さらさら。

青みがかった空気はさらさらしていて歩くほどにからだが軽くなる。

かるいかるい。

石段をのぼってゆくと、はらり、というかんじで右手側がひらけた。

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ここまでは、両側から樹木が迫っていたのだ。

いやに青っぽいとおもったら、なんだ、木が踊っていたのか。

なんて名の木だろう。

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そばへ寄ってみると、向う側はすこし、くだるようになっている。

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  足もとには、
  黄の花にまじって裂けた実が落ちていた。

  この木の木の実?



ますます軽くて、仰いだりしゃがんだりしていると、後ろから声がした。

「二月にいらっしゃい。花のころに――」

たしか、さっき行き合ったグループを案内してらしたな。

ほどよく空気になじんでいる。

もうずっと「かるい」ままに違いない。



すうと指をあげるので、つられて見上げると、実がまだ残っていた。f0371014_23053680.jpg

二月が花どきの実。

なんて木だろう。



この地にゆかりの深い、

晶子さん(日曜の)、英子さん(金曜の)なら知っているだろう、と思う。

もしかしたら、この木の花の写真も持っているかもしれない、とも。

ここは、神域。

すこし登ると、宗像大神の降臨の地という謂れの古代祭場がある。

「二月に」と言った人は、

このオガタマノキ(招霊木)が、ミカドアゲハ(帝揚羽)の食樹であることも教えてくれた。

  かぐはしき二月の杜へいざなふは誰であつたか祖母の顔して

宗像大社の招霊木。おさない帝揚羽をはぐくむ木。


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# by minaminouozafk | 2016-11-16 06:16 | Comments(6)

愛読書 藤野早苗

ちょっと疲れているなあ…と思ったとき、手に取る本がこれ。

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『へんないきもの』早川いくを  著・寺西晃  絵


世にも奇妙な生き物を取り上げ、切れ味鋭いキャッチーな文章とCGに頼らない緻密なイラストで、その生態を伝えてくれる極上の一冊。

ドラマティックな小説や、抒情的な詩歌もいいけれど、疲労度がリミッターを振り切ってもう集中力の欠片もなくなってしまったときには、こういう本が読みたくなる。


多種多様な個性溢れる生き物が紹介されているのだが、その中で印象深いものをいくつか。

ハダカデバネズミ…全裸の覗き魔ではない
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ツノトカゲ…血の気を失う最終兵器
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ダツ…矢も盾もたまらず飛んでくる槍
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いかがだろうか。
こんな生命体が存在する不思議を感じると同時に、他者から見れば無意味で非効率的な生き方も当事者にとっては抜き差しならない必然性をもっていることについ感動してしまう。命には遍く意味があるのだなあ。

大笑いして、ちょっとしみじみして、気がつけばパワーチャージできている、『へんないきもの』はそんな素敵な本なのだ。


ハダカゾウクラゲつて何?くらげなの?ゾウなの?いいえ巻き貝ですよ

✴︎お気付きかもしれませんが、私、今日ちょっと疲れております。こんな不真面目な更新でごめんなさい。





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# by minaminouozafk | 2016-11-15 01:19 | Comments(8)


路地の崩れそうな古い土塀になにやら鮮やかなみどり色。近づくと、それは揚羽蝶の幼虫というかサナギへの変身中の姿だ。まだ、みどりの目もわかる幼虫の外観。前蛹というらしい。


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節穴だらけの私の目でもあらっと思ったのだから、鳥や蛇たちには明らかであろう。葉っぱの中の保護色も土塀ではかなり目立つ。土塀につかまり、口から糸を出して自分をしっかり固定する。信じられないような劇的な変化がこの小さなみどり色の中で起きているのだろう。


たしか小学3年の夏休み、黄揚羽の羽化に成功した。はじめは、恐る恐るだったシマシマ青虫くんも途中から妙にかわいく見えてきた。今でも大丈夫。息子たちとも揚羽の幼虫を飼ったことがあるが、ある日、飼育箱に蜂がいて驚いたことがある。 どうしてハチ??? 昆虫図鑑によりアゲハヒメバチと判明。


