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何気なく窓の外を見ていると郵便屋さんが駐車場側から入って、ポストの内側から何かを入れている。なんだろう?と思ってさっそくポストを開けてみると、白い箱。〈こわれもの〉のスタンプが押してあるが、普通郵便のようだ。20×10×10ほどの大きさはとてもポストに入らない。


差出人は尾道市の持光寺。1ヶ月ちょっと前に友人と訪れた寺だ。粘土を左手でギュッと握って作った仏様を焼き上げていただいたものが送られてきたのだ。ご近所でちょくちょく会う友人のも一緒にお願いしたから二体入っている。


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千光寺、御袖天満宮、天寧寺・・・とめぐりカフェでひと休みして石畳の坂道をのぼり、石門をくぐったら持光寺の本堂。


あらかじめ握り仏が作れることは調べてあるが、だれもいない。チャイムを鳴らすとご住職が出てこられた。


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握り仏を作りたいのですが、とお願いすると、粘土や棒や板やヘラなど一式を。そしてご住職は拳大ほどの粘土に棒を差し込まれて「どうぞ左手でしっかり握ってください。」とおっしゃる。恐る恐るギュッと握ると「それくらいで大丈夫です。」手を外すと「仏様のお顔に見えてきませんか。眼や耳や白毫をどうぞ。」と奥にもどられる。最後に名前、日付、持光寺の印をいれて完成。

後日、焼いて送っていただくことをお願いした。それが今日とどいたのだ。


〈あなたの手の中で今まで形の無かった粘土は、佛さまのお姿を借り寺の窯で焼き上げて石となりました。そして本日、当山の本尊「五劫思惟の阿弥陀如来」の御前でお精根を入れて、あなたのお手もとにおとどけしました。どうぞあなたの念持仏として大切になされますことを願っております。〉



の手紙が添えられている。

学校もスポーツも政治も本当のことがわからない不思議なこのごろ。こころは嘘か本当かはちゃんと分かっている。そういえば嘘発見器という言葉、最近あまり聞かない。たしか心拍数とかで判断するはずだったが・・・・精度はあまり上がってないのだろう。ほんとうに大切なものは目には見えない。あとであの時だったとならないように・・・小さな私にできることは祈ること。焼き上がった念持仏様を左手でそっと握ると当たり前だがピタッとおさまる。なんだかうれしい。


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土塊の握り仏の手向け花 小さき野蒜の星花を摘む






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# by minaminouozafk | 2018-06-04 05:16 | Comments(6)

今日はコスモス会員の合同出版記念会が東京で開かれている。高野公彦著『北原白秋の百首』も今回の出版記念会の対称になる一冊。
 私は白秋フリークとまでは言わないが、白秋の短歌のファンで特に『桐の花』、『雲母集』が好きだ。また『雀の卵』あたりに多い子供を詠んだ歌に白秋の中の少年性を感じて楽しんで居た。ただし系統的に学んだことがなく歌を読むだけなので論評などは、とてもとても畏れ多い。

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そんな私には『北原白秋の百首』は〈正しい白秋の歌の読み方〉の指標になるような一冊だった。膨大な白秋の歌の中から選ばれた百首には私の好きな歌がたくさん入っている。それだけでも嬉しかったが、充分に理解できていなかった歌が高野氏の解説でよく分かり鑑賞できたのが嬉しい。

みひらきの二頁の右側に抽出された歌一首、左に高野氏のコメントが書かれていて、簡潔だけど鑑賞のポイントが分かり易く、歌によっては歌集の前後の歌もひき、状況が説かれている。


たとえば〈ひいやリと剃刀(かみそり)ひとつ落ちてあり鶏頭の花黄なる庭さき〉。「鶏頭が幾本か植えられて黄色い花を咲かせている庭先に、ふと剃刀が落ちているのが見えた、という。むろん錆びた剃刀でなく、冷たく光っている剃刀であろう。剃刀は頭髪やヒゲを剃る道具だが、今の電気カミソリなどとぜんぜん違って、不用意に触ると危ない鋭利な刃物である。それが思わぬ所に落ちているのを見た時の慄然とした感覚が「ひいやリと」という言葉で表現されている。美しい花の近くに落ちている鋭利な刃物。あまり深読みしてはいけないが、この世にひそむ不気味なものの気配を暗示するような歌である。」

