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 2月14日のチョコレートについていえば、もしかすると、そんじょそこらの殿方より貰っているかもしれない。



 この日が誕生日だからって何もチョコレートでなくてもいいのに、そうなってしまうのは、きっと街中にカカオのにおいが渦巻いているからであろう。



 今年はこんなのも届いた。


チョコレート 有川知津子_f0371014_07292743.jpg




 このままでは、大きさが分からない。普通サイズのものを載せてみよう。



チョコレート 有川知津子_f0371014_07291537.jpg


 こんな感じとか、



チョコレート 有川知津子_f0371014_07284781.jpg


こんな感じだ。大きいのが分かるかと思う。裏を見ると内容量400gとある。

 こういう歌がある。固形のチョコレートではないけれど、この歌でチョコレートの漢字を知った。



  
楂古聿(チヨコレート)嗅ぎて君待つ雪の夜は湯沸(サモワル)の湯気も静こころなし 白秋




 中身も気になる。


チョコレート 有川知津子_f0371014_07282374.jpg



 普通サイズのものがたくさんではなくて、どうやら一枚もののようだ。


チョコレート 有川知津子_f0371014_07283493.jpg



 これを見たときは、しばらくはあるなあと思ったはずだったのにね――。



 まだずいぶん若かった頃には、14日だけではなく15日にももらっていた。きちんと言えば15日のほうが多かった。チョコ苦手の友人がもらった義理チョコが回ってくるのであったから。



 15日のチョコレートの下りものは今でもあるけれど昔ほどの多さはない。ただ、高級にはなったようである。年を取るというのは、つまりそういうことなのだろう。




  いちごチョコとみるくチョコからなるチョコのアポロチョコレート雨ににほへり




by minaminouozafk | 2020-02-26 06:28 | Comments(1)

 難波津に咲くや木の花冬ごもり今は春べと咲くや木の花  王仁

 競技かるたの序歌としても知られている難波津の歌。この歌の花は梅の花と言われているようだが、私には梅は冬の尻尾に乗っかっている花。「今は春べと」と高らかに嘉するほどの春のイメージは今ひとつ感じられない。

 私が毎年、春の到来を実感するのは、この花が咲いたときなのだ。
咲くや木の花  藤野早苗_f0371014_01460109.jpeg

 二月の終わり頃、満開を迎えるこの花。梅と桜(ソメイヨシノ)の間に開花する、この迷いのないピンクの花の無邪気さが、冬の寒さで縮こまった体と心を温めてくれ、ああ、春だなあとしみじみ思う。

 でも……、

 この花が咲いたことを喜んで、
 桜を心待ちにして、
 葉桜のあとに梅雨が来て、
 山笠の季節を送ったらもうお盆。
 なかなか涼しくならない昨今のお彼岸が過ぎて、
 一気に秋が訪れる。
 ハロウィンだなんだと言ってるうちに、
 クリスマスも過ぎ去って、
 大掃除が終わらないまま新年を迎える。

 この木の下で満開の花を仰ぐたび、瞬く間に過ぎてゆくのであろうこの一年を思って目眩がする。去年の今頃もこんなこと考えていたよなあ……、と来年もきっと思うのだ、私。


 難波津に咲けるこの花紅(こう)刷ける河津桜にあらまほしけれ

咲くや木の花  藤野早苗_f0371014_01472943.jpeg


by minaminouozafk | 2020-02-25 01:41 | Comments(2)

ひとかた  百留ななみ


もうすぐ桃の節句。

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子供の頃、飾り箪笥の隅の藁につつまれた小さなお雛様がずっと気になっていた。気になりつつもなんとなく聞けなかった。どこかのお土産・・・


二十年近く前、大山に行った時に立ち寄った用瀬町。もちかぜと読む。今は鳥取市用瀬町。看板に惹かれて入った「もちかぜ流しびなの館」。そこで藁に包まれたお雛様とたまさかの再開。丸く編まれた藁は桟俵という。お雛様をのせる小さな舟。そのまま川を流されていく。そのときにお土産で買った流し雛。流せずにずっと我が家にいらっしゃる。ひさしぶりに出してみた。そのままの素朴な愛らしいお雛様。


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知らざりし大海の原に流れ来てひとかたにやはものは悲しき  (源氏物語・須磨)

