夏の雪 大西晶子

最近庭に 薄紅の雪のようなものが降る。庭でいちばん背が高いさるすべりの木から花が散っているのだ。

実を言うと、もう植えて33年も経つのに、近くで花をじっくり見たことが無かった。なにしろ高いところに咲くので花を切って活けることができないし、キーウィの棚の間から頭を出しているので、見上げるのも難しい。




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しかし、昨年買った高枝ばさみがある。切った枝を落とさずに手元に持って来られるというので、使って切ってみた。

いつも木に咲いたものを遠くから見るか、散った花びらを手に受けて見たりしていたので、1輪がどう咲いているのかを見るのは初めてだ。


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まるで宇宙ステーション。花びらの根もとは殆ど糸のよう。

萼と花弁は6まい、萼に包まれた蕊は丸まっているが、咲ききると黄色の蕊が花弁の真中でふさふさになる。


百日紅の名は紅い花が7月から9月にかけて3カ月近く咲き続けることによる漢名に由来するという。また樹皮が剝けた後の樹肌がつるつるしているところから猿も滑るとサルスベリの名がついたが、実際には猿は滑らずに登ることができるらしい。



サルスベリの花言葉は雄弁、愛嬌、不用意。
 雄弁は高木でよく目立ち、次々に花が咲き続けるから、愛嬌・不用意は樹皮猿が滑るために猿も木から落ちるということから。

サルスベリは風が吹くと花弁の細い付け根が一斉にゆれて木全体がふるふると揺れているように見える。


水揚げは良くないようで、高枝ばさみで切った枝は花瓶ですぐに花が散り、残りの花も数日で枯れてしまった。

やはり木の花は高いところで咲くのを遠くから眺めているのが良いのかもしれない。


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ご近所の白いサルスベリの花が散ると本当に真夏の雪のようだ。


はちぐわつを雪のごと散るさるすべり戦の記憶早やとほくなり




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# by minaminouozafk | 2018-08-12 09:49 | Comments(6)

ブログ記念日23

毎月11日のブログ記念日ですが、8月は特別です。「南の魚座」二周年を迎えました。

初めてのことで、一生懸命だった一年目、二年目は少しばかり肩の力も抜けたでしょうか。この一年の間に一周年記念号を発刊いたしました。

毎日の小さな一歩の積み重ねのちょっと大きな一歩でした。


三年目に踏み出しました。読者のみなさま、これからもよろしくお願いいたします。


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出番を待つ新幹線車両



夏ど真ん中   栗山由利

夏の陽が直滑降でめざす先ブラックベリーはむくむく太る

辻道を舁き山が走りわざわひをはらひて街は夏ど真ん中

さくさくと育つオクラにありがたう規格は人のわがままだから

テキストをひらけば街は近くなり上海、成都 朋友

出番まつ車両は大きく深呼吸してをり白き炎熱の中



蝕の月   大西晶子

金柑の花の濃き香にたへられず窓をとざせり熱帯夜にて

宗像の市の花と植ゑしカノコユリ南の島より来しものと知る

蝕の月赤きあしたをひそやかに繊維そだてるへちまの若実

茅の輪をくぐる人らのさきがけは白衣まぶしき神職と巫女

まかれたる切紙ひろひ玉砂利をきよめる人あり祭の果てて



公孫樹の葉っぱ   百留ななみ
銀杏の白実をゆらす台風は迷ひ迷ひて西へとすすむ
切れ込みがなくなり()しき扇形 公孫樹の齢は葉っぱでわかる
ぎらぎらの太陽光がだいすきな狗尾草のC4回路
てふてふの少なき春はくまぜみのちからなく啼く炎暑となりぬ
バナナ売るもも売る馬関の露天商 汽笛の音の愉しかりけり



をかしの御髪   藤野早苗

むらさきの花に似る名のハルシオン熟寝の床に播くひとつぶは

内向きはさまざまあれど外向きは二人三脚 夫婦はチーム

「推敲のポイント」耽読する真昼逆走台風みんなみに荒る

八月の鋼のごとき陽をかへす強霜置けるをかしの御髪

あたらしく齢重ねるいちにちの夜のきりぎしに白髪なびく



迎へ灯籠   有川知津子
梅雨明けたり向日葵の葉の破れより大蟻ひとつこちらへ出でて
炎帝のくらき吐息が渦を巻くゴッホ描ける渦のごとくに
「とほく」といふ言葉にかかるグラデイションどのくらゐなら遠くへ行ける
母の吊る迎へ灯籠しるべにて祖霊語らひながら帰らん *8月7日
長崎の方を望みてしづかにすナガサキとなりしその刻限を



