松浦佐用姫 大西晶子

   福岡市から一時間ほどで行ける隣の街、唐津市に、松浦佐用姫が
   新羅に出征する大伴狭手彦を見送り,領巾を振ったという鏡山
   (286m)があります。f0371014_17073159.jpg          


   松浦佐用姫の伝説は、万葉集ができた頃には既に広まっていた話のようで、大伴旅人、山上憶良の歌などで知られていますが、佐用姫は恋人の狭手彦が乗る船が出航すると鏡山にかけのぼり
領巾を振りました。


                                                  

    鏡山から見た唐津湾

でもそれだけでは我慢できず、呼子まで船を追いかけ、着いた時には狭手彦をのせた船が出た後だったので七日七晩泣き、ついに
   石になってしまったという悲恋の物語です。

   佐用姫の行動力と感情の大きさには驚ろかされますが、
   そんなにも人を思えるって良いなぁと、すこし羨ましくもあり…。

f0371014_17075148.jpg                      山上憶良の歌碑  
松浦県佐用姫の子が領巾(ひれ)振りし山の名のみや聞きつつ居らむ 
                              

   また、唐津には〈五足の靴〉の面々も来ていて、山上の鏡山神社に与謝野鉄幹,平野万里の歌碑もありました。
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                  与謝野鉄幹歌碑
          波に聞く松かぜに聞く遠妻やけだし筑紫のわが旅を泣く

   今は海外からの観光客がおおぜい鏡山に来るようで、
   観光案内所やトイレの案内板は、十か国で書かれています。

   現代に生きていたら佐用姫は狭手彦を追って世界の果てまででも行ったこと 
   でしょう。


    

  狭手彦は知りしや別れかなしみて石になりたる佐用姫がこと

                               大西晶子


   


# by minaminouozafk | 2016-12-18 07:00 | Comments(9)

冬の一報  栗山由利

 私の住む福岡の町も今週にはいってからの雨と風で、あっという間に冬のモードに入ってしまった。十日前には陽に映えていた川べりの一本イチョウもすっかりその黄金色の葉を落としてしまい、そのまま血管だけのような枝を寒空に伸ばしている。福岡管区気象台の発表によれば、それでもこの14日のイチョウの落葉の観測は統計開始以来二番目に遅いそうだ。

秋陽に輝く葉を見られるのも一年先、翡翠色のぎんなんを味わえるのもまた一年先。



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 そろそろ、年末の段取りを組まねばならない。正月の餅と鰤の手配、年賀状書き、家中の掃除と片付けの予定、買い物とおせち料理の準備等など…。

 あと二週間では時間が足りない。困った。


   緑濃きかつを菜ならぶ店横のポストに落とす賀状ひと束  由利


# by minaminouozafk | 2016-12-17 10:45 | Comments(7)

ぎんなん 大野英子

宗像短歌会という、実家の地域の方達との勉強会を毎月行っています。

お花や野菜作りをされる方、ご近所が農家の方も多く、色んな差し入れを頂きます。

今月は、人参、サツマイモ、イチゴの苗、ぎんなんを頂きました。

ひとり者には、なんともありがたいことです。

毎年、ぎんなんを下さる方は85歳、好評につき?今年は先月に続き二度目!!

ご近所に大きな木があるらしく、なんと、川で洗い日光で干してメンバー12名に行き渡る数を持参してくださるのです!!

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少し背中が曲がった、しわしわの手と小さな体での作業を思うと、自然のいのちをいただくと言うことはその手間もいただく事なのだとしみじみと感謝いたします。

メンバーには、干支がもう一回り上の97歳のおばあちゃまもいます。

だんだん歩くのがご不自由になり、今月はお休みでしたが、いつもしっかり発言もされ、歌もユーモアたっぷり、お休みする前には丁寧なお手紙を下さり、温かい気持ちにさせてくれます。

短歌が、皆さんお元気で長生きしてくださる励みになればいいなぁとおもっています。

さて、ぎんなんの歌と言えば思い出すのが高野公彦氏のこの一連。

『流木』より

腐肉よりほろほろ出でしこの堅果ぎんなんと呼び内に翡翠あり

ぎんなんは白果(はくくわ)ともいふその白き肌現はれて秋冷の候

なぜこんなきれいなひすい色になる ぎんなんに問ふぎんなんのこと

人生の一部の細部 ぎんなんを()りて割りては渋皮をむく

一億年生きて来たれるぎんなんを食みつつ熱き酒を楽しむ

小さなぎんなんをていねいに労り、会話を交わしながら飲んでいるのでしょうね。

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私も、剥いてゆく作業が好きで、定番の鶏もも肉と蒟蒻のくわやきに翡翠色を加えてみました。

