チトさんの百日紅

島の家の庭に、一本の百日紅がある。



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チトさんの木である。

チトさんは、祖母茅意子の母で私の曾祖母である。

チトさんのことは、以前、ここでも書いたことがあるかもしれない。



チトさんが亡くなってしばらくすると、庭に知らない木が増えていた。

祖母が、チトさんのうちの庭にあった百日紅を、ここに移したという。

移し植えられたのは、おそらくもっと涼しい季節だったにちがいないのに、

私がその木に気づいたのは、夏になり、花が目につくようになった頃のことであった。



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当時は、その花弁のひらひらの巧みさに感じ入るばかりで、

百日紅を運ばせた祖母の気持ちを思うことなど全くなかったように覚えている。

祖母の人生を思うには、まだあまりにも幼くて知りたいことが多すぎたのだ。

かれこれもう35年ほど前のことになる。



また台風が来ている。

百日紅の残りの花も、散ってしまうだろう。



今日は、お盆の三日目。

夕刻までの時間をしずかに過ごそう。



  どのやうな掟があるといふのでせう夢に来てひとはほほゑむばかり



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# by minaminouozafk | 2018-08-15 08:14 | Comments(0)

言霊使い   藤野早苗

8月7日火曜日、竈門神社「七夕良縁祈願祭」に行った(私の良縁を願ったわけではありません)。玉依姫を御祭神とする竈門神社、魂と魂を引き合わせるとの神徳から古くより縁結びの神として信仰されてきた。新暦ではひと月遅れの七夕になるが、良縁を願う善男善女が集まり、境内は賑わっていた。

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この日19時30分から開催される七夕コンサート。夫が少々関係しているので運転手として同行。

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出演者は、サラ・オレイン(Sarah Alainn)。母は日本人声楽家で、父はオーストラリア人。端麗な容姿と抜群の歌唱力。5カ国語を使いこなし、シドニー大学から東京大学へ留学経験もある才媛だという。そんなサラを一目見ようと、境内はもう飽和状態。日が落ちて、昼間の熱気が少し落ち着いた頃、舞台となる参集殿にサラ・オレインが登場した。

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バイオリンを携え、七夕に因んだ「星に願いを」を演奏。ここでいきなりミキシング事故があったのだが、サラは全く動じず、見事に弾き、歌った。その後、映画「君の名は。」から「なんでもないや」、大河ドラマ「西郷どん」のエンディングテーマ曲、中島みゆきの「糸」を何カ国語かを交えて歌い上げた。


音楽には暗い私が聞いてもサラの歌は素晴らしかった。技術的にももちろん図抜けているのだろうが、もっと本質的な何かがその場にいる聴衆を引きつけた。サラは饒舌ではない。日本語が堪能とは言ってもやはりネイティブではなく、喋りで盛り上げるというスタイルではない。衣装も可憐ではあっても華美ではなく、押し出しで打って出るタイプでは毛頭ない。でもなぜだろう、サラの声は、眼差しは境内を埋め尽くす聴衆一人一人の元に真っ直ぐに届く。旋律に乗った言葉は聴く者の胸の隈ぐまに沁みて言いしれない余韻を残す。霊山宝満の下宮竈門神社に響くサラの歌声は神気を帯びて、聴衆を魅了した。


最後の曲、(これはサラも全く予定に入れておらず、その場の雰囲気で急遽演奏を決めた一曲だったらしいのだが)「Time To Say Goodbye」はその日の掉尾を飾るパフォーマンスだった。原曲のイタリア語で「Con Te Partiro」と歌うサラの声は深く豊かで、再生を信じるに足る説得力に満ちていた。



1/f (エフ分のいち)のゆらぎを含む声宝満下宮の神域に響る



9月29日、サラ・オレインのコンサートがアクロスシンフォニーホールで開催されるとのこと。楽しみです。


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# by minaminouozafk | 2018-08-14 01:51 | Comments(4)


乳白色の霧にすっぽりとつつまれた高原。


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しっとりした草を踏み分けていく。視界は2~3メートルくらいだろうか。

目の前に薄紫色があらわれる。もしかしたら・・・しゃがんでよく見ると、やっぱりマツムシソウ。「こんにちは、おひさしぶり」広島県と島根県の堺の中国山地の高原。宿舎がただ一つだけの山奥。幾度もおとずれている大好きな場所。

魔法のように白い霧のなかからあらわれるやさしい黄色、紫色、ワレモコウの濃紅色。


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黄色はキンミズヒキ。薄紫色は松虫草だけではなくツリガネニンジンや擬宝珠も群生している。


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擬宝珠のむこうは池で睡蓮が可憐なピンクの花を咲かせている。


