島の盆

有川知津子


灯籠を明かしに島に帰っていた。と言っても、体力仕事は弟の担当。
島のお盆はお墓で灯籠を明かし、花火をする。花火をしながらいろいろ話す。
灯籠は古い方がいい。新しい灯籠が明かされる家は、新しい仏さまがいるしるし。
二年前までわが家の灯籠はボロボロだった。


  あららまあ新聞はまだとどきをり祖母の読みける長崎しんぶん


七七忌までは、百か日までは、一周忌までは、と日延べされてきた祖母の新聞の解約。
お盆の14日と15日は、わたしが仏前に運んだ。15日のお昼には「コスモス」(母の分)も届いた。
わたしの分は、博多に届いているだろう。祖母の「コスモス」はもう届かない。

さっそく母はお経のかわりに読んでいた。

祖母に会えなくなったり、美加さんに会えなくなったり、世の中には不思議なことがたくさんある。


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画像は、うちから600歩ほどのところにある砂浜。甥っ子が泳いでいる。満ち潮。



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# by minaminouozafk | 2016-08-17 06:29 | Comments(4)

ちー先輩

藤野早苗

第63回コスモス賞発表
「光る声」 鈴木千登世

・あかがねの蝕の望月仰ぎたり泉下の月のごときその色
・まどろみのあはひにひびく春の雨からだが水になつて流るる
・草の王しいんと咲いてひやくねんをねむりたくなる村の午後二時

三首引用。ことばの響きが優しく、読者に何事をも強いることのない作品。最近めずらしいと思います。昨今の短歌は、どう主張するかに鎬を削ってるような気がします。静かで格調高い抒情、コスモス本流ですね。
ご受賞、本当におめでとうございます。

ご存知とは思いますが、鈴木千登世さんは2014年に第1歌集『向きあふ椅子』を上梓されています。

・火遊びをして待ちをりしふたりの子日暮れそんなにこはいかこはいか
鈴木さんは、高校教師。子育てはさぞかし大変だったろうと思います。「日暮れそんなに〜」以下、胸を締め付けられます。
・人麻呂の律こそよけれおほどかな律に揺れゆく玉藻黒髪
鈴木さんの韻律の秘密は人麻呂にあり。納得です。
・午後深き路地のアンニュイ逝く春の句点となりて猫眠りをり
猫のうた〜‼︎猫の個性を拾って見事。
・あふり焚きねらし焚きまた攻め焚きの名に呼び工は真火を操る
萩焼の陶工を詠んだ作品。焚きの詠み分けが効果的。知ることの喜びが一首の迫力になっています。
・蕾みたる桃と菜の花ほぐるれば春 ゆつくりでゆつくりでいい
このやさしさに泣いてもいいですか。背中をさすられている気がします。
・履かぬまま合はなくなりて蔵ひたり時の栞のやうな子の靴
子どもの足が瞬く間に大きくなっていたあの頃。母としての追憶が沁みます。


ああ、他にも紹介したい作品はたくさん。
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ぜひ、ご一読下さい。柊書房、装幀はひがしはまねさん、選歌と帯文はゆかりさんです。

コスモス便に書いていただいてましたが、鈴木さんと私は山口大学人文学部語学文学科の同窓生。鈴木さんは国文学専攻、私は国語学で、鈴木さんは一年先輩でした。畑違いの国語学の講読も取られていて、怠け者の私たち国語学の学生を差し置いて、教授の覚えいとめでたき先輩でした。愛くるしい顔立ちと知的な雰囲気、隔てない人柄で、研究室の数多い先輩方の中でも一際印象に残る方でした。そんな鈴木さんについた愛称は「ちー先輩」。研究室のあちこちでちー先輩を呼ぶ声が飛び交っていました。
不思議なご縁で、また同じ結社でお会いできること、本当にうれしいです。受賞のお写真、学生時代とお変わりなく、これにもびっくり‼︎また色々お話したいです。


講読のあとのランチはホラ吹き男爵(ホラだん)で 先輩後輩もう五十過ぎ 藤野早苗

山大通りの喫茶店「ホラ吹き男爵」、もうないのですね。だって、あれから30年ですものね。

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# by minaminouozafk | 2016-08-16 09:24 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(6)

白きアンテナ

秋のさびしい南の空にぽつんとひとつだけ光っているのが、南の魚座のフォーマルハウトです。みなみのひとつ星とも言います072.gif


手作りのたった三人の創刊号だけの同人誌。美加さんの急逝のあと時間は止まったままでした。山の日の夕暮れどき、突然、小さな小さな同人誌の名前でブログを立ち上げたとの連絡をいただきました。美加さん、良いですよね。私も突然のことで戸惑っています。私のつたない短歌や文章をブログで発信することにも躊躇ったままのスタートです。しかし、せっかくお誘いをいただいたブログ、愉しみながら書いていければと思います。


 7月下旬、礼文島に行きました。霧に包まれた礼文の丘は幻想的な仙境でした。色とりどりの野の花、そのなかで見上げるほど壮大なエゾニュウ(エゾは蝦夷、ニュウはアイヌ語で食用・薬用)の群れ立つ姿は摩訶不思議でした。宇宙船で違う星に降り立ったようでもあり、なんだか懐かしい原風景のようでもあって。天空へと伸びる太い茎の先の繊細な白花はきっとあの世につながっています。線香花火のように空へとひらく白は、たぶん幽界とのアンテナ。


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礼文島のエゾニュウ


エゾニュウの白きアンテナ送信せよみなみの魚座のブログデビューを
                                     百留ななみ


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# by minaminouozafk | 2016-08-15 10:24 | Comments(5)