舞台俳優   鈴木千登世

かなしみの梅雨明けに咲く花槐樹影を小さき風に揺らして

境界を越えて害なす猿の背の光沢(つや)なく乾くそのけむくじやら

涼やかな眼に深く生を問ふ舞台俳優のこゑを忘れじ

選びたる人の面輪を思ひつつ書棚の本の背文字をたどる

暑かつた日といふいつもの夏の日と聞く今年の今日も夏空



単純は良し   大野英子

ただ一羽河口のうみうが繰りかへすもぐる顔出す単純は良し

潮風に吹かれさわさわ揺れだしぬ青葉がしげるわたしのからだ

あおぞらと博多の街を見て育つ固い実青い実あなたはだあれ

ひよつこりと顏出すも驚いてゐるらん熱暑、落雷、豪雨

声のやつとしづまる夕暮れの潮風のなかの夕餉は気まま



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# by minaminouozafk | 2018-08-11 09:51 | ブログ記念日 | Comments(5)

今年は10月20日(土)レソラ夢天神ホールで開催されます。
先日、福岡市内の担当者6名で、会場打ち合わせ。

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昨年の久留米座に比べるとこぢんまりとしているが、立地は最高。天神岩田屋隣のビル、ルイ・ヴィトン横の入り口奥のエレベーターで五階へお越しください。

記念講演には阿木津英氏、選者には桜川冴子氏も参加してくださいます。

備品、設備、大会に向けての準備等、入念に話し合ってまいりました。
これからがいよいよ本番。

実は、昨年の小島なおさんの紹介をあまりに楽しそうに語ったせいか、今年は司会進行を押し付けら……ではなく、仰せつかりました。

何とかミスなく、と言うよりミスっても笑ってごまかして行こうと思っています。
魚座の皆さま、ご協力をよろしくお願いいたします。
そして、一人でも多くの方のご参加をお待ち申し上げます。

立秋を過ぎ、こころもち過ごしやすくなったようで、日傘を頼りに行き帰りは歩いた。風が心地良い。

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数日前までは暑苦しい積雲だった空も、少し涼しげな巻雲に変わっていた。しかし、さすがに公園の日なたには人っ子ひとり居ないなぁ。

       へんぽんと白いスカートひるがへす風に乗りたい休日の昼


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# by minaminouozafk | 2018-08-10 07:13 | Comments(6)

この記事を書いているのは8月6日。アップするのは9日。

原爆が投下されたふたつの日。

惨禍を知り恐れや憤りを覚えながらも、生まれる前の、歴史的な事実として感じていた。けれど職場で黙祷していて、わずか16年前なのだと気づいてはっとした。

昭和36年生まれなので、生まれる16年前。

若い頃には長く思われた16年という歳月は、子どもを育て終え50代後半となった今ではほんの短い~これまでの人生の3分の1にも満たない~時間だったとわかる。

多くの人が亡くなり、多くの人生を変え、癒やしがたい多くの悲しみをもたらしたその日はほんの少し前の身近な日のことだった。



今年73年目の原爆の日を迎えた。

去年はちづさんのブロクで半身となった山王神社の二の鳥居を教えてもらった。


忘れないこと。語り継ぐ声に耳を傾けること。

戦争のことを原爆のことを書き留めて祈る日としたいと思う。


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暑かつた日といふいつもの夏の日と聞く今年の今日も夏空




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# by minaminouozafk | 2018-08-09 09:00 | Comments(5)

迎え火  有川知津子

昨日、7日は立秋――。


ああ、秋。

風がいい気持ち。

と、暦に合わせて季節を感じてみようと思ったけど無理であった。

少なくとも博多では無理であった。


今週は原爆記念日が二つもある。


よく思うのは、二つの記念日のあいだに季節の移りがあるということ。

夏から秋へ――。

だから何、と言われると困るのだけれど、なんとなく思ってしまう。


もうすぐお盆。

今年も親しい人たちのもとに多くのみたまがお帰りになるだろう。


ふるさとでは、昨日から迎え火を灯しはじめた。お盆まで毎日灯す。

うっかりしていて、一時間遅れに灯すこともある。

そんなときは、「ご先祖さま、ごめんなさいここですよ。」と謝りながら灯す。


謝りながら火をしつらえる祖母の声をよく聞いたものである。

今は母が謝っている。


  

  母の吊る迎へ灯籠しるべにて祖霊語らひながら帰らん



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# by minaminouozafk | 2018-08-08 08:22 | Comments(6)

一人二人三人の恋人 四人五人みんなさよなら 白髪になつたよ

              宮原望子『文身』(平成14)

