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雀の寿命  栗山由利

 日に日に日射しがやわらかくなり、七十二侯「雀始巣(すずめはじめてすくう)」ももうすぐである。昨年、リニューアルオープンしたスズメ食堂も稲刈りの頃からお客さんが減ってきて、この冬は1羽も見かけることがなかったが少し前からまた元気な声が聞こえて来たので、残りご飯を置き始めた。


 夫は夫でウォーキングの途中でアオサギと鴉にパンを与えているらしい。野生の生きものにわれわれが口にするものを与えるについてはいろんな意見もあるとは思うが、夫の姿を見つけて毎日飛んでくるようになると、気持ちはもうペットと同じである。先日、ふと鳥の寿命ってどのくらいなのだろうと思い調べたところ、野生下でカラスは78年、ハトは約6年、ツバメは短くて約16か月そして身近なスズメは1年~3年なのだそうだ。もちろん飼育下ではもっと長生きした場合もあるそうだが基本は野生である。


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 意外だったのはスズメの寿命がとても短かったことで、春に生まれて秋を迎えられるのが約50パーセント、そして冬を越して春まで生きられるのがその半分の25パーセントだという。また日本に生息するスズメはこの20年間で80パーセントも減少したそうである。


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<3年前にベランダに迷い込んだ子スズメ。その後、無事に飛び立つ>


 スズメの巣は戸袋や瓦屋根の下など、建造物のわずかな隙き間が適しているのだが、昔ながらの和風建築が少なくなったことに加え、天敵から身を守れるような樹木、低木や藪の減少、巣材となるイネ科の雑草の減少、主食となる種や虫の減少など、原因となるものは多い。スズメは畑や庭の雑草の種や、アブラムシをせっせと食べてくれる益鳥でもある。稲を食べる害鳥とされてきたのは、都会のスズメとは別種のニュウナイスズメだが、かつて中国でこのスズメを徹底的に撲滅する政策をとった結果、作物の害虫が大量に発生し、大凶作となったことがあるらしい。ニュウナイスズメは稲も食べるが、バッタなど稲の害虫も食べてくれていたからだという。すべては連鎖の中にあって均衡が保たれているということである


 この先、スズメを見かけることが珍しいという時代がくるかもしれない。だからと言ってみんなでスズメに餌をやりましょうとは言わないが、窓から差し込む朝の光とスズメの声は私にとって春の訪れを感じさせてくれる、ずっとあってほしいもののひとつである。


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<一足早く満開の桜ん坊になるさくら>

       かくれてるつもりでせうが雨どいに頭ふたつがみえます雀


# by minaminouozafk | 2026-03-14 14:37 | Comments(0)

木登り少女 大野英子


 久し振りに、博多川沿いに、那珂川と合流する道を港まで歩きました。ベイサイドの西側、わが家からは、一番近い港の風景に出会えます。

 そこには緑地サンセットパークという小さな公園があります。


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 緑が豊かに茂っているときは気付かなかったけれど、葉が落ちて、芽吹きはじめの今、私の中の木登り少女の血が騒ぐ、一本の木があります。


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近寄ると、ますます登ってくれと言っているとしか思えない堂々とした幹と枝振り。もちろん、年も年ですし登りません。木も、根っこが土から姿を見せて、そうとう年季が入っていそうです。

 そっと、この幹をなでて、お互いがんばろうね。って声を掛けていました。


 木登りと言えば、長崎の母校である淵中学のグラウンド横の土手を思い出します。

まだ幼い頃ですが、校舎裏を通り抜けた、グラウンドから下に向かう土手沿いに手頃な木が植えられているその場所は、遊び放題、登り放題、土手の下を流れる小川の辺りは、春にはノビルがたくさん摘めました。


  

 もうひとつの遊び場所は、近所にあった簡素な造りの製材所。平日は電気鋸の音が響き渡る場所でしたが、休日はひと気もなく、あちこちに木材が積んであるその場所は、恰好の秘密基地でした。

 思い出すだけで、削られたばかりの木の香りが蘇ってきます。


 今、思うとどちらも危険な場所ですね。でも、昭和のこどもたちはそうやって遊んでいたのです。何年か前に訪ねた街並みはすっかり変わり(急な坂と細い路地はそのままですが)中学校も立派に建て替わり、きっと危険な土手もなくなっているでしょう。


 

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木を眺めながらぼんやり思い出に浸っていると、あっというまに夕暮れが迫っていました。


               水際をはたはた叩く音がするまで低く飛ぶうみう 帰らう


# by minaminouozafk | 2026-03-13 07:25 | Comments(0)

春3月   鈴木千登世

萩の母からわかめともずくが届いた。わかめはこの春の新わかめ。竿干しして乾燥させたものが刻まれてすぐに食べられるようになっていた。毎年このわかめで握ったおむすびを食べると春がやってきたことを実感する。

