チドる  藤野早苗

9月18日のブログ「どうしても着たい」で紹介した、ネットオークションで競り合うこともなく英世一枚で落札した紅花(風)紬のその後。

和裁の先生に相談したところ、仕立師魂に火がついたのか、身頃のシミや、袖付けの裂けが目立たなくなるような工夫をあれこれ考えて下さった。別けても袖は和服の中では最も見せ場的なパーツで、ここに傷みが目立つと興ざめなのだそう。

そこで、両方の身頃から汚れのない生地を袖丈分切り取り、新たに袖を縫う。今まで袖であった布は、切り取られた身頃に柄を合わせながら縫い付ける。じゃあ、身頃に裂けができるのでは?と思ったみなさん、大丈夫ですよ。ここは衽というパーツが上から重ねられるので、結局その裂けは衽に覆われ、見えなくなります。ふむふむ、すごいな、着物。こうして一着の着物は何度も甦ってきたわけですね。

それから、さっきはさらっと流してしまいましたが、そもそも身頃から袖部分を切り取って、また袖だったものを縫い付けるって、そんなことできるの?なんか不自然な感じになったりしない?……、そうお考えの方もいらっしゃるでしょう。
みなさま、ご覧ください。こんな感じになりますよ。しかもここはお端折り部分になるので、着用すれば見えなくなりなす。なるほど。
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バッテン型が見えますか?

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表から見るとこんな感じ。


生地の柄をしっかり合わせて、半返し縫いで縫い合わせます。あとは縫い代がペラつかないように、バッテン状に縫い付けてゆきます。この縫い方、いわゆる千鳥絎けですが、「業界用語」(!?)では「チドる」といいます。

「ああ、藤野さん、そこチドってね。」という風に使う。
なんか可愛くない?この言葉にツボって(あ、これも「チドる」の仲間だ)しまった私は、和裁から帰ったその日、ずっとずっとチドり続けていたのでした。

「チドる」、私の中では「モフる」に次ぐお気に入りの創作動詞です。


 ちちよちよちちよ縫ひ針刺してまた抜いて千鳥のあしあと残す



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# by minaminouozafk | 2018-10-09 00:48 | Comments(7)

夏眠 百留ななみ



ながいながい夏が終わりもう10月。

なごりの木槿や咲き始めた萩にと蝶が飛び交っている。


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大ぶりな木槿には揚羽蝶。萩には蜆蝶。



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土塀の上には秋のカタツムリ。立派な大きなカタツムリだ。


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人間が外を歩けない気温、虫たちの気配も無かったと思う。実際あまり歩けなかったからよくは分からない。蚊取り線香も一度も使わなかった。

虫たちは暑すぎると冬眠のように眠っているらしい。じっと眠って暑さをしのぐ。夏眠という。


なるべくエアコンをつけなくて耐えられたのは窓全開、ベッドでかる~い小説や雑誌を読むことだった。

この夏の日本列島は南の島。シエスタでは熱中症になってしまう。


人間も夏眠が必要だ。

サマータイムなんて無理。

ちょっと動くと汗だらだら。本当に眠ってしまいたかった。だがエアコンなしでは熟睡することもできない。


ようやく涼しくなったと思ったが週末ごとに台風襲来。昨日は25号が日本海から北日本へ。土曜日はフェーン現象で新潟は35度超の猛暑日。10月なのに・・・


生い茂った夏草は家屋もブランコも隠している。


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おやおやカタツムリの近くの塀越しに野葡萄がのぞいている。宝石のようにきらきらした色とりどりのブルーは本当にうつくしい。やっぱり秋だ。


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ここ数年ぐんぐん短くなってきている秋。もうたぶん台風も来ないだろう。

この匂いは金木犀。隣家から台風一過の秋風のおくりもの。


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蝶もカタツムリもしっかり短い秋を愉しんでほしい。チビ飛蝗も早く大きくなあれ。


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蜆蝶、でんでんむしのきらきらし夏眠の夢の萩の草叢




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# by minaminouozafk | 2018-10-08 06:57 | Comments(7)

