あまい蜜柑の花のような香り。

たしかこの香りは泰山木。

見上げると二階の屋根のあたりに大きな白花。よく見ると艶々の大きな葉っぱに隠れていくつか咲いている。


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泰山木は大盃木とも書く。まさに大きな酒盃を大空に広げたように咲く。

桜だけではなく花はその種によって盛りのときは決まっている。示し合わせたかのように一斉に咲き始めるのは摩訶不思議。いつもの散歩道にはもう一つ大きな泰山木がある。たぶんきっとと行ってみるとやっぱり。ここはちょっと低めのところにもひとつ咲いていた。顔を埋めるほどは出来なかったがかなり近づけた。




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世の中がどんなに乱れても花は変わらずに咲く。

雨を待つように。梅雨空の灯のように。爽やかな匂いを放ちおほどかに咲く。私が知っている木の花では最大だと思う。

高処に咲く白磁のような泰山木の花。

身体いっぱいに香りをいれて、見上げると思いなやんでることなんて大したことないと思えてくる。

晴れ晴れとした気分で路地を歩き出す。




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さっきよりも甘い匂い。

これはクチナシ。りっぱな一重のクチナシの花。見慣れているのは八重の花。

昨日の晶子さんのブログで紹介されていたオオスカシバの幼虫はいないようだ。

一重はきちっとした6弁花で凛々しい。




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クチナシも雨が似合う。

忙しくて見えてないだけかもしれないが、今年は虫が少ない気がする。

門扉のシマトネリコもいつもこの時期、芋虫くんに注意なのだが今年は大丈夫。

檸檬の木も葉っぱが残っているが油断は禁物。

茄子の葉っぱはレース状に。いつもの怪しい天道虫の仕業だ。

そういえば今年はじめての蜻蛉と出会った。季節はたしかに巡っている。



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空に咲く泰山木の白磁なるひとひら雨とともに降りたり






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# by minaminouozafk | 2018-06-18 06:33 | Comments(0)

手榴弾?  大西晶子


梅雨に入り、降ったり止んだりの日が続く。そんなある朝、梔子の葉の上に奇妙なものを見つけた。直径7ミリほどの灰色の球がいくつか梔子の葉の付け根にごろごろと数個づつ乗っているのだ。

球状のそのモノには模様があり、まるで映画で見た手榴弾みたい。



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あたりの梔子の葉がある箇所では葉脈だけが残り、どうやら何かに食われてしまったようだ。よく見るときれいな緑色の芋虫が枝に付いている。小さな手榴弾は芋虫の糞だった。


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 私が小学生だった頃、庭に大きな八重咲の梔子の木があり、香のある花を好んだ父が大事にしていた。ところが毎年花のころになると虫がつき葉を食い荒らすので、父が怒っていたのを思い出す。




この芋虫はいったい何という虫になるのかが知りたくて調べた。


梔子、芋虫、緑をキーワードにして検索すると、、、ある、ある。
〈オオスカシバ〉の幼虫だった。

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            オオスカシバ成虫 (画像をお借りしています)




 オオスカシバはスズメガ科の蛾で、この画像では分かり難いが翅は透明、うぐいす色の太い胴で、直線的に飛ぶスズメガの仲間だそうだ。腹部には赤褐色の帯と腹部の端に黒色の毛束があり、なかなかカラフル。日中に活発に活動し、ホバリングしながら花の蜜を吸い、飛び方と形から蜂とまちがわれることも多いそうだ。


 ときどき大きな蜂が庭を飛ぶと思っていたが、あんがいこのオオスカシバだったのかもしれない。
 美しい昆虫でファンが多いそうだが、わが家のあまり成長の良くない梔子に、卵を産み付けないでほしいものだ。

     
          手榴弾おもはす糞の落としぬし芋虫きみは何壊したき






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# by minaminouozafk | 2018-06-17 07:00 | Comments(6)

 わが家は川が近い。下っていけば、博多の歓楽街の中洲を抜け博多湾にそそぐ二級河川の那珂川である。この川付近はまだまだ自然に恵まれていて、春には見事な桜並木、そして河川敷には季節ごとに野の花が咲く。鳥が運んできたのか、イチョウや胡桃の木など雑多な種類の木が1、2本ずつ育っている。