このように白秋の歌を読み解いていく高野氏の文章は分かり易く、しかも歌の背景の気分や余韻のようなものも明示されている。


最後に高野氏の「解説」があり、タイトルは「ことばでありながら音楽であること」。白秋の歌集を年代別に「青年期」「壮年期」「晩年」に分けそれぞれの歌集の特色が書かれているが「変わることなく一貫しているのは、言葉のひびきの美しさ、言葉遣いのしなやかさである。(中略)自分の心を表す言葉を少しでも〈音楽〉に近づけてゆく。それが歌人白秋の最も究めたかった目標ではなかったか。と私には思われる。」とある。



内容の充実した学ぶことの多い本だが、どこからでも興味深く読めるので、バッグに入れておき電車の中や、旅行中の乗り物の待ち時間で読むのにも良いと思う。白秋をまねて紅茶とカステラなどを用意して、ティ―タイムに読むのも良いかもしれない。



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 わかかりし白秋の恋のあやふさや敷道覆ふあはゆきに似て





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# by minaminouozafk | 2018-06-03 07:00 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(5)

 この週末はお天気が続くというので思い立ってぬいぐるみの洗濯をした。大小のミッキーマウスとベビーマウス、それとピーターラビットだ。それというのも、東京の実家に帰っている孫がディズニーランド・デビューを果たしたので、我が家のぬいぐるみにも孫抱っこの機会がくると思ったからだ。また、わが家にディズニーマニアが一人増えたかもしれない。


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 私がディズニーを知ったのは、遡ること半世紀以上前の小学生のころ。まだ白黒テレビの時代にアメリカの「ディズニーランド」という番組が放送されていた。冒頭、ウォルト・ディズニー自らが出演し「未来の国」「おとぎの国」「冒険の国」「開拓の国」の四つのうちからティンカー・ベルが妖精の粉をふりかけたひとつの国をとりあげるといった内容であり、ここでディズニーアニメの滑らかな動きと日本人とは違うギャグセンスや、初めて見るアフリカや南米の映像にはまってしまった。


 その後、東京ディズニーランドがオープンし、二歳とゼロ歳だった息子たちと行ったのが、再びディズニーの魅力にはまるきっかけだった。ディズニーランドの楽しさもさる事ながら、喜んでいる子供らを見るのがまた楽しかった。福岡に帰ってきてからも両親や妹と、ある時は同じビルに住んでいた仲良し4家族で父親抜きのツアーを企画して総勢14名で行ったこともあった。

 こうして年に二回くらいは出かけていたので、園内の様子はガイドブック並みに頭に入っていたし、息子たちも私の影響で、同じくディズニーマニアに育っていた。そんな中、たまたまテレビでフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートを見てしまった途端、本場のディズニーの世界を知りたいと私の好奇心に火が付いた。約122万平方kmという広大な敷地は東京の山手線の内側2つ分が丸ごと入ってしまうという。その中にディズニーパーク、ウォーターパーク、ゴルフコース、ホテルからキャンプ場まで一週間いても遊びきれないほどのディズニーの夢と魔法の世界が広がっているのだ。


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<長男が授業中に書いたもの。笑ってしまった>


 その後、用意周到に事を進めた私は、あまり気乗りしない夫も巻き込み一回目は妹も一緒に、二回目は家族4人でそれぞれ十日間ほど遊びに行った。ろくに英語も話せなかったのだが、そこはディズニーマニアという共通項のおかげで十分に楽しむことができた。実は、息子たちが大学生の時にもう一度行く予定だったのだが、日程の調整がつかずにたち消えになった。今ひとつ不完全燃焼のままで終わっている私としてはもう一度、何とかして行きたいと思っている。


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  チェシャ猫がセル画のなかから三日月の口で呼びくる魔法の国へ


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# by minaminouozafk | 2018-06-02 11:03 | Comments(5)