社報「宗像」 大西晶子

毎年10月1日から3日までは宗像大社の大祭「みあれ祭」が行われる。御神輿を乗せたお座船を中心に約100艘もの漁船が大漁旗をかかげる海上パレード、流鏑馬、地方舞い、浦安の舞いなどの奉納と行事が盛りだくさんだ。しかし今年は台風24号の影響で海上パレードはなかった。それでも境内にたくさんの露店が出て、参拝客でにぎわっていた。

 宗像大社には社報「宗像」という月刊の広報誌がある。献詠短歌の頁があり私は前任者の大野展男氏から引き継ぎ、ここ9年ほど選者をしている。
引き継いだ当時は出詠者も今より多く、また記事に顔写真がついていた。おかげで近所のガソリンスタンドのご主人から「短歌を作りたいけどどうやって学べばいいのか」などと尋ねられたりしたこともあった



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 今では出詠者の方々が高齢になられ、あたらしい投稿者も少ないので、歌の数が減ったが、常連の方達が楽しみながら地道に歌を詠んでいらっしゃる。毎月投稿歌をみては、あの方もこの方もお元気なのだと安堵する。


 一昨年、社報がリニューアルしお洒落で洗練されスタイルになったが、短歌のコーナーは相かわらずだ。このような変わらなさも大切にしたい。

 今月の投稿歌から2首紹介する。

      ひぐらしは蟬の名前でありますがその日暮らしと言えば
吾輩(ぼく)です Y氏

      落ち栗を見るべくなりて深みゆく秋を感じぬ対馬見通り S氏

(
)

 社報「宗像」は無料で祈願殿、拝殿にちかいお守りなどの授与所に置かれている。こちらにお参りにお出でになるときにはぜひお持ちください。
 

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          顔しらぬうたびとたちに返信をするごと書けり一首の批評







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# by minaminouozafk | 2018-10-07 07:00 | Comments(6)

 先日、ふと立ち寄った本屋にもう来年のカレンダーが並んでいた。確かに今年もあと三ヶ月だし11月に年賀はがきが発売されれば、お節だ、お歳暮だと一気に慌ただしくなる。実は、まだ来年のカレンダーは早いだろうと一旦は売り場を離れたのだが、いやいやどうせ必要なのだからと、結局は定番のカレンダーを買い求めたのだった。


 わが家の定番カレンダーはここ20年近く、家族それぞれのスケジュールを書き込める形式のものに落ち着いている。子供たちが独立して家を出た今は、夫と私だけなので普通のカレンダーでもことは足りそうだが、未だに子供たちの名前も残している。そして納戸にはこれまでのカレンダーが捨てられずに積まれている。


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 日記をつける習慣がない私には、このカレンダーは過去になにがあったかの備忘録にもなっている。病院の通院歴や夫の出張、諸手続きの経緯など後になって役に立つことも少なくない。カレンダーを繰っているとあの頃、その頃のことが思い出されて調べ物も忘れてひとり笑いをすることもしばしばである。


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 2003年の1月は長男のセンター試験だった。試験の一週間前から長男の書き込みがある。「好調」から始まり「絶好調」となり次は「絶×100好調」となる。日を重ねるごとに数字は大きくなり、試験当日は10,000,000までなっている。緊張感に耐え切れずに自分で我が身を鼓舞していたのだろう。合格が決まったとたんにスキー旅行、クラス会、OB戦と楽しい予定が満載だ。2005年、次男が札幌に行ってからの10年ほどの間は私のスケジュールに3,4ヶ月に一度くらいの頻度で「札幌行き」が登場する。学園祭、雪まつり、ラベンダーを見に…となにかにかこつけては札幌に行っていた。

 楽しかったことばかりではない。父が入院していた時は毎週末に「大分」の文字が並んでいる。書かれた文字も落ち着いて書いたもの、殴り書きのようなもの、大きなビックリマークつきの弾んだものなどあって、その時々がよみがえってくる。

 そして子供たちは結婚し、それぞれのスペースには息子と妻の二人ずつの名前を書いて、誕生日のシールも妻と孫とあわせて3人分が増えた。最近の書き込みには短歌関係のものがじわじわと増えつつある。来年のカレンダーに嬉しい楽しい書き込みが増えますようにと願っている。