須磨で舟に人形をのせて流すのを見ての光源氏の歌。ひとかたは一方と人形を掛けている。


下関は壇之浦に紙雛をながす行事がある。紙雛を忘れると薄紙の形代をどうぞと勧められる。

雛流しはもともと3月最初の巳の日の祓いの行事。上巳の祓。



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女の子がいない我が家は立派な段飾りはない。毎年、焼き物や漆器、和紙などの小さなお雛様を飾る。今年は実家から持ち帰った伊万里鍋島焼の畑萬陶苑のお雛様。10cmちょっとのお内裏様とお雛様。ちょっと横向き加減がいい。


全国各地で開かれている雛まつりイベント。城下町長府でもスタンプラリーとかしている。寺社や店舗に飾られているお雛様はかつて個人の家でかざられていたもの。大きな段飾りは場所も取るし飾るのも大変。空き家の屋敷などに観光のため飾られているお雛様からは其々の家族の歴史、縁を感じる。



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久しぶりにお雛様を飾ったから見に来てと近所の友人からのお誘い。立派な七段飾り、三組のさげもん。二組はお母様の手作りという。さげもんの7✕749個の小さな縮緬細工や毬。それが6体。300個もの縮緬細工。教師をしながら孫娘のために一針一針。


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 和室いっぱいに飾られてまさに圧巻。艶やかでみやびやかな可愛さ。うさぎやねずみ、蝶や蝉もいる。色とりどりの百花繚乱。子どもを大切に思う心が雛祭りなのだなとしみじみと感じた。


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15年ほど前に急逝された御母上。残されたさげもんの製作途中の縮緬細工を友人はたいせつに保管している。おひとつどうぞといただいて帰った。大内人形のお雛様の横にならべてみた。友人のお嬢さんの幼いころに似ているような・・・



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ちりめんの小鼠たちが顔よせてこちよこちよ話すきさらぎの真夜













by minaminouozafk | 2020-02-24 07:32 | Comments(6)

マスクが無い 大西晶子

先日川崎に住む次女から、宗像ではマスクを売っているかという問い合わせがあった。関東地方ではどこでも「マスク完売」だと言う。コロナウィルスの感染が問題になっているこの頃なので、防御策に必要なのかと思ったら、花粉症になったようで鼻水とくしゃみがひどいのだと言う。ともかく近い三軒のドラッグストアに電話で在庫を尋ねたが、いずれも在庫が無く、いつ入荷するかも分からないとのことだった。宗像市内には他にも数件のドラッグストアがあるが電話した店とおなじチェーンの別店舗なので諦めた。


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 もうかなり前からマスクの品切れのことは知っていたが、大都市での話だとばかり思っていたので結構衝撃的だった。

品薄なので24時間体制でマスクの増産に勤めているとニュースで聞いたのは先週末ではなかったかしら、その増産されたものはまだ市場に出回らないのだろうか。疑問が湧くが手に入らないものは仕方がない。次女もそれならいいと言った。わが家用には残り少ないが、かなり前に買った箱入りのものがあるのでそれを使っている。

3日前にコロナウィルス感染者が福岡県にも出たと聞いたが、昨日は熊本でもと聞いた。高齢者の死亡率が高いなどと聞くと、古希としてはやっぱり恐ろしくマスクをせずに外出はしたくない。

しかしマスクをつけていても呼吸が苦しくない、ということはそれほど防御用としては役にたたないのではないかとも思う。それでも電車で近い席の人が咳をしたときに見たら、マスクをしていたのでホッとした。 

福岡市営地下鉄七隈線ではマスクをせず咳をする人に怒った他の乗客が緊急停止ボタンを押したという騒ぎもあったし、次女の花粉症の鼻水もマスクなしではきっと困るのだろう。来週あたりにはそろそろ増産しているというマスクも出回り始めるのだろうか、ぜひそうであってほしい。


昨日の夕刊に「新型肺炎 新型インフル薬検討」の見出しで「アビガン」という薬の臨床研究を始めるとあった。治療法がない病気は本当に不気味だ。世界中にじわじわと広がるコロナウィルスによる肺炎だが、何とか治療法が見つかり、一日も早く騒ぎが鎮まって欲しい。



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         白マスク多き街より帰りきぬ咳をする人そつと避けつつ



by minaminouozafk | 2020-02-23 07:00 | Comments(6)

 この一か月ほどのあいだに、怪しいショートメールが二件も送られてきた。ひとつは銀行をかたったもので、「口座が一時利用停止となっているので本人認証の設定が」とあり、リンク先が張り付けてあった。その日に口座を使ったこともあり、銀行がこのような方法で連絡をしてくることはあり得ないと思い、これは相手にはしなかった。


