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『栄養と料理』休刊  栗山由利

 昨日、新聞を読んでいた夫が「『栄養と料理』が休刊するんだってよ」と教えてくれた。かねてから、近い将来には料理雑誌は淘汰されていくだろうとは思ってはいたが、自分が親しんできたものがそうなるとやはり寂しいものがある。

 

『栄養と料理』は〈栄養〉と敢えてつけられているように一般の料理本とは異なり、栄養学の知識と、それを日々の食卓に生かすための料理を紹介している本で、出版元は管理栄養士など栄養にかかわる人材を育てる女子栄養大学の出版部である。創刊は1935年。戦中戦後の食糧不足の時代から流行り廃りに流されることなく、一貫して食と健康をテーマにその重要性を発信してきた。


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<沁みだらけの成分表は昭和56年版>

 この本との出会いは私がまだ小学校の高学年だった頃で、父が職場から月遅れで持って帰ってくれていた。当時、父の仕事の関係で住んでいたのは、生活用品を買える町までは歩いて1時間はかかるという辺鄙なところだったので、日々の暮らしに必要なものや食料品は週に1回来てくれる御用聞きのおじさんが頼りという状況だった。母はそのように材料が限られていたなかでも私たちを飽きさせることはなく、知っている限りの知識で工夫してくれていたのだと思う。


 そういう暮らしをしていた時に手にした『栄養と料理』は、どのページを開いても食べてみたい、作ってみたいものにあふれていて料理への興味を大きく拡げるきっかけになった本である。料理のみならず、全国の美味しいものの情報は私の頭の中に詰め込まれ、小布施は栗ね、仙台に行ったら仙台駄菓子を買って、秋田だったらきりたんぽ鍋食べないと……と、整理しきれないほど満杯になっていった。


 また本を読んでいるうちに次第に身に着いた、女子栄養大学で考案された〈四群点数法〉というバランスよく栄養を摂るためのメソッドは今でも食事を考える時の基本となって役立っている。白米をやめて胚芽精米を食べ続けているのもこの本からの教えである。当たり前の事だが人間の身体は口から入れるものでできているということをしっかりと教えてくれた本だった。


 今やスマホを開けば、YouTubeには有名シェフや料理人から料理好きの一般の人までたくさんの調理動画が観られ、素材をいくつか並べて検索をかければこちらもまたアプリだったり食品会社だったり、個人のブログだったりいろんなレシピが紹介される便利な時代になった。しかしその季節ならではの食材を使った料理や、伝え続けていきたい行事食、また季節が違えば料理に合わせている器とのバランスなど多くのことを料理雑誌は示してくれる。『栄養と料理』はデジタルメディアとしての発信は続くそうだが、つぎの料理を期待しながらページをめくる楽しみは消えてしまった。


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<72回目の雛祭り>


      テーブルを笑顔がかこむまんなかに主役となつて母の手料理


by minaminouozafk | 2026-03-07 16:15 | Comments(0)