    来年のカレンダーに書く未来予報なりたい私を太書きにする


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# by minaminouozafk | 2018-10-06 10:16 | Comments(7)

大会二日目の朝を、これまでになく気持ち良く迎えた。
お天気のおかげ?昨夜の宴会が早めに切り上がったおかげ?
いいえ、これまでの大会は晨朝実作というコスモスの長~い歴史の中に培われて来た、歌会前に2首作品提出という慣例があった。
今回は、先週記したように題詠1首をすでに提出済みなのだ。

で、穏やかなこころで朝食!
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一人暮らしにはありがたい品数。

いよいよ、歌会
早めに会場入りしたつもりだったが、大半の方が着席し、高野さんが旧かな、新かなの混在の多さ、怪しい言葉は辞書で必ず確認するよう等々、詠草提出の際の注意事項を(辞書の引き方までも~)話して下さっていた。
続き、間違いは選歌の時に選者が訂正するのだが、間違いが続く人は訂正された事にも気づいて無いのだろう。歌に取り組む姿勢が問われる。
と厳しいけれども大いに首肯するものだった。

9時40分過ぎ、題詠詠草集到着(夜なべをして下さった入力担当のみなさまありがとうございます)
そして10分程の選歌を終えて、お若い方々による集計。
今回は会員、選者とも2名ずつの評。
気になる歌には、高野さんがコメントを添えて下さった。

互選高得点同点2名と高野さんのコメントを紹介。

 みかん色の半月浮けりこの月が満ちて平成最後の中秋(高野選)
                    土屋美代子さん 
年に一度しかない中秋であり平成最後であるという知的に処理された歌。平成を惜しむ歌。こういう平成の思い出の歌が出て来るのを期待していた。

 をさなごの手からこぼれし金平糖一つひろへり夜明けの部屋に(水上選)
                    田中 泉さん
金平糖は題詠としてとても良いが、背景が見えない。歌が出来たときは第一段階の楽しさ。繰り返し推敲すれば楽しみが増える。それを繰り返すと思いがけない良い歌になるときもある。だめなときは最初に戻る。

みなさん、歌会の雰囲気に慣れた事もあったのだろうが、題詠で一つのテーマを共有していたせいか、初日より活発な歌会となった。
後に、ほかのグループもそうだったとの声も多く聞いた。

そして表彰式、さよならパーティー。

初日は真っ赤なワンピース、二日目はグリーンのゆかりさんの乾杯。明るく優しく、みなさんを労って下さった。
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最高得点歌のわれらが晶子さん。

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グループ高得点の福岡の美魔女、増田順子さん。
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表彰式の今年の副賞は、な、なんと高野さん手書きの漢字一文字が金石文で書かれた扇子。落款付き!全て違う文字を書かれたそうです。家宝になりますね~。
金石文は青銅器に刻まれた文字だということを増田さんが書の池田櫻先生に聞いて下さった(支部報「水城」の題字の池田先生感謝です)
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写真は増田さんがいただいた〈楽〉いつも明るく廻りを楽しく盛り上げて下さる増田さんにぴったり。

パーティーは時間をたっぷりと取って下さっていたので、流れ解散のようになったが、われわれは最後まで別れを惜しんで過ごした。

佐賀から参加の秀島美代さん(私のお隣り)と木原師子さん(りかさんのお隣り)を労う一枚。秀島さんも題詠グループ高得点で表彰された。みなさまおめでとうございます!
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最後に福岡からの参加メンバーで受賞者を囲んで(また一人足りない)
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大会前、日程が発表されると、こんな厳しい大会だったら来年からは参加したくない!との声も出ていたが、終ってみると、本当に楽しく充実していた。また、参加したい!と喜ばれる声へと変わっていた。

