2026年 01月 08日
海へ 鈴木千登世
無性に潮風が吸いたくなる日がある。
冬空が気持ちよく晴れ上がったので買い出しを兼ねて萩を目指した。夫の体調も今日は良い。途中の道の駅で小休憩して一時間で萩の街。萩往還のこの道は10年近く職場に通った道だ。
萩駅の近くのマーケットでちょっと買い物して、おいしいイカを買おうとさらに海辺を目指した。
街から7キロほど走ると笠山がある。日本で一番低い火山。約一万年前に噴火して今は眠っている。
窓の外に青い日本海を眺めながら笠山まで走った。お目当ての店はお正月が明けたばかりなので閉まっていて残念だったけれど、ここまで来ればたっぷりと潮風に浸れる。
中腹から海岸に出る細い道を下った。

目の前に青い海。
ここ虎ヶ崎には椿の群生林があって毎年2月に椿祭りが開かれる。椿の開花には少し早く平日のお昼前なのに、何台かの車とすれ違った。休憩所も売店もお休み。こんな寂しい日に訪れる人がいるとは。不思議に思いながら海岸の突き当りまで進むと釣り客への案内があった。
ああ、今日は絶好の釣り日和。海には白い釣り船が何艘も出ていた。


波打ち際には穴がいっぱい開いた黒い岩が転がっていた。溶岩が冷えて固まった溶岩石。黒々とした磯が波に洗われている風景は笠山が火山だったことを教えてくれる。
しばらく潮風を吸ったら気持ちがふっと軽くなった。

帰りに寄った〈しーまーと〉に山口では「めーぼ」と呼んでいるウマヅラハギのお刺身が出ていた。小さなイカとさざえも買った。萩のさざえには立派な角がある。波の荒い海域に棲むさざえは波に流されないように支えるために角が発達する。ゴツゴツとした角がなんとも頼もしい。
四時間余りの小さな旅。帰りの車の中では夫が気持ち良さそうに眠っていた。

地下深く眠るマグマの欠片拾ひ波打ち際に風を聞きをり