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 あとひとつは荷物の不在通知であった。少しのためらいはあったが、荷物はいつ誰から、どの業者を使って送られてくるのかは予想できないので、こんな方法で通知をするところもあるのだろうと考えてそのリンク先をクリックしてみた。すると、そこは見慣れた大手の宅配業者のホームページだった(ように見えた)。CMに出ているタレントの写真もあり、あまり疑いは持たなかったのだが、逆におかしいと思ったのは今まではこんなことはなかったということ。そして、進んでいくと私の個人情報を入力するようにという画面に切り替わった。さすがにこれはまずいと思って、早々に退散したのは言うまでもない。


おっと、あぶない!  栗山由利_f0371014_11052988.jpg

 こういうサイトをフィッシングサイトと言い、悪意の第三者が有名企業などを装って「ユーザーアカウントの有効期限が近づいています」や「新規サービスへの移行のため、登録内容の再入力をお願いします」などと、偽のウェブサイトのアドレスを貼ったメールを送り付けて、クレジットカードの会員番号などの個人情報や、銀行預金口座を含むいろんなサービスのIDやパスワードを獲得するのを目的としている。2005年あたりからこのような詐欺が確認されていて、手口はネットの広がりに伴って巧妙化、複雑化しているそうだ。


 スマホの画面は小さいものだが、そこから広がっている世界はとてつもなく巨大である。その多くは便利に使えて、私たちの生活に役立つものであるが、一方で闇の世界からの危険な情報や罠もあることをしっかり認識しておかなければならない。『電話でお金は全部詐欺』と同様に、初めて登録する時以外の『ネットで個人情報は全部詐欺』と心に留め置いておく必要がある。

 釣り上げられたお魚さんにならなくてよかった。


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<私の好きな橋の上からの景色、春も近い>


   右肩が上がる字のくせ変はらずに〈春〉のひと文字右上がりで書く


by minaminouozafk | 2020-02-22 11:28 | Comments(7)

無農薬野菜 大野英子

先日、無農薬野菜をどーんと頂いた。

大根、赤大根、青梗菜、葱、ほうれん草、高菜、蕪、スダチ。どれもご自宅で作られたものである。こんなにしゃっきりとした葉野菜はなかなかお目にかかれない。狂喜乱舞するここちで、色んなメニューが浮かんでくる。感謝です。

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ご丁寧に添えられた手紙には、おでん大根は煮ると良さを発揮し、赤大根は生が良く、酢の物にすると見事な赤になるとかかれている。ふむふむ、さっそく千切りににしてレモン酢と和える。千切りにできないすみっこはざく切りにして塩昆布と和える。

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左側は、紅ショウガではありません。右側が通常の色。見事な紅色に変身して無限にいける美味しさ。

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大根は、輪切りにして、どーんと下茹でをする。先ずは大根ステーキにして、ホタテの缶詰とくず野菜のあんかけ。

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ほうれん草はベーコンと温サラダ。酢で味付けして半熟卵と粉チーズをトッピングするわが家の定番。

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青梗菜は、厚揚げとマイタケと共にオイスタソース味。ひとりのあり合わせ料理だが、どーんと作るので一品で満腹。新鮮な野菜三昧の幸せな日々を過ごしている。

しかし、まったくお肉を食べていないことに気付き、急にお肉が食べたくなった。次はお肉と合わせた料理を考えよう。あぁ健康だな~。

       寒波のちひかり溢れる春が来て子羊買ひに街にでかける


by minaminouozafk | 2020-02-21 07:35 | Comments(6)

口ずさむと楽しくなるひびきがある。

「ひなさんぽ」もそう。ひなさんぽひなさんぽ……さんぽぽぽ


今日は「ひなさんぽ」のお話。

ブログに何度が登場した龍福禅寺(大内館跡)のある大殿大路周辺の民家やお店にお雛様を飾って、鑑賞しながら町歩きを楽しむ企画、「ひなさんぽ」。2月15日から始まり、3月3日にはジャグリングやシャボン玉、ファッションショーのイベントも催される。去年はふるさと伝承会館のものしか見ることができなかったので、今年こそはと思っていた。


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ふるさと伝承会館では今年も阿知須の「ひなもん」の展示。


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ねずみ年のねずみ雛


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ちりめんや古布で作られた「ひなもん」。22日にはひなもんづくりの体験もできるそう。