伊万里へ  大野英子

26日の灯船批評会の翌日、灯船メンバー3名で未踏の地だった伊万里窯元巡りへ出かけた。

下準備として、同行を約束していた小田部雅子さんの希望のこの地を調べるため、アクロス文化情報センターで「九州みちあんない」等パンフレットを集め、送った。
すると、さすが行動力の雅子姉さん!数日で乗り換えのない高速バスでの完璧な予定表を作ってくださった。

早川照子さんも加わった当日は快晴。伊万里の予想気温は真夏日の32度だったが、青螺山から吹き下ろす風もあり、歩き回っても暑さは感じなかった。

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入り口辺りの窯元横からスタート地点を向いて。なだらかな鍋島藩窯坂は風情たっぷり。
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進行方向は、私の写真では迫力は伝わらないが、尖った岩山が「とんご岩」、立ちはだかるような岩肌は「屏風岩」、ぐるりと窯元の家々を取り囲むような岩山の、雨あがりの霞たつ景色はさぞや迫力があるだろうと想像の世界へ。
伊万里焼の技術流出を防ぐため、ここ大川内山に職人を集めたと言われる。
まさに「秘窯の里」にふさわしい隔絶した歴史が漂う景観。

私は伊万里のパンフレットの背景になっていた、この岩山を間近で見たい、伊万里焼きの風鈴が欲しい、くらいの気持ちだった。

しかし、雅子姉さんの心には、灯船メールに書かれていた
〈25年前の猪口の絵師を探す半日の旅でした。
ついに探し当てた作者と、その25年前の自作品の対面、
すばらしい時間を過ごしました。委細はいづれ〉
という壮大な計画があったのだーー

そして、私たちは親切な伊万里の方達に導かれるように、雅子姉さんの感動の半日に立ち会うのであった。

全てを詳細に記したい~
でも雅子姉さんの感動的な日を、他人の私が先に書くのは憚られる。
ご本人の報告記を期待しています。

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今回、1番心に残る畑萬陶苑の作品。
冷酒をいただくのにぴったり。
透かしを入れるため採掘量の少ない岩を使用している貴重な品。
透かしと繊細な薄さは畑萬陶苑ならではのものだった。

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一巡り終えて、お気に入りの品を手に、小田部、早川、ご両人。

帰り際に、ついに捜し当てたお目当ての作家さんは「好堅樹窯」伝統工芸士、窯主前田啓輔氏。
有田伝統の染付技法の一つ、墨弾(すみはじ)きでも珍しい黒がこの旅のキーワード。
現在は現代風なデッサンにも挑戦され、光と影が印象的だった。

片道1時間40分の車中も、早川さんの作品に込める思いや、今後の短歌に取り組むお気持ち、雅子姉さんのご家族のエピソードなどなどお聞きして、あっという間に過ぎて行った。
ご同行出来たことに感謝。
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今回購入した青山(せいざん)窯の風鈴。
何店も巡り、シンプルなめだか柄が川沿いのわが家に1番似合いそうだった。

      ふかくあはき墨がいざなふ(えにし)ある秘窯の里をふたたび訪はん
      青螺山颪吹き来よ鳴り出だせめだかが泳ぐ伊万里風鈴


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# by minaminouozafk | 2018-06-01 06:24 | Comments(6)

垂直の庭  鈴木千登世

灯船の批評会の翌日、朝方の新幹線で山口に戻った。

新山口駅の新幹線の改札を抜けようとした時、ふっと草の匂いが鼻先をかすめた。


そういえば……


いつもは改札を出て左手のエスカレーターを降り、南口近くの駐車場で車に乗り帰宅する。だから、右手にある在来線のホームへはほとんど足をのばさない。新山口駅を横断する南北自由通路に垂直庭園ができたことはニュースで知っていたけれど、帰りを急ぐ身には思い出す余裕もなかった。

行ってみようと思ったのは、たぶんアクロス福岡でガラスの向こう天へと伸びる不思議な木々を見たから。



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2年前に完成した垂直の庭。植物学者であり、垂直庭園のパイオニアであるパトリック・ブラン氏が手がけた、生きている植物で彩られた壁。それが100メートルに渡って続いている。ツワブキやカヤツリソウ、ヒメレンゲなどおよそ140種の山口の植生植物によって形づくられ、独自の灌水システムを完備しているという。季節とともに、時間とともに変化する垂直の庭からは森の湿りと草の匂いがするようだった。



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140種類の植物の写真。綿密に計画されていてそれぞれがどこに植えられているかがわかる!