アゲハヒメバチは揚羽蝶の幼虫に卵を産みつけて、孵化した幼虫は少しずつ揚羽蝶の幼虫を食べる。宿主の青虫くんがサナギになると中身をすっかり食べて、その中でサナギになって羽化した後、揚羽蝶のサナギに穴を開けて出てくる。自然界のホラーだが、食物連鎖も同じことかもしれない。


昨日、同じ路地に、あらあらいない!! スマホで位置確認。すると土塀に馴染んだ灰褐色の蛹がしっかり土塀にくっついていた。蛹は日照時間が13時間半以下になると越冬するらしい。吹きさらしの土塀。春まで大丈夫だろうか。蝶を夢見つつ長い長い眠りに入ったサナギくん。



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城下町の観光として残したい土塀。やんごとなく崩れたら土塀もどきと再築される。そんな新しい土塀にカマキリ発見。スマホを睨む眼光は鋭い。頭?が動くせいかカマキリは人っぽいと思う。カマキリも最期の力を振り絞って卵を産む。カマキリの卵は卵鞘といい灰褐色の硬い表面で、揚羽蝶の蛹とも似ている。



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虫たちは冬の準備万端だ。

菜の花のイヌノフグリの夢みるや土塀に眠るみどりのコクーン

百留ななみ


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# by minaminouozafk | 2016-11-14 07:31 | Comments(5)

 コスモス福岡支部の支部報「水城」265号を、11月10日の発行予定日に遅れず発行することができた。
 年3回発行予定の3冊目だ。発送が終り、あとは支部歌会で手渡す分と保存用がのこるだけになった。

 今回は「柏崎驍二氏追悼特集」で、福岡支部の会員たちの歌集評、一首評を掲載している。     
 お住まいになっていた盛岡は福岡とは遠く、あまりお会いする機会はなかったが、歌や文章に 魅かれ氏を敬愛していた会員が福岡には多い。
 それぞれ氏の歌の魅力を多面的に見出して気持ちのこもった文章になっていると思う。

 20頁ほどの薄い支部報だが、原稿の書き手と編集委員の努力があっての発行だ。
 会員数は減ったが、新しい書き手が増えているので、何とか長く続けてゆきたいと願う。
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                      今年発行した「水城」263号、264号、265号の3冊

水城265号で今年の支部報の発行は完了、次は来年3月だ。

 庭を見ると、皇帝ダリアが花をつけはじめている。(写真は去年の盛りの時期に写したもので、いまはまだ一本の枝に二つ三つ咲いているばかり。)
 この花が咲くと、いよいよ冬が近くなったようで少し気ぜわしくなる。
 さあ、年内にするべきことを、本気で考えなくては。
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                  「 先延ばししてはならぬ」と言ひたげな皇帝ダリア高みに咲きて  大西晶子




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# by minaminouozafk | 2016-11-13 06:30 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(5)

さて、先週のブログで紹介したアヒルジャーキーの後日談。

 月曜に中国から帰国した息子に来てもらい夫と三人で、ジャーキーの袋にハサミを入れた。出てきたのは真空パックされた丸ごとのアヒル。しっかりと嘴があり、胴体を魚の開き状態にされた彼?彼女?は、ちょうど猫が前足後ろ足を集めて、その上に顎を乗せたような姿だった。皿に出してキッチンバサミで切り分けるときは、何とはなしに「ごめんね」という気持ち。干からびた頭を持ち上げてザクッとやるわけですから‥‥。



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 で、いただきました。思ったよりも味はやさしく、中国料理に独特の八角の香りも抑えめな肉質はチキンに比べて筋肉質で、噛みごたえのあるまさに珍味。。


 妹に写メを送って、よければ今度買ってこようかと聞けば、即座に「いらん」という返事が返ってきた。やはりグロテスクな見た目が損をしている。しかし、冬場になるとよく登場する「ブリのあら煮」はどうだろう。魚の頭を料理の前に半分に切り分けている。私と息子は「眼の周りが美味しいんよねー」と言いながら、眼球を口に運ぶ。これを中国の人が見たらどう思うか。中国の人に限らず大方の外国の人は、おそらく引くことだろう。