私自身も部屋にこもって、たった一首、されど一首と向き合う2時間を東京の夕日を見ながら、藤沢周平作品「たそがれ清兵衛」の人生へ心を飛ばしていた。

田中泉さん作品への高野さんのコメントと同じように繰り返し推敲する楽しくも贅沢な時間。
平成最後の大会で、かけがえのない時間をプレゼントして貰ったのだと思う。

今回の企画を立てて下さった編集部のみなさまに、本当に感謝いたします。

        歌会をふたりひそひそ語り合ふ機窓のあをぞら闇となるまで

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# by minaminouozafk | 2018-10-05 06:18 | 歌会・大会覚書 | Comments(6)

「半端なくうまいりんごを食べにおいでませ」

今年もりんご村の岡崎りんご園から絵手紙が届いた。


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この葉書が届くと、ああもうりんごの季節なのかと、時の流れの速さを感じる。

いつ行こうかと考えているうちに日々は過ぎ、ある日帰宅するとテーブルの上に真っ赤なりんごが鎮座していた。仕事に追われていた私に見切りをつけ、知人に送るために夫はひとりで出かけたという。



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置かれてたのは紅玉りんご。固くて酸っぱいこの品種は最近は店頭で見かけることが少なくなった。母も妹も懐かしいこのりんごが大好きで、さっそくお裾分け用に取り分ける。残りは何にしよう。生食もいいけれどやっぱりジャムやパイが美味しい。



ところで、もう一つのテーマのヨーグルト。

実はここ数年休んだり始めたりを繰り返しながら自家製ヨーグルトを作っている。「カスピ海ヨーグルト」というコーカサス地方由来のヨーグルト。とろりとした粘りと酸味の少なさが特徴のもの。何より作りやすさが大雑把な私あっている。

普通のヨーグルトは温度管理が必要だけれどカスピ海ヨーグルトの乳酸菌は常温(20℃~30℃)で発酵するので、容器を熱湯消毒した後、「種菌」を牛乳に混ぜて固まるまで室内に置いておくだけ。だいたい1日でできあがる。できあがったヨーグルトから一匙「種ヨーグルト」を取り分けて、後は冷蔵庫で冷やして食べると良い。「種ヨーグルト」は次のヨーグルトになり、さらにその「種ヨーグルト」は次のヨーグルトとなる。種菌は季節ごとに取り替えるのが良いそうだ。

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外出できなかった日曜日。紅玉でジャムを作り、ヨーグルトにのせてみた。

コトコト煮える鍋のそばにいると慌ただしい日々が嘘のように感じられる。

りんご園にりんごをもぎに行けるといいなあ。


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くつくつとりんごを煮をり火の傍に座り文庫の本めくりつつ





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# by minaminouozafk | 2018-10-04 06:28 | Comments(8)

「零」は、ゼロと読み、コスモス短歌会・富山支部の支部報です。


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最新刊は、290号。「零」を手にしたのは、この290号がはじめてでした。これ以前に、289冊ほどあったわけですから、みずからの怠惰が思われます。


ところで、はじめてにして、「零」の大きな節目に接することになりました。


この号には、「宮柊二作品研究『白秋陶像』のうた・3」が掲載されています。『白秋陶像』は、柊二の最終歌集。編集後記を読み、「零」が、長いあいだ柊二作品の研究を続けてきたことを知りました。編集・発行人で執筆者の一人でもある横山裕子さんの言葉を書き写しておきます。


  さて「宮柊二作品研究『白秋陶像』のうた」は今号を以て終了致しま

  す。顧みますと昭和六十三年八月発行「零」二〇四号の『小紺珠』

  始まり各歌集の作品研究を、支部会員が真摯に書き継いでまいりまし

  た。三十年間にわたって柊二先生の作品を丁寧に勉強させて頂くこと

  ができ、「零」としてすばらしい企画であったと思います。執筆者の

  中にはすでに亡くなった方、病気療養中のため退会された方もあり、

  とてもなつかしく思い出されます。


 30年前に『小紺珠』から取りかかった「零」の「柊二作品研究」は、熱心な会員の手に受け継がれ書き継がれて、今年、『白秋陶像』をもって完結しました。平成丸ごとの柊二研究です。


お目出度うございます。



  海層を上りゆきたりしろがねの0(ゼロ)の気泡につつまれながら



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# by minaminouozafk | 2018-10-03 06:12 | Comments(7)