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2階には昭和のお雛様が飾られている。一番手前のお雛様は昭和28年(確か…)のもの。すべてを一度に購入したのではなく、少しずつ買って揃えたとあった。100年近く前のお雛様。何代もの子どもたちに大切にされてこられたのだろう。ひとつひとつのお雛様の表情の豊かさ、仕草の愛らしさに見入ってしまう。


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続いて、ふるさと伝承会館を右に折れ、十朋亭に向かって竪小路をゆるゆる下る。


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ウィンドウの中の大内人形のお雛様を眺めて十朋亭へ。


十朋亭は醤油醸造を営んだ豪商、萬代家の屋敷の離れ。萬代家は明治維新のころに長州藩に資金や宿を提供して支援していて、その建物の一つで吉田松陰の兄の杉民治が私塾を開いたとされている。現在は市に土地と建物が寄贈され、歴史ミュージアムとして整備されている。



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萬代家主屋。玄関のお雛様は御殿の中に。


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部屋にはゆかりのお雛様ではないけれど七段の立派なお雛様が飾られていた。前に座って眺めると子どものころのひな祭りが思い出される。古い記憶の中では三人官女を従えたお雛様はもあったはずなのに、しっかり覚えているのは母の手作りの卵雛やレモン雛。育った家はもう十年以上前に解いてしまって、生まれた町も遠くなった。


3月15日まで開催される「ひなさんぽ」。期間中は30組のお雛様が19カ所に展示されている。今月の歌会の時に町歩きして、ほかのお雛様にも出会いたい。


           雛の家をちこち並びそのめぐりほがらほがらと邪気を拒めり




by minaminouozafk | 2020-02-20 06:30 | Comments(7)


 ふたたびの小石川植物園である。



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 グレゴール・ヨハン・メンデル(1822-1884

 メンデルといえば、まずは、近代遺伝学の創始者。そのことはよく知られているだろう。けれども、彼が修道院僧だったことはあまり知られていないかもしれない。のちに修道院長にまでなっている。



 メンデルは貧しい農家の子として生まれた。苦学しながら短期大学を卒業し、ブリュン(今のチェコのブルノ)の聖トマス修道院に推薦される。ここで聖職者より教師のほうが向いているとみられたメンデルは、正教員になるための検定試験を受ける。だが、合格しなかった。



 メンデルが修道院の庭の一隅でエンドウの遺伝研究を開始したのは、検定試験に不合格になってからまもなくのこと。



 人生の道はまことに不可解である。検定試験に合格していたら、理科の教科書に「メンデルの遺伝の法則」が載ることもなかったであろう。私たちはもっと複雑な名前の冠された法則名を覚えさせられることになったかもしれない。



 さて、ブドウ。ブドウといえば修道院。修道院といえばワイン。ワインといえばブドウ。そのブドウである。



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 説明書きには、大正2年に三好学(第二代植物園長)が、ブルノの修道院を訪れたとき、旧実験園に残っていたブドウの分譲を依頼して、その翌年に送られてきたのがこの木だと書いてある。メンデルが実験に使った由緒あるブドウの分株なのである。




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 葉も花も実もない季節に来てしまったようだ。何もそのタイミングで行かなくても……と思うかもしれないが、このタイミングでしか行けなかったのである。




メンデルの葡萄の木 有川知津子_f0371014_00241206.jpg


 


 ところで、有名なエンドウの研究は、発表されはしたものの、当初その重要性を認める者はなかった。この論文の重要性に気づく人が出て紹介されたのは発表後35年を経た1900年のこと、死から15年が過ぎていた。




  この豆はツルツルかしらどうかなあシワシワだらう春の雪ふる




 大切なことを二つ。千登世さんの以前の記事に、葡萄の木のご紹介があり(葉のみどりがゆたかです)、早苗さんには、「司祭メンデル」の歌がある。





by minaminouozafk | 2020-02-19 06:11 | Comments(7)

 
久保田智栄子歌集『白蝶貝』  藤野早苗_f0371014_12014519.jpg

久保田智栄子さんと初めて会ったのはもう30年近く前だろうか。私が勤務していた高校の同僚(素敵な年上の数学教師)の教え子だったのが智栄子さんで、紹介していただいた当時、智栄子さんは大学院生だった。『万葉集』を研究していて、短歌に興味があると聞き、森重香代子氏の「香﨟人」に参加してもらい、その後「コスモス」に入会。歌も素晴らしいが、評論にも抜群の冴えを見せる中核歌人として、存在感を示す一人である。さらに現在はコスモスの結社内同人誌「COCOON」と「灯船」、二誌で活躍されている。

