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自動巻   鈴木千登世

 目覚まし時計が鳴らないので明かりをつけたら、枕元のテーブルから落ちて電池が転がっていた。夜中に寝返りを打ったときに布団が当たってしまったらしい。電池を入れ直したら液晶画面は復活したけれど全てがリセットされてしまっていた。でも、大丈夫。この目覚ましは電波時計なので強制受信のボタンを押せば自動で現在時刻に調整してくれる。そろそろウォーキングの時間なので着替えに降りた。


準備して戻ると、もう正しい時刻が表示されていた。便利だ。以前の時計なら1から設定し直さなければならなかったのに。



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そういえば、数日前の新聞の連載漫画は自動巻きの時計のお話だった。おばあちゃんから時計をもらった子どもが(授業中に)ブンブン腕を振り回してねじを巻いていた。今の子は知らないよねと思ったが、多分うちの子どもたちも知らないだろうなあ。


「自動巻」久しぶりにこの言葉を目にした。



最初に知った腕時計は父の腕時計で竜頭を巻いて動かす手巻きの時計だった。それが日付入りの自動巻になったのは、私が小学生になる頃だっただろうか。腕を振ると勝手にねじが巻かれていつまでも動くというのが魔法のようだった。


私が最初に時計を着けたのは高校に入学した時だった。教室に掛け時計があるのに各々が腕時計を付けているのが当時の高校生のステータスだった。父から時計をもらったのだが、それは父の永年勤続記念の男物の時計だった。もちろん自動巻。友だちはみんな小ぶりの女性用の時計をしていたので大きくて無骨な男物は多少恥ずかしかったけれど自分の時計ということが何よりうれしかった。慣れると文字盤が大きくて見やすいし制服の袖に隠れてほとんど見える事もない。友だちから聞かれた時は父の記念の時計と言うと「いいね」とみんな珍しがってくれた。何かにつけ父が見てくれているようで心強くもあった。だから就職してからもしばらくはその時計をしていた。


就職して一年たった頃にちょっとおしゃれな腕時計を買った。自分で買った初めての時計は電池式だったので、時々電池交換をしなければならない。父の時計は自動巻だったので止まるのは故障した時だけ。遅れる時間(日差)を調節しなければならなかったけれど止まって困った記憶はない。今思えばなんてエコな時計だったんだろう。



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スマホを持つようになって、遠出しない時は時計を着けなくなった。使わなくなった父の時計はベルトを外して本体だけを鏡台の抽斗の中にしまっている。あんまり長くしまっていたのでしまってたこと自体忘れていた。(お父さんごめん)


久しぶりに時計を見ると、なぜだろう高校時代の休み時間が思い出された。

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ブログを書くので、「自動巻」をネットで調べたら、「自動巻き(オートマチック)」と出てきた。オートマチック。言われ(?)てはじめて気づいた。なんだか不思議な感じ。



着けぬまましまひてをりし時計四つ その時々の時間を封じ


by minaminouozafk | 2025-12-04 11:32 | Comments(0)