2018年 12月 31日 ( 1 )


驢馬、黒い驢馬への憧憬、親しみの思いはずっと心の底にあった。先月、香月泰男美術館をひさしぶりに訪れた。企画展ははじめて香月泰男が訪れたスペイン、モロッコの風景画だった。シベリアシリーズとは異なる陽射しのあふれる明るい水彩画や版画。そのなかで足を止めたのは一頭の黒い驢馬の絵だった。「ロバのいるカサブランカ」というタイトル。浅葱色の空、ナツメヤシのような木と線描の建物だけのシンプルな構図。館内を巡ったあともしばらく前に惚れ惚れ佇っていた。別れを惜しみつつ絵葉書を買って帰る。


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馬と驢と騾の別を知りて驢来り騾来り馬来り騾と驢と来る

うさぎ馬煤を車し来るなり煤より黒くして眼あるもの

 土屋文明「韮靑集」

自分が歌を作るとは思っていなかったころ出会った作品。言葉もリズムも愉しく、遠く大陸への思いをあたためていた。驢馬、馬、騾馬のちがい。騾馬は馬と驢馬を掛け合わしたもの。見たことはないがややこしい。土屋文明が昭和19年に中国大陸を旅したときの内陸部にひろがる荒涼とした光景だろう。そこでは馬も驢馬も騾馬もたいせつな荷物の担い手だったのだろう。騾馬は別名うさぎ馬。石炭を運ぶ黒い驢馬。その瞳の底を思う。


王様の耳はロバの耳。可愛い挿絵とハッピーエンドで幼い頃にインプットされた驢馬の印象はほのぼのと優しい。でも実際に驢馬をみたのはと思うと・・・息子たちと動物園に行ったとき。馬よりもずっと小さくて、耳と瞳の大きい灰色の驢馬。兎馬としばらく向かい合っていた。



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黒い驢馬への思いが棄てきれずに家に帰ってからも未練がましくネット検索をしていた。すると・・・さすがインターネット。画面上にあらわれたカサブランカのロバくん。そうだよね。パソコンの画面では見られるよね。ちょっと嬉しくなって、しつこく検索を続けると・・・ネット上で売られていたが売約済の表示。リトグラフなのでかなりの数はあるのだ。エディションナンバーは75


 もしかしたら・・・と検索を続けるとなんと販売中のカサブランカのロバくんを遂に発見。不思議な邂逅に感謝。待っててくれたんだね。私にもなんとかなるお値段。相手が見えないネットではじめて購入する絵画。早くしないと売り切れてしまう・・・もどかしさのなか私のためのロバくん・・・と早速手続き。そして待つことたったの5日、宅急便で届いた。




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最初はカウンターに飾ってながめていたが、新年を前に玄関の壁にかけた。午年も卯年もあるけど驢馬年はない。気楽で自在で愛おしい。



戌年が終わり明日から亥年。ブログを読んでいただき本当にありがとうございました。老木の桜の下の万両のあかり。来年も引き続き穏やかなひかりの一年でありますように。よろしくお願いいたします。




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みづいろの空くろき驢馬モロッコを描きし香月のひかりの砂子












by minaminouozafk | 2018-12-31 06:00 | Comments(7)