5月26日土曜日、「灯船」9号批評会@アクロス福岡501会議室。

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遠くは青森、岩手からも来福たまわり、24名参加。当日欠席は一人もなく、13:00~18:00の長丁場、厳しくも楽しい時間を過ごしたのでした。

当日参加のメンバーの紹介をしつつ、作品を一首、掲載させていただきます(「灯船」9号掲載順)。

〈24首〉

1.小山富紀子……「コスモス」「灯船」の誇る京女。古の都の抒情を詠むにこの人の右に出る者なし。憧れの着物ビト。

・塔の横畑でありき胸を病む彦乃と夢二が写し絵に笑む


2.豊島秀範……長年勤められた大学を今年退官。二生を生きた西行に、自身を類えた作品構成。

・父母と伊勢に来しより四十年命なりけり宇治橋わたる


3.奈良橋幸子……知的かつ抒情的な作品が持ち味。小林多喜二の生をテーマに、時事にもアクセスした一連。

・父といふものにはならず生きの緒のはてまで荒野 小林多喜二


〈12首〉

4.大西晶子……「南の魚座」日曜日担当。お孫さん勇太くんを詠まれた一連。医療に対する信頼感がある。

・五千人にひとりの病気引き当てし勇太だいぢやうぶ手術でなほる


5.大野英子……「南の魚座」金曜日担当。もうすぐ迎える華甲に対する思いをしみじみと。

・一人用ペーパーフィルター、ゴミ袋(小)買ひ帰るつくづくひとり


6.小田部雅子……静岡から飛行機でひとっ飛び。行動力の人。そして猫の歌人。

・春の陽にねむりゐるのかゐないのか猫はひらがながきのしあはせ


7.木畑紀子……「灯船」心臓部。歌作、評論ともに抜群。ボランティアとして社会に関わった時代を回顧した一連。

・老ゆるとは群れを去ること鳥、獣ならばおのづから時を知るべし


8.久保田智栄子……一見何不自由ない暮らしの中の、小さな屈託をテーマに詠んだ一連。事物や言葉の具体が面白い。

・頼まれて賀状ポストに出しにゆく「とりま」「なるはや」校舎が白い


9.栗山貴臣……「南の魚座」IT管理部長。歌歴1年未満。はや熟練の感ある作品もあるが、今は不器用でもいいから、もっと自分を表現する作品を詠んだほうがいい。

・猫になら優しくなれるわれが居て自分のことをおとうさんと呼ぶ


10.栗山由利……「南の魚座」土曜日担当。「コスモス」その1まで一気に駆け上がった福岡のライジングスター。対象の把握が的確で個性的。

・壁に濃く映るひさしの影のうへ羽づくろひする雀がならぶ


11.桑原正紀……二週続けてのご来福。ありがとうございます。妻君を詠まれた作品が沁みました。

・桜咲きチャイムが鳴りて子らのこゑ響かへば妻はいまも先生


12.鈴木竹志……「灯船」心臓部。評論家。今回は過去の回想の一連。学生運動に取材した作品に、作者の意外な一面が垣間見えた。

・祝祭を愉しみゐしか半世紀前のわれらは〈闘争〉の日々に


13.鈴木千登世……「南の魚座」木曜日担当。50代半ばの日々を抒情豊かに詠う。

・放電をしやすき冬の指もて櫃の闇より雛(ひひな)をすくふ


14.田中愛子……平明な言葉で切り取られた日常には豊かな詩情が溢れている。

・木守りとえらばれた柿のかなしみをとほく車窓に思ふ日の暮れ


15.辻本浩……「南の魚座」顧問。さまざまな「影」を詠んだテーマ詠の一連。面白いが、やや歌謡曲的に流れるので注意。ほぼ用言で一首が終わるのも単調になる。

・かりかりの鶏皮の串手に持ちて縦に食う人横に食う人


16.坪井眞理……女性の働き方について考えさせられた作品。これもまた社会詠。

・いちめんにそよぐむらさき赤紫蘇の畑のなかにジャム工場あり


17.中村仁彦……「南の魚座」広報担当。自身の闘病の日々と向き合い、透徹した眼差し内面を作品化した。

・十二時間のちに目を覚ます予定とふその時声帯(こゑ)はわれにもう無い


18.早川照子……バブル期の回想。夫君との奮闘の日々が、魅力的な具体を生かして詠まれている。

・反物を竿にからめた藍を視る匂ひするどし藍甕は春


19.百留ななみ……「南の魚座」月曜日担当。「岩海」という奇観を詠むことに挑戦した一連。デフォルメして、くっきり伝えることが大切。

・已己巳己(いこみき)の石英閃緑岩ずつとずつと吉部の万倉に集ひたりけり


20.福士りか……『Saite Neige』作者。青森から。後輩の若い教師を詠んだ作品が温かい。

・ひとたびは退職願を書きしといふ村上雄大教師五年目


21.藤野早苗

・くれたけの節すぽぽんと抜けたらむ鼻炎カプセル服(の)む十分後


22.宮西史子……ノスタルジックな一連。発想が柔軟な頃の自分を懐かしむ作者が見える。

・田起こしの凸間凹間(でくまひくま)を見えかくれつつつつつつつ雲雀あゆみ来


23.宮本君子……季節の流れに沿ったなめらかな一連の構成。人生終盤を迎えるにあたり、自らの半生を振り返る。

・催花雨の小止みなき日よわたしらの骨の始末を考へてをり


24.吉田史子……岩手より。夫君との日々を哀感豊かに詠む。柏崎驍二『読書少年』の評論「立ち止まる人のまなざし」は圧巻。

・ここはまへ花屋だつたね いつせいに記憶の中の色あふれだす



懇親会は近くのIPホテル宴会ホールにて。

いつもながらの盛り上がり。その様子は画像にてお楽しみ下さい。

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みなさま、大変お世話になりました。

「灯船」、今後もますます盛況でありますように。

なお、次回は8月25日、新宿の明宝ビルにて。ゲストは久々湊盈子氏。

楽しそう。

はじめての会ひと思へず誌上にて馴れたるうたの幾首のあれば




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by minaminouozafk | 2018-05-29 08:32 | Comments(6)