宮原さんは鹿児島県伊佐市大口(旧大口市)の歌人。知的で洒脱で、ユーモラスな作風が持ち味。文章も素晴らしく、『おばさんの茂吉論』は数ある斎藤茂吉研究書の中でも特にオリジナリティにおいては出色の一冊である。


宮原さんに初めてお会いしてからもう20年近くなるだろうか。福岡市短歌大会の講師としていらしていただいたのが最初だったと思う。上質な、仕立ての良いスーツを着こなし、気さくに話しかけて下さる宮原さん。ちょうど母くらいのご年齢なのだが、話題は新鮮で、反応が早い。あまりに面白いのでつい話し込んでしまい、そのままご縁は現在に至っている。


宮原さんは美しいシルバーヘアーである。好奇心に耀く瞳とつるんとした肌、超高速回転する切れ味鋭い脳……、そういった属性からすればある種の違和感は否めない宮原さんの白い御髪。宮原さんの場合、髪さえ黒く染めれば実年齢よりも20歳は若く見えたのではないかと思う。でも宮原さんはそうしなかった。理由は今も聞いていない。


冒頭の一首、宮原節炸裂感横溢。宮原さん、もてたんだなあ。でも宮原さんはそんなうらやましい状況を自ら手放す。白髪になることで。髪は女の命、とか、黒髪には情念が宿るとか、とかく髪、とくに黒髪は重い。そんな重たいものをさっさと脱ぎ捨て「みんなさよなら」とかろやかに手を振る宮原さん。かっこいい。


現在、私の髪は八割が白髪。なんとなく惰性で染め続けていたのだが、三カ月前に、どうやらジアミンのアレルギーになったらしく、基本髪染めはできなくなった。今のところ着色効果のあるトリートメント剤で白髪対策をしているのだが、これをすると、今度は縮毛矯正ができない(実は天パなんです)。髪の毛については悩みが多いのだ。うーむ、こうなったら宮原さん方式でいくべきか。世は今グレイヘアブームとも聞く。しかし私がグレイヘアにすると怖いばあさんにならないか……。ほんとに「みんなさよなら」いや、「みんな」に「さよなら」言われてしまわないか……。

アラ還の悩みは深いのである。



   八月の鋼のごとき陽を反す強霜置けるをかしの御髪


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大丸のパサージュ広場の飾り山笠の前で。
顔乗せてみました。笑。





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# by minaminouozafk | 2018-08-07 02:17 | Comments(7)


暑い。

連日35度を超える猛暑日、熱帯夜が続く。

草臥れているのは人間だけではなく、虫も鳥も草も・・・

命の危険をともなう暑さとニュースでも言っているのでむやみに外を歩かない。

しかし、やんごとない用事で戸外を歩くと意外なことに雑草は元気。そのなかをバッタも飛び交っていて、ちょっとホッとする。

蜻蛉もゆっくりと飛行中。シオカラも赤トンボも。ほんの少し秋の気配?


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狗尾草もたくさんの穂をのぞかせて風に揺れている。こんなに高温、高日照なのに。草取りを放棄した庭にはメヒシバがぐんぐん伸びてきている。こんな過酷な環境なのになんともタフな雑草たち。

植物は熱中症にはならない。暑さに弱い植物は春に花を咲かせて種になって暑さを凌ぐのだ。

だから炎天下では太陽が大好きな植物たちが元気いっぱい。

狗尾草はC4植物とよばれC4回路という光合成の高性能回路を茎にもっている。90%以上の植物はC3回路。

車のターボエンジンのようなC4回路は高温、高日照であればあるほどより強く早く成長する。光合成の機能を2倍近くまで高めることができる。




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狗尾草は猫じゃらし、英語ではFoxtailだ。粟の原種でもあり食べることもできるらしい。

ちなみに穂先が下向きに垂れているのはアキノエノコロらしい。



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世界中のタフな雑草はC4植物が多いようだ。イネ科に多くトウモロコシやサトウキビ。雑草ではカヤツリクサ、ススキ、メヒシバなどの手強い雑草たち。炎天に鮮やかな花を咲かせている千日紅もC4。高温、乾燥に強いように進化したものだ。

今、栽培されている野菜のほとんどが同じ大きさのものが収穫できるように改良されたF1の種子。品種改良、遺伝子操作など植物の世界にもどんどん人間が介入している。地球温暖化のいま、野菜や果物がC4回路を持つことが出来たら・・・自然の進化をゆっくり待とう。



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ぎらぎらの太陽光がだいすきなエノコログサのC4回路






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# by minaminouozafk | 2018-08-06 07:15 | Comments(6)