ペルセウス座流星群

      
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庭のバジルの花

初めてブログに登場することになりドキドキしています。
「女子会的に歌誌を作りたいね」と話していたのが、あれよあれよという間にブログにとなり、そし数日で開設という運びになりました。心の準備がまだ十分ではありませんが、楽しみながら書いて行きたいと思っています。

「みなみの魚座」という名前のすてきな歌誌を創ったのは、「コスモス」・「桟橋」の仲間の女性3人でしたが、その一人の辻本美加さんが昨年亡くられたことは、既に一昨日の記事に書かれていたと思います。
昨日はお盆の入りの日でしたが、その直前にこのブログが急にできたのも何か意味があるのかもしれません。
ヘルプを見ながら、四苦八苦して書きこみをしているのを、お盆で帰って来た美加さんが、どこかで見ていてくれるような気がします。

深夜まで空を見ていたのに流星を見つけられませんでしたが、昨夜はペルセウス座流星群がみられるピークだったそうです。
亡くなった人を「お星さまになった」とよく言いますが毎年お盆のころに流星群が見られるのも、なにか不思議な感じがします。


日の出まへの海の白さに咲きてをり星をひと晩見てゐしバジル  大西晶子  

                       

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# by minaminouozafk | 2016-08-14 09:00 | Comments(1)

はじめの一歩

 「南の魚座」のブログが立ち上がるまでのお手伝いだと思っていました。それがこのようにメンバーの一人として名前を連ねることになり、いちばん違和感を覚えているのは他でもなく、この私です。短歌を詠み始めてまだ5年数ヶ月で、このような場に発表することに躊躇はありますが、何事も経験だと思い一歩を踏み出すことにいたしました。

 皆さまの厳しくも温かいご意見をいただけますようお願い申し上げます。



 新しいスニーカーを10年ぶりくらいに買った。今履いている靴の底がツルツルになり雨の日など滑って危なくなったからだ。

私がひとつの靴をとことん履くのには理由がある。私は足に外反母趾など三つほどのリスクをかかえている。そのため、足が靴を選ぶこととなり、いったんフィットした靴はなかなか手放せないのである。実際、この十数年間はやっと出会えたストロバーの靴以外は買ったことは無かった。そんなわけで、私にとって新しい靴を履くというのは足に馴染んでくれるかどうか大きな不安を抱えたものなのだ。


 この靴が少し汚れてかたちが崩れたころにはこのブログへの投稿にも進歩の跡が見えるように頑張っていきたいと思っている。



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      すこしだけ不安な一歩の踏み出しにシューズの紐をきつめに結ぶ         栗山由利


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# by minaminouozafk | 2016-08-13 08:48 | Comments(2)

夢のはなし


昨年の六月は母を亡くし、宮英子さん、大切な友人の辻本美加さんが亡くなられた悲しい月でした。

なんとか美加さんの意思を受け継いで、南から短歌の発信をと思っていました。
そして、ようやくこの形に辿り着きました。
さて、二番手です。

先日選歌をする中、猿達が柿の木の枝を揺すって青い柿の実を落とそうとしていた。という歌と出会った。
その夜、母の夢を見た。 晩年の母は病気のために手足共不自由になり、施設でお世話になっていたのだが、
夢では、その施設から「母が行方不明になった」と電話がかかったのである。
急いで駆けつけて、裏山まで探すと大きな木の下で沢山の猿達と身を寄せ合うように眠っているのだ。
ふくよかな母に、すがるような子猿たちと、満ち足りた笑顔のまま眠る母の様子が今も脳裏に浮かぶ。

施設に入って一年余り、ほぼ毎日身の回り世話に行っていたものの、段々と弱り、笑顔も無くなっていった母に申し訳ない思いがあり、母の介護の延長のような夢は何度も見てきた。
今回の夢は「もう悔やまんでよかよ」という母からのメッセージだったのだろうか。

父に三度目、母に二度目の盆がやってくる。
夏の暑さを象徴するようなアメリカデイゴの花が真っ盛りです。

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アンタレスと火星近づき射るやうなひかりを放つみんなみの空    大野英子
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# by minaminouozafk | 2016-08-12 11:20 | Comments(7)

はじめまして

ブログ、はじめました。
ひとりではありません。福岡とその周辺に住む女性7人です。

私たちは、短歌結社コスモスに所属しています。会員数2,000超の大所帯は安定感がありますが、ぼんやりしていると多数に埋没したままあっという間に時間が過ぎてしまいます。
このままではまずいんじゃない?そんな気持ちで集まった仲間です。
今日から、曜日替わりで毎日更新を目指します。
ブログタイトル 南の魚座 は福岡発信ということもありますが、実は、以前、この題名で出版された同人誌があったのです。参加者は3名。素敵な本でした。
でも、とても残念なことに、その中の1人が亡くなられたのです。私たちの大切な友達でした。そして、素晴らしい歌人でした。その人のことは、また、お話することがあると思います。彼女の短歌に対する思いを、このブログが受け継ぐことができるといいなあと思っています。

それにしても、急な展開でした。ブログが今日、立ち上がるとは誰1人として思っていませんでした。なんとなく集まって見る?みたいな感じで、天神のアクロスシンフォニーホール喫茶に集合したのが14:00。その2時間後にはもうブログのページができておりました。ビックリ!
クリクリさん、ありがとう。私らデジタル音痴にご助力いただき、感謝です。そして、もう逃げられませんよ。ふふふ…
こんな感じで立ち上げ作業してました。楽しかった!
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さて、当ブログは、短歌日乗。1首は作品を載せなくちゃ。で、今日の短歌、

ひさかたの天の羽衣もたざれど南の魚座指してはつしん 藤野早苗

メンバーは随時発表。お楽しみに。

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# by minaminouozafk | 2016-08-11 20:29 | Comments(19)