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なんだかグリム童話のなかのようで幻想的な時空間。

はじめてこの高原をおとずれた25年前も霧のなかだった。そのなかを散歩していて、いきなり牛と出会った。そう牧場だったのだ。不法侵入は人間の私だったんだよね。

もともと奥出雲は、たたら製鉄がさかん。そのための木炭を作るためにたくさんの木が伐採された。その跡地では長いあいだ牛の放牧がされていた。つい最近まで。牛のおかげでもとの森林にはもどらず天然のシバの草原。ところどころにレンゲツツジやイヌツゲの低木、そしてハルニレの大木が数本かあるとても美しい高原。


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翌朝はすっきりと晴れ。山頂までくっきりみえる。


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山道にはカワラナデシコ、オミナエシ、ハギと秋の花たちが揺れている。ブナの林のなかにはウバユリやミズヒキソウ、ヤマアジサイもまだ残っている。朝まだき山頂。視界は360度。中国山地の山なみが雲海のなか美しい。



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しとしとしと松虫草のむらさきが霧の野原を照らしてゐるよ






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# by minaminouozafk | 2018-08-13 07:08 | Comments(5)

夏の雪 大西晶子

最近庭に 薄紅の雪のようなものが降る。庭でいちばん背が高いさるすべりの木から花が散っているのだ。

実を言うと、もう植えて33年も経つのに、近くで花をじっくり見たことが無かった。なにしろ高いところに咲くので花を切って活けることができないし、キーウィの棚の間から頭を出しているので、見上げるのも難しいのだ。




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しかし、昨年買った高枝ばさみがある。切った枝を落とさずに手元に持って来られるというので、使って切ってみた。

いつも木に咲いたものを遠くから見るか、散った花びらを手に受けて見たりしていたので、1輪がどう咲いているのかを見るのは初めてだ。


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まるで宇宙ステーション。花びらの根もとは殆ど糸のよう。

萼と花弁は6まい、萼に包まれた蕊は丸まっているが、咲ききると黄色の蕊が花弁の真中でふさふさになる。


百日紅の名は紅い花が7月から9月にかけて3カ月近く咲き続けることによる漢名に由来するという。また樹皮が剝けた後の樹肌がつるつるしているところから猿も滑るとサルスベリの名がついたが、実際には猿は滑らずに登ることができるらしい。



サルスベリの花言葉は雄弁、愛嬌、不用意。
 雄弁は高木でよく目立ち、次々に花が咲き続けるから、愛嬌・不用意は樹皮猿が滑るために猿も木から落ちるということから。

サルスベリは風が吹くと花弁の細い付け根が一斉にゆれて木全体がふるふると揺れているように見える。


また水揚げは良くないようで、高枝ばさみで切った枝は花瓶ですぐに花が散り、残りの花も数日で枯れてしまった。

やはり木の花は高いところで咲くのを遠くから眺めているのが良いのかもしれない。


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ご近所の白いサルスベリの花が散ると本当に真夏の雪のようだ。


はちぐわつを雪のごと散るさるすべり戦の記憶早やとほくなり




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# by minaminouozafk | 2018-08-12 09:49 | Comments(6)

ブログ記念日23

毎月11日のブログ記念日ですが、8月は特別です。「南の魚座」二周年を迎えました。

初めてのことで、一生懸命だった一年目、二年目は少しばかり肩の力も抜けたでしょうか。この一年の間に一周年記念号を発刊いたしました。

毎日の小さな一歩の積み重ねのちょっと大きな一歩でした。


三年目に踏み出しました。読者のみなさま、これからもよろしくお願いいたします。


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出番を待つ新幹線車両



夏ど真ん中   栗山由利

夏の陽が直滑降でめざす先ブラックベリーはむくむく太る

辻道を舁き山が走りわざわひをはらひて街は夏ど真ん中

さくさくと育つオクラにありがたう規格は人のわがままだから

テキストをひらけば街は近くなり上海、成都 朋友

出番まつ車両は大きく深呼吸してをり白き炎熱の中



蝕の月   大西晶子

金柑の花の濃き香にたへられず窓をとざせり熱帯夜にて

宗像の市の花と植ゑしカノコユリ南の島より来しものと知る

蝕の月赤きあしたをひそやかに繊維そだてるへちまの若実

茅の輪をくぐる人らのさきがけは白衣まぶしき神職と巫女

まかれたる切紙ひろひ玉砂利をきよめる人あり祭の果てて



公孫樹の葉っぱ   百留ななみ
銀杏の白実をゆらす台風は迷ひ迷ひて西へとすすむ
切れ込みがなくなり()しき扇形 公孫樹の齢は葉っぱでわかる
ぎらぎらの太陽光がだいすきな狗尾草のC4回路
てふてふの少なき春はくまぜみのちからなく啼く炎暑となりぬ
バナナ売るもも売る馬関の露天商 汽笛の音の愉しかりけり