 鳥の餌となる小虫や木の実、草の実も豊富なのであろう、鳩や椋鳥など鳥の姿をよく見かける。この季節は子育ての時で、少し前にはこのブログに書いた電柱の上に巣作りをしていた鴉が巣立って行った。そして今は燕の季節。スーパーまでの短いあいだにも「ツバメの糞注意」の張り紙をしているところがあり、巣を見上げると満室、空室いろいろである。

 そんな巣の中でも、毎年燕が帰ってくるところがあり今年も5羽の雛が孵っていた。写真におさめたのが6月10日で、既に餌を運んでくる親鳥に負けないくらい大きくなっていて巣の中で、もうこの体勢以外はとれませんというような様子でぴっちりと収まっている。燕の顔をまじまじと見るのは初めてだったが、子燕くんたちはくりっとした黒い目が印象的だ。

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 その二日後、12日に見に行くとなんと5羽が3羽になっていた。巣の中も少しばかりゆっくりできるようで、ゴソゴソと動いて方向を変えたりしているが顔はしっかりと外に向いて、餌を運んでくる親を見逃すまいとしているようにみえた。

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 こうやって、一羽一羽と飛び立っていくのかと少し淋しい思いもしていたのだが、その翌日の13日は、あらあら4羽に逆戻りしていた。それはそうだろう、ある日を境に突然独り立ちするのは難しいに違いない。ちょっと練習をしていたのかもしれない。周りに目をやると、車にぶつかるのではないかとハラハラするような低空飛行をしている燕や、2羽で繰り返し繰り返し急な方向転換、まさに「燕返し」の語源にふさわしい飛び方で飛んでいる燕がいた。

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 一回で巣立っていける燕もいれば、少しずつ覚えて慣れていってから巣立つ燕もいるのかもしれない。私が様子を眺めている間にも親鳥が何度も餌を運んで来ると、その度に子燕の口が一斉に大きく開く。
疲れたらゆっくりできる巣に戻り、またパワーが貯まったら外の世界でチャレンジをしながら独り立ちをする。餌を運ぶ親燕の仕事も、もうそろそろ終わることだろう。

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     放たれた矢のごと飛べる日のことを夢みてねむれふくふく燕


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# by minaminouozafk | 2018-06-16 08:56 | Comments(6)

実り  大野英子

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実家の裏庭に今年も茱萸が実っていた。
鳥達に見つからないように、生い茂る葉の下ながらも梅雨の晴れ間のひかりに透き通るような輝き。

そしてもうひとつ、昨年は不作だった梅の実が鈴なり。あと一週間置くと熟れすぎて落下しそうなので急ぎ収穫した。
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昨年の倍は採れただろうか。

今は、風が通る廊下の闇で追熟中。

今週末の母の命日には兄も帰って来る。

今年初めて兄にもぽたぽた梅をおすそ分けしたところ、とても喜んでくれて来年も送る約束をしている。
実家の梅が微かに兄妹を繋いでくれたようだ。
両親はこの庭に多くのものを遺してくれていたのだと、四季折々に感謝する。

今年も思いを込めて、さあ梅仕事!

      梅の実のゆたかなる香に満ちてくる追熟を待つわたしの時間


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# by minaminouozafk | 2018-06-15 06:39 | Comments(6)

忙しい忙しいと日々を送っていたら、ぽかんと半日時間ができた。SLに乗ろうと思い立ったのは、多分、批評会の後に新山口で遠く続く線路を見たから。

遠い昔、お盆で父の実家に行った時にSL乗った。トンネルに入った途端、黒い煙が目の前に流れ込んで父が慌てて窓を閉めた。その時のしぐさと声が今も記憶に残っている。SLは父を思い出す。

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発車前のホーム。記念撮影する大勢の乗客でにぎわっていた。

やまぐち号は子どもが小さな頃に一度乗って以来なので、実に20年ぶり。
今日はD51が客車を牽引する。


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飛び込みだったけれど残席が4席あって、4号車の窓際の席が空いていた。


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団体さんや家族連れで賑わう車内はお祭りのよう。大阪から来られたという3世代で乗られた方と相席になった。ご主人と息子夫婦と子どもたち。微笑みが絶えない。幼い記憶の片隅に今日の旅がきっと残ることだろう。