 そんな智栄子さんの、待ちに待った第一歌集『白蝶貝』。25歳のコスモス入会時から51歳までの26年間の作品のうち、473首が年代順に収められている。

○人の世の哀しみに似る石塊(いしくれ)をまろくまろくと波は打ち寄す
○「かなしみを受け止めます」と貼られある尼寺の庭に菴羅樹(あんらじゆ)実る
○行きずりのわれの手の甲まで舐むる猫にさびしくちちふさ下がる

 一首目について、小島ゆかり氏が帯文で「巻頭の一首は、久保田智栄子さんの人と作品を象徴するような歌である。」と書かれている。「まろくまろく」という言葉を選ぶセンスが素晴らしい。
 二首目、三首目からも日常の隈ぐまにさりげなく存在するかなしみやさびしさに敏感な作者の姿が立ち上がる。尼寺の庭の菴羅樹(マンゴー)、行きずりの猫のちちふさなど、対象として選ぶ素材が絶妙に面白い。

○不規則な手、足、手足の音をたてドアの向かうの吾子が這ひ来る
○「カアサンはとても大きなみず溜まり」眠るわたしを幼は評す
○声にせずわれの歌へるそのつづき子がくちずさむぬり絵しながら
○病み上がりの娘十三米粥にいなごの甘露煮うづたかく載す
○父母が頭(かしら)撫でゐる防人の歌は十六の子が好きな歌
○アウェイにて負け続けゐる球団の、否、子の就活をただに目守りぬ

 あとがきによると、作者に子どもを詠むことを勧めたのは、師の森重香代子氏であったという。26年間の作品を収める本歌集は、さながら三人のお子さんの成長記録であり、また母として、歌人として味わいを深くする智栄子さんの記録でもある。

○「花火はね、死者をなぐさめるものなんよ」広島つ子のをのこ言ひたり
○にがよもぎ流れ出づる国日本にうすむらさきの風評生れぬ

 子どもたちに注ぐ愛とほぼ等価で詠まれる社会詠。これも歌人久保田智栄子の本領である。移り住んだ広島の「ヒロシマ」としての表情を見逃さず、東日本大震災に伴う原発事故を「にがよもぎ」、すなわち「チェルノブイリ」に仮託して詠む。糾弾するのではなく、心を寄せる詠み口に個性を感じた。

○上つ毛野安蘇の真麻群(まそむら)かき抱くわれが家族(うから)の日晒しのシャツ
○たつぷりと夜気を含みて山の樹は息嘯(おきそ)のごとく朝霧をうむ

 こんな歌もある。万葉研究者としての面目躍如たる作品。やわらかな韻律の久保田作品の骨格を支えているのは、こうした確かな地力なのだ。

○わが内の白蝶貝にいつよりか真珠にあらず育ちゐし癌

 本歌集タイトルの由来となった一首。「わが内の白蝶貝」とはリボン型の臓器甲状腺。ごく初期での発見であったため、結果的には事なきを得た作者であるが、その折の心労はいかばかりであったかが察せられる。「「白蝶貝」は(略)マザーオブパール」の別名を持つことから、言葉をはぐくむ真珠に見立てたい」(あとがき)という作者の祈りの清らかさが胸をうつ。忌むべき病にもこのような美しいイメージを付与することができたこと、これもやはり治癒力を高める一つの要因となったのではないかと思う。そして、作者は、「白蝶貝」というタイトルの一連30首で、「O先生賞」を受賞している。

○湖のひかりのやうな、もう誰を好きになつてもいい冬の空
○美しくことばうつくしくあるべしとてのひらに享く六花一片
○よく晴れた冬の青空靉靆(あいたい)といふ語おほきく頭上に浮かぶ
○南天のつぶら眼のごと わたくしが死んでも愛は残るでせうか

 病快癒の後の作品から引いた。自在で、表現に対する迷いが吹っ切れた歌が目立つ。白蝶貝の内に育っていたものは作者の歌人としての矜持でもあったのだ。

○安心して愚痴こぼし合へりくまモンのTシャツを着た辻本さんと
○居酒屋でメニューを見つつ「或いは」と言葉渋すぎる桑原正紀氏
○九州は〈ゆかりさん晴れ〉中空をいまゆつくりとジェット機下る
○やはらかくカーブする道を向かうより出迎へくださりし狩野一男さん
○望まれしとふ〈歓喜の歌〉が流れきて葬儀会場はなやぎをはんぬ
           (直木賞作家 古川薫氏逝去)
○飲食(おんじき)のとき座るときつねにその大人(うし)は港となりてひと寄す              (歌会懇親会、高野公彦氏)