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 食文化ひとつをとってもこうである。自分たちのものさしだけで判断していると、美味しいもの、珍しいもの、貴重な体験、色んなものを見落とすことになっているのかもしれない。


      好物のぶりの目玉のとりあひもなくてしみじみ二人の夕餉   由利


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# by minaminouozafk | 2016-11-12 10:13 | Comments(7)

ブログ記念日②

そろそろ遅咲きコスモスも終る頃でしょうか。写真は昨年の能古島の早咲きコスモス。

コスモスは微かな風にも震えるように揺れていますが、台風にもに折れることのない強靭さを見せます。
そして揺れながらパルスを発し、宇宙と、様々なものと交信しているように見えます。
結社コスモスの会員として、こうありたいと思っています。

さて、南の魚座開設から三ヶ月、二度目の記念日。
お一人でも多くの方に私たちのパルスを感じ取っていただければと願っています。

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集ひ来よ   大野英子
書きあぐみ読みあぐむ外は工事中外壁シートに生るる風紋
もう誰も通らぬベランダの外を昼の三日月ひつそり過ぎる
押入れの箱、缶のなかうずくまる兄とわれゐてあぁ、と伸びする
聞いてみたき謎ばかりなる父母の居まさぬ家にちちろ虫鳴く
揺れてゐるのはコスモスかわれなのか亡き人ら集ひ来よ風に乗り

家鴨レース   栗山由利
猫の鼻つつけば半眼寝たふりに起きる起きない根くらべする
「猫はなぁ、畑仕事をしないから可愛いんだ」と父言ひしこと
五さいまで泣き虫小虫だつたこと知る人ひとり母だけとなり
野球なら七回にチャンスありといふ今のわたしは六回を攻める
三人乗りバイクがあふれ上海は家鴨レースのやうな渾沌

花神   大西晶子
秋なかばマユハケオモトの花咲きて花神と呼びしいちにんを恋ふ
ものごとが進むは嬉し支部報の印刷なりて届くを待つも
えんぴつで色うすく書く中一の少女の歌にはつこひが見ゆ
イカ釣りの船の灯着陸ちかき機の窓にひろがるここはわが町
二歩寄ればそれだけ離る柳川の堀のみぎはで漁るアオサギ

あとの奔放   百留ななみ
朝羽振るうすきむらさき、白、くれなゐ剪みて秋の薔薇(さうび)のブーケ
晩秋の茄子のフライと間引き菜の蕪の浅漬け、鯵の昆布締め
土たたく木槌の音のアンダンテ 土、水、塩で土俵をつくる
枯れ色の飛蝗の跳べり秋空へ最後の脱皮のあとの奔放
沈下橋に腰かけゆらす足先が水面のわれに届きさうなり

遺伝学   藤野早苗
大人とは酒飲んでいいコドモなり中華円卓ぐるぅり回す
エンドウを修道院に育てつつ司祭メンデル遺伝学成す
秋の雨後没り日を映すにはたづみ地獄の口のごとき明るさ
うぶすなの墓処のめぐり富有柿に混じり次郎がひそか色づく
虹彩をきゆッと絞りぬ霜月の辺津宮に降るひかり白くて

白秋の雲   有川知津子
五回目の批評会まであと二十日ウリタエビジャコ検索したり
わが生はいまどのあたりのどかなり日本橋にてたびたび下車す
よき人の置き忘れたる目薬のきよきひかりのはくしうの雲
知るほどにひとはますます好きになるますます好きになつてそれから
秋風はひかるほかなし壮年の祖父の航海日誌のうへに

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柳川 白秋祭への路上にて


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# by minaminouozafk | 2016-11-11 11:39 | ブログ記念日 | Comments(6)

桑原正紀氏の第8歌集『花西行』(現代短歌社)を読んだ。2010年刊行の『天意』以降2014年春までの444首が収められている。

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・猫たちは黄の薔薇ピンクの薔薇と化り風とたはむる在りし日のごと
・猫好きにハガキ書き終へ猫切手貼るときふつとゆるむ口もと

