2018年 07月 09日 ( 1 )

落葉松  百留ななみ


落葉松は〈からまつ〉。


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落葉針葉樹。日本固有種で東北、関東、中部地方の亜高山帯、高山帯に分布。

落葉する前の黄金色に黄葉した林は美しい。


小学生のころに買ってもらった岩波書店の児童書 『からたちの花がさいたよ―北原白秋童謡選』 で白秋の「落葉松」の一篇と出会ったと思っていて、古い本を探し当てたのだが・・・そのなかの〈からまつ〉は

  からまつ原    北原白秋

  からまつ原の ちらちらうす日。  

  かばんをかけた 子どもが通る。

  泣きたいような さみしい春だ。 

  どこかで、鳥が ちっちと鳴いた。


記憶はあてにならない。たしかに「落葉松」は子供向けではない。

早春のしずかな落葉松原。のんびりとした通学路は懐かしい光景。


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6月終わりの上高地はブナそしてカラマツの新緑がみずみずしい。思いっきりその空気を吸い込む。

まっすぐに伸びる明るい幹のやさしい新緑の葉っぱ。

ブナ林よりも少し暗いカラマツ林。

白秋の「落葉松」の詩は軽井沢で作られたものだ。

30年ぶりの上高地訪問を初夏の日差しとともにきらきらと歓待してくれた落葉松林。

梓川の水音に心濯がれて、学生のころ泊まった嘉門次小屋もそのまま。




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明神池を過ぎるあたりまで散策。小梨の白い花もきれい。

なによりも梓川の小道を愉しませてくれたのは初夏の花々。

サギスゲの綿毛が一面にゆれる田代湿原を過ぎると

黄色のニッコウキスゲの群落が。


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イワカガミはひっそりと可愛い。



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ブナ、カラマツの林の木漏れ日の径。

ふわふわとした白い花が道沿いにつづく。

なんとなく線香花火のような花。

つぼみは薄むらさき。繊細な花の名前はカラマツ草。

落葉松の若葉に似ているからという。


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黄花のミヤマキンバイではなかった。ダイコンソウも大正池からずっとつづく。



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風に搖れるグンナイフウロも可憐な薄いろ。


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せせらぎに心を灌がれるのは、やわらかな陽の下だから。

旅の終わりから信州はずっと雨。

台風7号につづき、集中豪雨。

たぶん恐ろしくて川沿いは歩けない。

せせらぎは濁流に、花も鳥も虫たちもじっと待っているだろう。

止まない雨はないと。




落葉松  北原白秋

からまつの林を過ぎて  からまつをしみじみと見き

からまつはさびしかりけり  たびゆくはさびしかりけり

*******

世の中よ あはれなりけり  常なれどうれしかりけり

山川にやまがはの音  からまつにからまつのかぜ



 
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新緑の落葉松の林は小鳥たちも賑やかで行き交う人も時々いて寂しくはなかったが、白秋の詩が巡っていた。一連目はもちろん最後の八連目が好きだ。〈世の中よ あはれなりけり  常なれどうれしかりけり 山川にやまがはの音  からまつにからまつのかぜ 〉 


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そういえばと思って帰って高野さんの『北原白秋の百首』を広げると

この山はたださうさうと音すなり松には松の風椎には椎の風

『雀の卵』

の批評文の最後は〈後年の「落葉松」という詩の中に、この歌の下句と似たフレーズがある。〉


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湧き出る豊かな水のおかげで山々も花も木もうつくしく、鳥も虫もきらきらしていたほんの少しまえの瑞穂の国。吹く風もその木によって異なる細やかさ。水の音、透き通る水面をゆうゆうと進む鴨の家族。自由、強さ、やさしさ・・・さまざまなメッセージが心にとどく。



翌日から運転見合わせとなった高山本線。その車窓からの濁流の飛騨川はまさに怒っている龍のようだった。

その直後の台風、集中豪雨。

宇宙から俯瞰してみると秋津島の上にすっぽりと龍が覆いかぶさっているようだ。細長い降雨帯は龍神の警告かもしれない。それにしてはあまりにも酷すぎる。


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からまつの生ひたる池の仔鴨らはならびてつーい落葉松の洞









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by minaminouozafk | 2018-07-09 07:57 | Comments(7)