今年のわかめは少し粗い。以前は少し湿らせたふきんに包み半日置いてから包丁で切っていた。そうすると固いわかめがやわらかくなって刻みやすいのだ。美味しいけど刻むのがねえ。とよくこぼしていた。最近はキッチンバサミに変えたとか言っていたが、わかめを刻まないと母の春も始まらないのだろう。


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書店に夏川草介の「エピクロスの処方箋」が積まれていた。今年の本屋大賞ノミネート作で隣にはシリーズ一作目の「スピノザの診療室」が置かれていた。図書館で借りるとしたら数か月待ちになる。やっぱり今読みたい。読むなら最初から読みたい。迷った挙句結局2冊とも買ってしまった。

帯には「その医師は、最期に希望の明りをともす」とキャッチコピーが記されていた。主人公は将来を嘱望されていた内科医の雄町哲郎。亡くなった妹の子どもと暮らすために大学病院から京都の地域病院に移った彼の、死と向き合う日々が描かれている。一章だけを読むつもりだったのにやめられず結局三章まで読んで夕食の準備に取り掛かった。


読んでいるとしきりと父のことが思い出された。今年に入ってまだ実家を訪ねていない。3月は父の誕生月で亡くなったのも3月。会いに来いよと父がこの本を勧めたのかもしれない。


母暮らす海の家にも春は来て水仙、菜の花、光るさざなみ

早咲きのさくらの並ぶ花の店莟の(さは)な一枝を父に


# by minaminouozafk | 2026-03-12 12:06 | Comments(0)

ブログ記念日114


 15年前の今日、私は糸島の図書館の2階にいた。1階のカウンターでその報を聞いた。対応してくれた院生アルバイトのゆるやかな三つ編み、片側に寄せられた三つ編みの陰影が、その日の栞のように残っている。

