空気の澄んでくる季節、まず最初にマジックアワーの魔法を覚えたいと思っている。


シルエットうつくしくなるゆふぐれのマジックアワーとふ神の賜物






[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-20 06:00 | Comments(7)

矢座  有川知津子

ほ。

ろ。

や。


――そう、今日は星座の話である。


「ほ座」。「ろ座」。「や座」。

漢字で書くと、帆座・炉座・矢座となる。


この三つは、八十八星座中、もっとも短い名前の星座、一字星座である。


このブログ名の由来となった星座は「南のうお座」。

まあまあ長い方であるが、最長というわけではない。

「南のさんかく座」「南のかんむり座」というもっと長い名前のものがある。


ところで、この夏は、矢座をよく結んだ。


矢座は、四つの星からなる小型の簡潔な星座。

いくつかの文明が、これを〈矢〉と認識していたという

多くの民族がこのあまり明るくない星々に物語を読んだのである。



さて、まず、「夏の大三角」を探してみよう!


この大三角は、

「こと座」のベガ、「はくちょう座」のデネブ、「わし座」のアルタイルからなる。

どれも明るい星であるからかんたん。


矢座は、この大三角の内側にみえる。とても探しやすい。


f0371014_08064557.jpg
               《座右の星座早見盤より》


  四つ星の矢座探しをりまだ恋を知らぬ子どもら島に遊びて



[PR]
# by minaminouozafk | 2018-09-19 08:00 | Comments(7)