2026年 03月 12日
春3月 鈴木千登世
萩の母からわかめともずくが届いた。わかめはこの春の新わかめ。竿干しして乾燥させたものが刻まれてすぐに食べられるようになっていた。毎年このわかめで握ったおむすびを食べると春がやってきたことを実感する。
今年のわかめは少し粗い。以前は少し湿らせたふきんに包み半日置いてから包丁で切っていた。そうすると固いわかめがやわらかくなって刻みやすいのだ。美味しいけど刻むのがねえ。とよくこぼしていた。最近はキッチンバサミに変えたとか言っていたが、わかめを刻まないと母の春も始まらないのだろう。

書店に夏川草介の「エピクロスの処方箋」が積まれていた。今年の本屋大賞ノミネート作で隣にはシリーズ一作目の「スピノザの診療室」が置かれていた。図書館で借りるとしたら数か月待ちになる。やっぱり今読みたい。読むなら最初から読みたい。迷った挙句結局2冊とも買ってしまった。
帯には「その医師は、最期に希望の明りをともす」とキャッチコピーが記されていた。主人公は将来を嘱望されていた内科医の雄町哲郎。亡くなった妹の子どもと暮らすために大学病院から京都の地域病院に移った彼の、死と向き合う日々が描かれている。一章だけを読むつもりだったのにやめられず結局三章まで読んで夕食の準備に取り掛かった。
読んでいるとしきりと父のことが思い出された。今年に入ってまだ実家を訪ねていない。3月は父の誕生月で亡くなったのも3月。会いに来いよと父がこの本を勧めたのかもしれない。
母暮らす海の家にも春は来て水仙、菜の花、光るさざなみ
早咲きのさくらの並ぶ花の店莟の多な一枝を父に