 日本に住む多くの人が、あの日、生活の時間が狂う経験をした。物理的にも精神的にも――。福岡は近いとはいえず、けれども遠くの出来事とはとうてい思えなかった。

 訪れて記憶に新しい鮎川港にまだ私は立っていたし、若い祖父母が暮らした家も幼い母が通った坂道もあざやかに思い出された。


 11日のめぐり合わせで、今日は「南の魚座」の記念日。改めて歌の縁をおもいつつ有川記す。


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 羽白熊鷲 有川知津子

ここもまた誰かの故郷ひびわれた樹木に注連縄が張られて

射貫かれしすがた記憶にある者かつばさ鳴らさず生きる里人

丘陵は鳥のつばさに暮れてゆく人のすがたを見失ふまで

ゆふぞらを東へ駆ける笑ひごゑ羽白熊鷲の奥つ城どころ

羽ばたきに雲ほぐれつつ遠浅の海の引ききるときのしづけさ


 たゆき海光 鈴木千登世

子ども語のひとつと思ふ〈こんぷりいと〉回らぬ舌が得意げに言ふ

食堂にカレー匂ひて穏やかな午後 病む人もゆるく息して

島影を過るフェリーの影消ゆる時あり たゆき海光の中

時代つと移り何がな書きにくく殺虫剤をスプレーと記す

やさしさの時代は良けれ良けれども良いのか「殺」の字の消えゆくは


 きらめきの一皿 大野英子

きらめきの一皿と逢ふ北風にあふられて着くあはきともしび

うつくしき手仕事なりて時をかけあじはふ一皿、またひとさらを

あさのひかりゆふべのひかりをたくわへて時ながく咲け梅のしらはな

鳥を呼び花虻を呼び花しづか実らずとも良し老木の梅

とぢてゆくひとひたまゆら火を灯すたいやうそしてけふの充実


 父のサンダル 栗山由利

孫をつれ徐州の桜もみただらう父のサンダルおかへりなさい

一杯のお茶でちかづくこともある さあお茶しましょ、春はテラスで

案内のこゑはかろやか語尾すこしあがるのもよし女性運転士

テーブルを笑顔がかこむまんなかに主役となつて母の手料理

黒髪のほつれなほして雛壇にならぶ(ひひな)も七十二歳


 縫ひぐるみ 大西晶子

もの言はぬ縫ひぐるみたちにたましひを見出だし児らは良き友にする

やはらかき縫ひぐる抱けば老いわれに降りて来たれり慰謝のごときが

欲張れば身を損なふとふお神籤を運びきたれり土のしろうま

得点はどうあれ力尽くせしはひと世のあかき記憶にならむ

風呂の湯に手足のばして思ひをり雨多き国に生れしは恩寵


 にんまり笑顔 百留ななみ

てんこ盛りに仏飯そなふ仏壇を囲むちちはは四人の写真

坪井川わたり上通りの古書店へ漱石となりそぞろゆく午後

黄楊の木で彫られし入れ歯を愛用せし本居宣長、滝沢馬琴

セツさんのにんまり笑ふ遺伝子を継ぎたるミータンすくよかならむ

大ミミズ驚かせつつ三月のはたけに人参ていねいに蒔く


 ハードラー 藤野早苗

カンバスに紛れ込みたし語り部の咽喉(のみど)をとほり名を呼ばれたし

新しきわたしの小さなコンクェストe-Taxで申告をせり

迫りくる障害迷はず飛び越して110(トッパ)ハードラーだつたあの頃

戦ひのなき世のための戦ひと大義搭載ミサイルが飛ぶ

ミモザの黄掲げてあゆむフラワーデモ 「わたし」を大きな主語で括るな



# by minaminouozafk | 2026-03-11 08:00 | ブログ記念日 | Comments(0)

3月8日、日曜日。天神はすごい人出。フラワーデモの影響もあったのかな。


アクロスでの支部歌会の帰り道、たくさんの方々とバッタリ。そんな偶然を思い出し、「今日は出会う日なのかもしれない」と思いながら、ひとりお茶をしていたら、隣の席に、とても美しい髪色の女性がお座りになった。多分、私より年上。けれど颯爽としたカジュアルなお召し物と、茶色のような金色のような艶やかなストレートボブが、その方を文字通り輝かせていた。


そんなこと滅多にしないのだけれど、その存在感に惹かれて、つい声をかけてしまった。


「御髪のお色、綺麗ですね。」

するとその方、まさしく花が咲いたように微笑まれ、

「ありがとう、とても嬉しい」

とおっしゃった。そこからずいぶん長く、お話しさせていただいた。


そもそも、なぜ私が見知らぬ人に突然話しかけるという奇行に走ったかというと、現在の悩みがまさに〈髪色〉だからである。ご存知の方も多いと思うが、今の私の髪色は〈薄ーく紫の入ったグレー?〉という、なんとも表現し難い色味らしい。これがまた、天然光か蛍光灯か電球光かで見え方が違うのがややこしい。


バレイヤージュのひと  藤野早苗_f0371014_11322995.jpeg


自宅の洗面所の光で日々自分の姿を見ている私は、つい先ごろまで、自分の髪色は黒だと信じて疑わなかった。ところがここ半年ほど、さまざまな場面で「その髪色にするにはどうしたらいいのですか?」と尋ねられるようになり、そこでようやく自分の頭髪の異変に気づいた次第である。


これも以前ブログに書いたことがあるが、私は尋常性白斑症だ。免疫系の病気で、身体中のメラニン色素が抜けていく。私の場合、最も症状が現れているのが頭から首筋。頭皮のメラニンが失われると、そこから生えてくる髪も当然白髪になる。ならば染めればよいのだが、ところが数年前、ジアミンアレルギーも発症。


以来、アレルギー成分を含まないカラークリームシャンプーで洗髪しながら、髪色補正(黒)をしていたつもりだった。けれど、ほぼ白い頭髪に定着力の弱い黒に近い紫系色素を入れても、やはり「黒」には見えないらしい。そのことが、ようやく腑に落ちたのがここ最近のことだ。もう還暦も余裕で過ぎた身としては、今さら黒々とした髪色になりたいとは全然思わない。けれど、あまり人の興味を惹かない、ナチュラルな範疇に収まる色はないだろうかと、常々考えていた。


そんな時、目の前に現れたのが、バレイヤージュも美しいダークブロンドの女性。その髪色自体は決してナチュラルではないけれど、その方のありようそのものがとてもナチュラルでエレガント。こういうふうに生きるには、どんなマインドセットでいらっしゃるのだろう。そう思ったらどうしてもお話ししてみたくなり、つい声をかけてしまった、という次第。


その女性は、私よりひと回りちょっと年上。現役でバリバリお仕事をされている。問題の(笑)御髪は、もう数十年のお付き合いの美容師さんにお任せしているので、自分ではよくわからないとのこと。この無頓着さもまたエレガントだ。


そうなんですね、と得心していると、

「ここの美容室、紹介しましょうか」

と素敵なお申し出。


長く今泉にあったその美容室、最近移転したらしく、マダムにとっては少々通いにくい場所になったらしい。美容室の名前を伺い、スマホで検索してみると――なんと、わが家のすぐ近く。あまりの偶然にびっくりしていると、「もし行かれるなら私の名前を出してくださっていいですよ」と優しいお言葉まで頂戴した。名前?ふとそこで、大概長く喋っていたのに、お互いまだ名乗り合っていなかったことに気づき、二人で爆笑。あらためて自己紹介をして連絡先を交換し、「また、いつか」とゆるくて心地よい約束を交わしてお別れした。


どうやら、やはりこの日は出会いの日だったらしい。


 

    クロワッサンアマンドナイフで切り分けて時空の交差するカフェにゐる



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# by minaminouozafk | 2026-03-10 11:29 | Comments(0)