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反対の西側は壁面だけでなく床面にも植物が植えられ、ベンチが置かれていた。閉ざされた空間ではないので風が吹き抜けてゆく。通り過ぎるのではなく本を広げてゆっくり読むのもいいかもしれない。



いや、やはり時間を忘れて遠く続く線路を眺めるのがきっと相応しい。

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森に生ふる草みつみつと覆ふ壁 呼吸する壁、風を呼ぶ壁


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# by minaminouozafk | 2018-05-31 06:21 | Comments(6)

手元にある『宮柊二集』全10巻別巻1(岩波書店)には、随所に傍線が引かれている。


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何かの拍子に、元の持ち主のこうした学びの痕跡に出くわすともういけない。調べごとはどこへやら。想念のおもむくままに遊んでしまうことになる。そうしていつしか調べごとのあったことさえ忘れてしまうのだ。


上の写真は、同集4巻の後記の一部で、第9歌集『忘瓦亭の歌』を解説した箇所である。執筆者は、葛原繁。葛原はここで山本健吉が『忘瓦亭の歌』に寄せた帯文を引用する。


誰と知れぬ人の手による傍線は「人生孤絶の忘我の極み」(山本の言葉)から始まり、次の頁におよんでいる。もちろん私も傍線に乗っかっておよんでいくことになる。


  先人のサイドラインに導かれ柊二の歌をめぐる半日



この『宮柊二集』全10巻別巻1(岩波書店)は、私が短歌をはじめたころ、近隣の図書館には所蔵されていなかった。今はどうなのかな。


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# by minaminouozafk | 2018-05-30 06:11 | Comments(6)

5月26日土曜日、「灯船」9号批評会@アクロス福岡501会議室。

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遠くは青森、岩手からも来福たまわり、24名参加。当日欠席は一人もなく、13:00~18:00の長丁場、厳しくも楽しい時間を過ごしたのでした。