この季節、黄葉で目を楽しませてくれて、味覚も楽しませてくれる銀杏。

だけど、コンクリートの上に落ちて、踏まれて、くさ~い。と言われるぎんなんも居る。

せめて、私が出会えた白果は、ひとつぶ残さず大切にいただきます。

おほかたは葉を散りをへしせんだんのかくくわあまたが風に揉まるる 英子



# by minaminouozafk | 2016-12-16 08:02 | Comments(7)


12月4日。アルカディア市ヶ谷で、平成28年度後期 コスモス会員著書合同出版記念会が開かれました。今年度後期に出版された11歌集について著者をお迎えしてのその作品紹介の会です。全国(カナダからも)から会員が集まりました。晴れやかで華やかで、祝福の思いに満ちて

今回も盛会でした。批評紹介時間は1歌集13分。短い時間に、紹介者は背景などにも触れつつ作品を語ります。紹介者の個性と作品の世界が重なる語りに魅了されます。日頃の慌ただしさを忘れてとっぷり短歌に浸った、良きものに満ちた時間でした。

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                  アルカディア市ヶ谷



                

それぞれの歌集から1首ずつご紹介します。


青春はさみしい檸檬あのころの理想に遠い今をいとしむ 

『さみしい檸檬』  大西淳子

涅槃図に忘れられたる猫の来て描き込めと言ふ筆を銜えて

『般若心経・南北朝篇』  島田紘一

川の辺のさいかちの実は弾け飛び遠く流れて根付くもあらん

『さいかちの実』  菊池左多子

冷蔵庫は寒かつたらう白菜に小さきバッタが潜みてゐたり

『共命鳥』  谷村孝子

わが系譜米大陸に拡がりぬ男孫二人を始まりとして

『カナダの桜』  佐藤紀子

三十年使い馴れたるぐい飲みの罅にかぐろき酒焼けの渋

『ぐい飲みの罅』  藤村 学

消滅はゆるされなくて足場組み原爆ドームまた補修さる

『梅雨空の沙羅』  宮本君子

それぞれに味はひありき歎異抄父より夫より子より聞きつぐ

『けふの水澄む』  早島和子

石鹸はむかしの朝の匂ひなりむかしの朝の父のひげ剃り

『馬上』  小島ゆかり

恩寵といふべし癒ゆるに遠けれど妻にたしかないのちあること

『花西行』  桑原正紀

〈宮柊二〉インタビュー(とき)に宮英子インタビューとなりき柊二黙して

『ビビッと動く』奥村晃作


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鼎談
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小島ゆかり氏
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桑原正紀氏
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奥村晃作氏

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高野公彦氏

今回は小島ゆかり氏、桑原正紀氏、高野公彦氏による特別鼎談として、「コスモスの歌の現在」というテーマで、紹介された歌集から3氏が一首ずつ選んでの講評が行われました。3氏それぞれの新たな角度からの鑑賞によって作品がいきいきと立ち上がってくるようでした。先に挙げた奥村さんの歌については、インタビューの時の宮先生と英子先生のエピソードが語られ、ほのぼのとした思いが会場を包み込みました。りかさんのブログにありましたが触発されるもの多くありました!


その後は、会場を変えての懇親会。選者の方も多く出席され親しく声をかけてくださいます。コスモス賞、純黄賞の授賞式があり、純黄賞は青森の薄葉茂さんが受賞されました。祝福していただいたこと本当に嬉しく思いました。

初対面の方も作品を知っているので旧知の方のようです。会場のあちこちで会話が弾み、温かく和やかに夜は更けていきました…

歌詠むは小さき宇宙生むに似てその真しづかな引力に集ふ     鈴木千登世


# by minaminouozafk | 2016-12-15 20:11 | 歌会・大会覚書 | Comments(9)

眼の記憶  有川知津子

ある火曜日の夕刻、博多駅構内を通り抜けようとしていた。急いでいるつもりだったけれども、右から左からわらわらわらわら追い越されてゆく。それだけならまだしも、絶妙のタイミングで改札口から押し出されてくる横からの流れと不器用に合流することとなってしまった。



木の葉のようにはかない身ゆえ、たちまちあらぬ方へ運ばれてゆく。流されるままに、平日なのに、とか、いやもう、年末だから、とか、よく分からない分析力を発揮しつつだんだんアンタンたる気持ちにくらんでゆく――。



さて、いま書きとどめたいのは、そのとき目のすみっこ遥かで閃いた一瞬の光景のこと。その光景のみなもとは、ご夫妻と見えるやや年配の二人連れであった。「年配」と見たのは、その紳士の手にステッキが握られていた(ようだった)から。



「一瞬」は、こうだ。
 夫(らしき人)が妻(と見える人)をふり返る。



ただそれだけの動作が、まるで永遠のコマ送りのように閃きわたり、遠目だったけれども、それはただちに、雑踏の中でお互いをいたわり合うしぐさと理解された。木の葉の脳の一隅がほのかに明るんだことはいうまでもない。


わたしの眼は見たかったものを見たのに違いなかった。



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     眼の記憶
  陽にかざし見た日おもほゆビーカーでふたり掬つたプランクトンを



