2018年 10月 31日 ( 1 )

藤の莢実  有川知津子


先日の晶子さんのオガタマノキの実(「実のなかの実」10月28日)を見ていたら、あ、と思い出したものがある。



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これは、母校・長崎県立上五島高等学校の中庭にある藤のその莢実。夏に帰省し、牧水の歌碑を見に行ったときに撮っておいたものである。今頃、この莢実は、どうしているだろうか。爆ぜるまでにはまだしばらく時がいるだろう。



藤の莢実は爆ぜるときに音がする。静かにしていると、ちょっと驚くような音だ。どのくらい驚くか、というと、かの寺田寅彦が「藤の実」という文章を書くほどのすごさである。寺田は「漱石山脈」に名を連ねる一人、名うてのエッセイスト。やや長いが、第一段落を引いてみよう。



   昭和七年十二月十三日の夕方帰宅して、居間の机の前へすわると同時に、ぴしりという音がして何か座右の障子にぶつかったものがある。子供がいたずらに小石でも投げたかと思ったが、そうではなくて、それは庭の藤棚の藤豆がはねてその実の一つが飛んで来たのであった。宅のものの話によると、きょうの午後一時過ぎから四時過ぎごろまでの間に頻繁にはじけ、それが庭の藤も台所の前のも両方申し合わせたように盛んにはじけたということであった。台所のほうのは、一間ぐらいを隔てた障子のガラスに衝突する音がなかなかはげしくて、今にもガラスが割れるかと思ったそうである。自分の帰宅早々経験したものは、その日の爆発の最後のものであったらしい。



12月が爆ぜどきのようである。

関係者の証言により、当たったらけっこう痛いらしいことも分かった。12月の藤の木には気をつけることにしよう。



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これは、同校の校庭。しばらく踊ってから帰った。誰も見ていなかったと思う。ああ、あの夏の日が、もうすっかり遠く思われる――。



 野茨の秋のいばらをくぐり来て革命のごとく夕顔ひらく



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by minaminouozafk | 2018-10-31 06:39 | Comments(7)