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寺山修司とマグリット  大西晶子

先週のNHKの日曜美術館はアーカイブで「私とマグリット 寺山修司」だった。マグリットは高野公彦氏も好きな画家にあげていらっしゃる。謎めいて清潔感のあるその絵は私も好きだ。


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寺山修司


この番組は1977年に収録されたもので当時の寺山修司は412歳。司会者と対話しながら寺山修司がマグリットについて語るという形式だったが、知識が豊富でいかにも好きな画家を語るという感じが良かった。

最初に見たのは「光の帝国」で山高帽のおじさんの後ろ姿を父だと思ったという。育った家に父の遺品らしい山高帽があったからだろうと。寺山の父は戦争で亡くなっているが幼い頃の記憶に残る像とどこか似ていたのだろうか。自分の書いた演劇には最初に山高帽のおじさんが登場しそこから劇が始まるものがいくつもあるのだとも言った。

私は若いころには演劇には興味がなく、天井桟敷をその気になれば見に行ける場所に住んでいて機会もあったのに見に行かなかったことを今は本当に惜しかったと思う。


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光の帝国


また寺山は好きだという絵「秘密の遊び」の空飛ぶ亀やポロをする人物などの手前にタッセルで留められた赤いカーテンが描かれているので劇中の場面のように感じられると発言した。演劇、映画で当時活躍中の人らしい見方だ。

同じシュールレアリストでもダリが絵で大きな声でおしゃべりするタイプならマグリットは低い声で静かに話すと言えるだろうと言う。 同じ形の帽子や衣類を身につけ、同じポメラニアンの愛犬に代々同じ名前をつけて飼っていたなどこだわりはあったが、マグリットは芸術家らしい奇妙な行動で人目を惹くような生活を嫌い、まともで健康的な生活をしているように見えた。しかしどこかに裂け目を作っていたはずだとも語った。


 話はシュールレアリズム芸術の多岐に渡ったが特に興味を引かれたのは絵の題名のことだ。マグリットの絵には描かれたものとはかけ離れたものが多い。女性と薔薇が「象牙の塔」、時計が「風」などがその例だが、寺山修司は「見えているものだけで題をつけたらつまらない。違う言葉で題をつけることで未知の詩的領域になる、描くことは名を付けることではないか」というようなことを言った。なるほど題の付け方で描かれたものに新しい魅力が付け加えられるのかと思わされた。これは一連の歌を詠む時にも考えておくべきだろう、タイトルももっと深く考えなければと覚えておく。

 このように興味深く面白いと思いながら話を聞いていたが、この感じが良く知的で魅力的な人物は素の寺山修司なのか、それとも彼が演じている「感じのいい人」なのかと考えてしまったのは、寺山について噂の断片のようなものを読んでいたからだろう。それと寺山自身がマグリットを「普通の健康的な暮らしをしている人」を演じていたと思っていたように、その言葉から感じたからかもしれない。

(写真は3枚ともNHKの放映画面からのものです)


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ルネ・マグリット



カンバスに出会ふはずなき物と物をならべマグリットらのつくりし世界


by minaminouozafk | 2026-02-08 12:18 | Comments(0)