当日参加のメンバーの紹介をしつつ、作品を一首、掲載させていただきます(「灯船」9号掲載順)。

〈24首〉

1.小山富紀子……「コスモス」「灯船」の誇る京女。古の都の抒情を詠むにこの人の右に出る者なし。憧れの着物ビト。

・塔の横畑でありき胸を病む彦乃と夢二が写し絵に笑む


2.豊島秀範……長年勤められた大学を今年退官。二生を生きた西行に、自身を類えた作品構成。

・父母と伊勢に来しより四十年命なりけり宇治橋わたる


3.奈良橋幸子……知的かつ抒情的な作品が持ち味。小林多喜二の生をテーマに、時事にもアクセスした一連。

・父といふものにはならず生きの緒のはてまで荒野 小林多喜二


〈12首〉

4.大西晶子……「南の魚座」日曜日担当。お孫さん勇太くんを詠まれた一連。医療に対する信頼感がある。

・五千人にひとりの病気引き当てし勇太だいぢやうぶ手術でなほる


5.大野英子……「南の魚座」金曜日担当。もうすぐ迎える華甲に対する思いをしみじみと。

・一人用ペーパーフィルター、ゴミ袋(小)買ひ帰るつくづくひとり


6.小田部雅子……静岡から飛行機でひとっ飛び。行動力の人。そして猫の歌人。

・春の陽にねむりゐるのかゐないのか猫はひらがながきのしあはせ


7.木畑紀子……「灯船」心臓部。歌作、評論ともに抜群。ボランティアとして社会に関わった時代を回顧した一連。

・老ゆるとは群れを去ること鳥、獣ならばおのづから時を知るべし


8.久保田智栄子……一見何不自由ない暮らしの中の、小さな屈託をテーマに詠んだ一連。事物や言葉の具体が面白い。

・頼まれて賀状ポストに出しにゆく「とりま」「なるはや」校舎が白い


9.栗山貴臣……「南の魚座」IT管理部長。歌歴1年未満。はや熟練の感ある作品もあるが、今は不器用でもいいから、もっと自分を表現する作品を詠んだほうがいい。

・猫になら優しくなれるわれが居て自分のことをおとうさんと呼ぶ


10.栗山由利……「南の魚座」土曜日担当。「コスモス」その1まで一気に駆け上がった福岡のライジングスター。対象の把握が的確で個性的。

・壁に濃く映るひさしの影のうへ羽づくろひする雀がならぶ


11.桑原正紀……二週続けてのご来福。ありがとうございます。妻君を詠まれた作品が沁みました。

・桜咲きチャイムが鳴りて子らのこゑ響かへば妻はいまも先生


12.鈴木竹志……「灯船」心臓部。評論家。今回は過去の回想の一連。学生運動に取材した作品に、作者の意外な一面が垣間見えた。

・祝祭を愉しみゐしか半世紀前のわれらは〈闘争〉の日々に


13.鈴木千登世……「南の魚座」木曜日担当。50代半ばの日々を抒情豊かに詠う。

・放電をしやすき冬の指もて櫃の闇より雛(ひひな)をすくふ


14.田中愛子……平明な言葉で切り取られた日常には豊かな詩情が溢れている。

・木守りとえらばれた柿のかなしみをとほく車窓に思ふ日の暮れ


15.辻本浩……「南の魚座」顧問。さまざまな「影」を詠んだテーマ詠の一連。面白いが、やや歌謡曲的に流れるので注意。ほぼ用言で一首が終わるのも単調になる。

・かりかりの鶏皮の串手に持ちて縦に食う人横に食う人


16.坪井眞理……女性の働き方について考えさせられた作品。これもまた社会詠。

・いちめんにそよぐむらさき赤紫蘇の畑のなかにジャム工場あり


17.中村仁彦……「南の魚座」広報担当。自身の闘病の日々と向き合い、透徹した眼差し内面を作品化した。

・十二時間のちに目を覚ます予定とふその時声帯(こゑ)はわれにもう無い


18.早川照子……バブル期の回想。夫君との奮闘の日々が、魅力的な具体を生かして詠まれている。

・反物を竿にからめた藍を視る匂ひするどし藍甕は春


19.百留ななみ……「南の魚座」月曜日担当。「岩海」という奇観を詠むことに挑戦した一連。デフォルメして、くっきり伝えることが大切。

・已己巳己(いこみき)の石英閃緑岩ずつとずつと吉部の万倉に集ひたりけり


20.福士りか……『Saite Neige』作者。青森から。後輩の若い教師を詠んだ作品が温かい。

・ひとたびは退職願を書きしといふ村上雄大教師五年目


21.藤野早苗

・くれたけの節すぽぽんと抜けたらむ鼻炎カプセル服(の)む十分後


22.宮西史子……ノスタルジックな一連。発想が柔軟な頃の自分を懐かしむ作者が見える。

・田起こしの凸間凹間(でくまひくま)を見えかくれつつつつつつつ雲雀あゆみ来


23.宮本君子……季節の流れに沿ったなめらかな一連の構成。人生終盤を迎えるにあたり、自らの半生を振り返る。

・催花雨の小止みなき日よわたしらの骨の始末を考へてをり


24.吉田史子……岩手より。夫君との日々を哀感豊かに詠む。柏崎驍二『読書少年』の評論「立ち止まる人のまなざし」は圧巻。

・ここはまへ花屋だつたね いつせいに記憶の中の色あふれだす



懇親会は近くのIPホテル宴会ホールにて。

いつもながらの盛り上がり。その様子は画像にてお楽しみ下さい。

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みなさま、大変お世話になりました。

「灯船」、今後もますます盛況でありますように。

なお、次回は8月25日、新宿の明宝ビルにて。ゲストは久々湊盈子氏。

楽しそう。

はじめての会ひと思へず誌上にて馴れたるうたの幾首のあれば




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# by minaminouozafk | 2018-05-29 08:32 | Comments(6)