# by minaminouozafk | 2016-12-14 07:52 | Comments(10)

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支部歌会会場アクロス福岡の正面入口にて

12月11日は4回目のブログ記念日。昼間のコスモス福岡支部歌会の後、南の魚座メンバーで、「記念日を祝う会」&忘年会という運びに。新加入の鈴木千登世さん通称ちーさま(ご本人はCall  me  すーさん.とおっしゃっていたのですが、他メンバー一致でちーさまに決定!)はご多忙につき欠席。次回、お待ちしております。

コスモス福岡支部の歌会を一言で言うと、「自由」。作品に関わる発言なら、どんなことでもOK。会員のみなさんと選者の間に隔てはありません。活発な意見交換が魅力です。今回は2名、他支部からのご参加がありました。お時間のある方、ぜひ福岡支部歌会にいらして下さいませ。お待ちしております。




さて、日も暮れていよいよ宴の時間とあいなりました。
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今回は、御膳屋天神店で、12月のコース料理をお願いしました。もちろん飲み放題。(画像お借りしております。)


ここで、南の魚座の組織改変報告。執筆メンバー7人に加え、顧問、IT管理者、広報を置くことになったのです。

顧問は、「みなみの魚座」創設メンバーの辻本美加さんの夫君、浩さん。通称ヒロリン。コスモス福岡支部会員。大きな心で見守っていただくとありがたいです。

IT管理者はもちろんクリクリさん。執筆メンバー土曜日担当ユリユリの夫君で、その道では知られた存在。なんか、すみません、ちょいちょい変な質問ばかりして。助かってます。

そして、広報、中村仁彦さん。コスモス福岡支部会員で、福岡商工会議所専務理事(って、すごい人なんですよね、多分)。この日も午前中からいくつかの会議の後、歌会そして宴というハードスケジュールだった模様。また一つ、お仕事増やしてすみません。

で、この役職3つが増えて何が変わるのかというと、実はわれわれにもよくわかりません。ただ、もののはずみで始まった当ブログが、続けているうちに多少なりとも面白いと思っていただけるようになり、関わってみてもいいなあ〜と思っていただけるようになったとしたら、それはとても嬉しいことです。

短歌の縁とは不思議なもので、本来なら知り合うはずのない者同士が仲良くなったり、人間関係を辿っていくと間接的に知り合いだったり…、驚くような出会いがたくさんあります。これも韻律の魔なのでしょうか。ますます短歌沼にハマりそうです。

さて場所を変えて、CAFE  de  CRIE  DENでコーヒーを。ここでは地方短歌大会の運営の効率化などについて、わりと真剣に考えてみました。
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      話合いからの〜カメラ目線

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豪快にカフェオレをつくるユリユリ


短歌人口の高齢化は避け難く、出詠者の減少も問題ですが、大会運営側の人員の減少もまた考えなければならないテーマです。うーむ、どうすれば良いのかしら。お知恵、拝借いたしたく存じます。


こんな感じで、4回目のブログ記念日は過ぎてゆきました。ブログは運動体。発信を続けることで、教えられることがたくさんありました。これからも「南の魚座   福岡短歌日乗」よろしくお願い申し上げます。
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左、広報中村氏。右、IT管理者クリクリさん。頼りにしてます。



頬を刺す極月の風ここちよし事を成さむと決めたるけふは        早苗

# by minaminouozafk | 2016-12-13 00:48 | Comments(7)

青の太陽  百留ななみ


蟻の巣のような深い穴から見える青空はまるい。小さなまるいブルーは希望であり太陽だ。

 



15日、明々後日に山口県の湯本温泉でロシアのプーチン大統領と安倍総理大臣の会談が開催されるらしい。地元ではロシア語の講習会、ピヨシキ(ピロシキの中身が地元特産の鶏肉、卵らしい)などと歓迎ムードで盛り上がっている。


日本列島の西に暮らすわれわれは、ロシアよりもアジアのほうに親近感がある。しかし、この夏おとずれた稚内では標識にもロシア語表記があったり、ロシア料理点もある。羅臼から見える国後島は大きい。



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湯本温泉から車で30分ほどだろうか。三隅町に香月泰男美術館がある。香月泰男は美術学校卒業後、下関で美術教師をしていた時に太平洋戦争の招集を受け満州へ、その後シベリアに抑留され強制労働に従事させられた。その時の亡くなった多くの友人への鎮魂をこめて絵描がれたのがシベリアシリーズ57点だ。はじめてその作品群を見た小学生の私はひたすら怖かった。不思議なひかりを放つ黒い大きなキャンバスに浮かぶ骸骨。目を凝らさないと見えてこない大切なもの。たぶん香月泰男が伝えたかったのではないか。




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私はもちろんだが、プーチン大統領も安倍総理大臣も戦後生まれ。ぜひお二人に香月泰男の作品を見ていただきたい。シベリアシリーズだけでなく、同じく背景は黒が基調だが黄色や桃色の花を描いた小品、明るい色彩の素描・・・大好きな作品も。


穴からの星は動くや真蒼の太陽にある星の残影

百留ななみ


# by minaminouozafk | 2016-12-12 07:56 | Comments(11)