 本歌集に登場する、智栄子さんゆかりの作家、歌人。それぞれを掬う眼差しが的確で、その上温かい。表現者と被表現者は鏡。このような歌群の存在もまた、歌人久保田智栄子の本質を伝えている。

 まとまりなく書いてしまって、果たしてこれが歌集評と呼べるのかどうか、全く自信がないが、この『白蝶貝』、ぜひご一読いただきたい。その一事のみ、お伝えしたいと思った次第である。
 最後に好きな歌を二首。

○このにほひいつか嗅ぎたる月光と似てをり水に溶けゐる石灰岩柱(ラピエ)
○もうひとりわたしがゐてもおそらくは同じ人生歩む気がする



  三十年まへと変はらぬほほゑみの陰に過ぎたる時の重さよ



by minaminouozafk | 2020-02-18 12:02 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(8)

檸檬色 百留ななみ


南極の気温がはじめて20℃を超えたらしい。

下関の2月も春爛漫。

と思いきや昨日の雨で気温が下がり今日は雪が散らつくとの予報。北風も強く荒れた天気だ。


関門橋のたもとあたりの旧下関市内を父母のマンション訪問の帰りに時々歩く。


港町は平野が少なく山肌に張り付くように古い家がならぶ。車はぜったいに入れない場所、洗濯物が干してあったりテレビの音が聞こえたりカレーの匂いがするような路地は大好きだ。



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くねくね道や石段を登ったり降りたり・・・方位感があやしくなる。

石段の上に鮮やかなレモン色。あらあら向こうにもその向こうにも。



あざやかすぎる黄色は既視感。たしか我が家からすぐのバス停近くの店の前の鉢植え。


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 よく見るとレモンイエローのなかに水仙やホトケノザも混じってはいるが、圧倒的な彩度と明度の檸檬色。菜の花も同じ色合いだがこんなに迫ってはこない。くねくね道のおちこち。檸檬色がいっぱい。葉っぱはカタバミと同じ三つ葉。ところどころ海老茶色の斑が入っている。カタバミと同じく陽に向かってレモンイエローの花をひらくようだ。カタバミより花も葉っぱもかなり大きい。葉っぱはクローバーくらい。たぶん外来種を園芸苗として植えていたのが雑草化したのだろう。あざやか過ぎる黄色の群生は怖いほどだ。。



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 調べてみるとやはり南アフリカ原産のカタバミの仲間。オオキバナカタバミ。そのままの名前。観賞用として移入された。家畜にとっては有毒らしい。植物の名前はおもしろい。オッタチカタバミというのもある。こちらは茎が縦に伸びるから。北アメリカ原産。そういえば立ち上がっているカタバミ、みたことあります。やっぱり庭を這っていくカタバミとはちがうのですね。小さな黄花に集まる蜆蝶をながめていると草抜きはどうでもよくなってしまう。莢の種を弾かせるプチプチの感触も子供の頃から好きだった。家紋にも校章にも使われているカタバミ。たぶん酢漿草は馴染んでいるのだ。キマダラカメムシも外来種だった。炎天の壇具川沿いの桜の幹に連なっている姿を思い出した。


 新型コロナウィルスが国内にじゅわじゅわと拡がってきている。グローバルで便利な世の中ゆえの未知なるものへの恐怖。オオキバナカタバミの檸檬色が警告してくれている気がする。



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 同じ下関でも長府ではまだあまり蔓延っていないなあ・・・と思いつつ壇具川沿いをすすむ。


 あらあら川の中に眩しい黄色。紫陽花のとなりにオオキバナカタバミの小さな群生を発見。



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数年のうちにレモンイエローは長府にもひろがるのだろう。

ウイルスよりもずっと大きい種子の知らぬ間の蔓延。

石垣には蔓葉海蘭も紫の可憐な小花を咲かせている。こちらも外来種。


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多様性の時代。みんな違ってみんな良いのだろう。ただその混じり合うスピードがあまりにも早くなって自然淘汰を超えているのではないか。




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明るすぎるオオキバナカタバミの檸檬色 ここは2月の下関です









by minaminouozafk | 2020-02-17 07:25 | Comments(6)