をかしの御髪   藤野早苗

むらさきの花に似る名のハルシオン熟寝の床に播くひとつぶは

内向きはさまざまあれど外向きは二人三脚 夫婦はチーム

「推敲のポイント」耽読する真昼逆走台風みんなみに荒る

八月の鋼のごとき陽をかへす強霜置けるをかしの御髪

あたらしく齢重ねるいちにちの夜のきりぎしに白髪なびく



迎へ灯籠   有川知津子
梅雨明けたり向日葵の葉の破れより大蟻ひとつこちらへ出でて
炎帝のくらき吐息が渦を巻くゴッホ描ける渦のごとくに
「とほく」といふ言葉にかかるグラデイションどのくらゐなら遠くへ行ける
母の吊る迎へ灯籠しるべにて祖霊語らひながら帰らん *8月7日
長崎の方を望みてしづかにすナガサキとなりしその刻限を



舞台俳優   鈴木千登世

かなしみの梅雨明けに咲く花槐樹影を小さき風に揺らして

境界を越えて害なす猿の背の光沢(つや)なく乾くそのけむくじやら

涼やかな眼に深く生を問ふ舞台俳優のこゑを忘れじ

選びたる人の面輪を思ひつつ書棚の本の背文字をたどる

暑かつた日といふいつもの夏の日と聞く今年の今日も夏空



単純は良し   大野英子

ただ一羽河口のうみうが繰りかへすもぐる顔出す単純は良し

潮風に吹かれさわさわ揺れだしぬ青葉がしげるわたしのからだ

あおぞらと博多の街を見て育つ固い実青い実あなたはだあれ

ひよつこりと顏出すも驚いてゐるらん熱暑、落雷、豪雨

声のやつとしづまる夕暮れの潮風のなかの夕餉は気まま



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# by minaminouozafk | 2018-08-11 09:51 | ブログ記念日 | Comments(5)

今年は10月20日(土)レソラ夢天神ホールで開催されます。
先日、福岡市内の担当者6名で、会場打ち合わせ。

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昨年の久留米座に比べるとこぢんまりとしているが、立地は最高。天神岩田屋隣のビル、ルイ・ヴィトン横の入り口奥のエレベーターで五階へお越しください。

記念講演には阿木津英氏、選者には桜川冴子氏も参加してくださいます。

備品、設備、大会に向けての準備等、入念に話し合ってまいりました。
これからがいよいよ本番。

実は、昨年の小島なおさんの紹介をあまりに楽しそうに語ったせいか、今年は司会進行を押し付けら……ではなく、仰せつかりました。

何とかミスなく、と言うよりミスっても笑ってごまかして行こうと思っています。
魚座の皆さま、ご協力をよろしくお願いいたします。
そして、一人でも多くの方のご参加をお待ち申し上げます。

立秋を過ぎ、こころもち過ごしやすくなったようで、日傘を頼りに行き帰りは歩いた。風が心地良い。

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数日前までは暑苦しい積雲だった空も、少し涼しげな巻雲に変わっていた。しかし、さすがに公園の日なたには人っ子ひとり居ないなぁ。

       へんぽんと白いスカートひるがへす風に乗りたい休日の昼


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# by minaminouozafk | 2018-08-10 07:13 | Comments(6)

この記事を書いているのは8月6日。アップするのは9日。

原爆が投下されたふたつの日。

惨禍を知り恐れや憤りを覚えながらも、生まれる前の、歴史的な事実として感じていた。けれど職場で黙祷していて、わずか16年前なのだと気づいてはっとした。

昭和36年生まれなので、生まれる16年前。

若い頃には長く思われた16年という歳月は、子どもを育て終え50代後半となった今ではほんの短い~これまでの人生の3分の1にも満たない~時間だったとわかる。

多くの人が亡くなり、多くの人生を変え、癒やしがたい多くの悲しみをもたらしたその日はほんの少し前の身近な日のことだった。



今年73年目の原爆の日を迎えた。

去年はちづさんのブロクで半身となった山王神社の二の鳥居を教えてもらった。


忘れないこと。語り継ぐ声に耳を傾けること。

戦争のことを原爆のことを書き留めて祈る日としたいと思う。


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暑かつた日といふいつもの夏の日と聞く今年の今日も夏空




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# by minaminouozafk | 2018-08-09 09:00 | Comments(5)