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新山口を10時50分に発車して12時59分に津和野に到着する約2時間の旅。



発車してしばらく、汽車は街中を通り抜ける。仁保駅あたりから次第に車窓に田園が広がり始める。ちょうど田植えのシーズンで、水を張った田や早苗の揺れる田が見えてくる。長く続く汽笛とかすかに匂う石炭の煙。沿道にはSLを撮影する人々の姿。撮影ポイントでは50人以上がずらりと並んシャッターを切るその姿に車内ではいくたびもどよめきが起こった。



見る人見る人が手を振る。住宅の庭で、道で、田んぼで…。傍を通る車の中からも手を振っている。一家で並んで手を振る家族もあった。撮影を終えた人も、つと手を上げて見送ってくれる。

ぱっと顔を輝かせて、おーいおーいと呼ぶように、会えて嬉しいと告げるように笑顔で手を振り見送ってくれる。

津和野に着くまで、人のいる所ではずっと満面の笑みに見送られた。もちろん私にではなくSLに、乗っている乗客に向けたものなのだけれど、向けられたたくさんの笑顔は心の深いところに届いて、忙しさに消耗していたからだに力を与えてくれるようだった。



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笑顔のチカラ。

疲れたら、またSLに乗ろう。


虹を見るやうな笑顔に音長く汽笛を鳴らしD51は過ぐ



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# by minaminouozafk | 2018-06-14 07:00 | Comments(7)

榊の花  有川知津子

目が覚めたら榊の花が咲いていた。


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蕾をつけていたのは知っていたけれど、咲くとは思わなかった。


〈榊〉という字は国字である。

「国字」という言葉を教えてくれたのは祖母だった。


ちょっと辞書を引く。

日本国語大辞典の「国字」の項は、たちまちこれだけの国字の例を教えてくれた。


 俤(おもかげ)

 凩(こがらし)

 峠(とうげ)

 榊(さかき)

 笹(ささ)

 躾(しつけ)

 辻(つじ)

 閊(つかゆる)

 鱈(たら)

 鴫(しぎ)

 麿(まろ)


夜、帰宅する頃には落ちているのであろうなあ。

今、気づけてよかった。


  こつくりと榊の花は咲きゐたりものの音せぬ梅雨のあかとき



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# by minaminouozafk | 2018-06-13 06:58 | Comments(7)

昨年6月11日、朝倉の「共星の里 黒川INN美術館」にお邪魔した。

山里の廃校舎を利用した美術館はノスタルジックな佇まいながら、一方で先鋭的な芸術作品もたくさん展示されていた。ハリウッドの特殊メイクアップアーティストAKIHITOさんのことを知ったのも、この美術館。


壁に貼られていたポスターに見惚れていたのだが、まさか、その4カ月後にお会いすることがかなうとは。私にとってかの日は、いくつものシンクロニシティが起きた奇跡の1日だった。

宴の終わりに見た、真闇に光る蛍の幽玄は今も心に刻まれている。また来年……。そう約束して帰ったのだったが……。

そのわずか3週間後、北部九州豪雨災害。濁流に押し流される土砂や流木がこの桃源郷を襲った。壊滅的な被害が報告される中、「共星の里 黒川INN美術館」を守ったのは、アートディレクター柳和暢氏の巨大オブジェだった。


予兆。「共星の里」は、朝倉はきっと大丈夫。無責任かもしれないが、柳氏の奇跡のオブジェの存在はかの地の復興を約束するものに違いないと確信したのだった。

そして、一昨日。美術館館長で、アパレルブランドKienのデザイナー尾藤悦子さんのフェイスブックに信じられないような報告がアップされていた。


全滅的だと諦めていた今年の蛍。黒川の闇夜に希望の瞬きを見つけ、涙が溢れる。(尾藤悦子さん)


かすかな蛍の光。でもそれは今も復興に向けて力を尽くす人々にとって、前途を明るく照らす奇跡の光に違いない。



黒川の闇を明滅する蛍みづは甘きか人やさしきか

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去年の宴会風景。
また、いつか。

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# by minaminouozafk | 2018-06-12 00:15 | Comments(7)