・四苦八苦、十二苦の縛の外側にほほゑむ妻よ悟者のごとしも
・恩寵といふべし癒ゆるに遠けれど妻にたしかないのちあること
・「短歌人」が届けば小池光の歌まづは読みたり妻恋ひの歌を
・春の雲ひかりをためてふくらむを見上げつつ妻はすこやかに病む
・あきかぜや悟達のひとのかたはらに一生不悟のわれ立ちつくす
・妻といふほかなけれどもこの人を妻とし呼べば何かはみ出る

時事
・人間の作り出したるデーモンが囲を越えんとす地震ののちを
・にんげんの叡智と愚昧こもごもに茜よぢれる暮れちかき空
・こころ病む子の殖えこしはバブル期の終はらんとする頃と記憶す

思索
・アナトール・Fが言つたわけではないけれど時間は最も優れた箒
・夏雲の盛り上がるあり浮かぶあり愛のかたちはひとつではない
・賢くて愚かなるホモ・サピエンス火もて栄えて火にて滅びむ

愛(エロス)
・かたはらに歓喜天ゐる思ひするまでにあやしき月光の燦
・りんだうの花にちかづく唯一のまして一度のいのちたふとむ

子どもたちへ
・見も知らぬ〈足長さん〉へ謝辞を述べ少女は医者を目指すと書けり
・ほかほかと冬の礼拝堂ぬくし神の御胸にゐるならば寝よ

花西行
・寝袋を背負ひて桜追ひゆかな花西行と同行二人
・花恋慕する西行の心ふかくひとりの女人棲むと思ひき

どの歌も心に沁み通る。

桑原氏は自他ともに認める猫好き。妻君とともに可愛がっていたミーコてとレオ。2匹の墓標はピンクと黄色の薔薇なのだ。集中散見される猫の歌は作品に温かみを与えている。
2005年、脳動脈瘤破裂で倒れた妻を看取る桑原氏。10年に近い時間の中で、非日常が日常へスライドしてゆく様を静かな韻律に乗せて、生あることの恩寵を詠む。看取る者、看取られる者という境界はおぼろとなり、いつしかもろともに、おおいなる愛に抱かれてゆく。桑原氏の本領が余すところなく発揮された相聞である。

時事
本歌集の作品制作時期は、東北大震災、原発事故と重なり、それ以外にも悲惨な事件、事故が多発した頃である。人間の愚昧さばかりが感じられてならない、そうした現実は今も続いている。桑原氏の怒りと悲しみが静かにうたわれている。

思索
事象を単に描写するに留まらず、本質に最適な表現を与える桑原氏。詩人にして、哲学者である。

愛(エロス)
形而上から形而下に跨るような、ちょっと危うい愛の作品も散見される。これもまた本歌集の魅力であろう。

子どもたちへ
交通遺児のための奨学金足長基金。桑原氏の妻君はそのスポンサーのおひとりなのだろう。万人に遍く愛を注ぐ夫妻に心うたれる。長年高校で教鞭を取られた桑原氏。生徒を読んだ作品の眼差の温かさは極上の読後感を残す。人間性が本物なのだ。

そして、表題作、花西行。
源平の騒乱期に武士の身分を捨て、出家した西行。その人に倣い、職を解かれた後の心は自在であろうとする桑原氏。西行の心に棲む女人を思う桑原氏が自身の内に棲まわすひとは誰なのだろう。桜の花びらほどの紅を余韻に残す掉尾の一首であった。

この一首も紹介したい。
・鍵盤に風ふるるかにさやさやと木畑晴哉のピアノ鳴り出づ
晴哉さんはわが敬愛する歌人、木畑紀子さんのご子息。その木畑さんが桑原氏に寄せる信頼はきわめて篤い。お二方のたましいの交歓が素晴らしい。

もっとコンパクトに、歌集の魅力を伝えたかったのに、力及ばず、申し訳ない。
最後に、大好きな一首を紹介して筆を置く。

・歌はわが手作りの燭まよひ行く無明世界をときに照らして

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事あらば声を聞きたき君がこと無明を照らすわが燭とせり


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# by minaminouozafk | 2016-11-10 02:16 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(7)