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夕焼け小焼け 百留ななみ


二階に上がろうとしたら、踊り場がオレンジ色に輝いている。家中が夕暮れ時なのに不思議な明るさ。夕焼け。


秋は夕暮れ。三夕の歌ともあるように秋の夕暮れを詠った作品はかず限りないが「夕焼け」という言葉は和歌には使われていない。



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夕焼け小焼け…口遊むのは童謡の「赤とんぼ」「夕焼け小焼け」。「赤とんぼ」は三木露風作詞。初出は大正十年。「夕焼け小焼け」は中村雨紅が大正八年に作詞。




石崖に子ども七人腰かけて河豚を釣り居り夕焼け小焼け

           『雲母集』北原白秋

子どもたちが七人も並んで夕焼け空のしたで河豚を釣っている。わいわいがやがや元気な声がひびく懐かしいアニメーションのような光景。やさしい気持ちになれる。



北原白秋の『雲母集』刊行は大正四年。大好きな海鼠や章魚の歌もある「庭前小景」の一連。三浦半島の三崎の海。大正六年に『赤い鳥』を創刊して精力的に童謡を発表し始めたようだ。「夕焼け小焼け」を最初に使ったのは白秋かもしれない。そういえば金子みすゞの詩「大漁」は「朝焼け小焼けだ、大漁だ 大羽鰮の大漁だ……」から始まる。大正の終わりから昭和初期に活躍した詩人。



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スマホを持って外に飛びだしたのだが、住宅街の空は電線がいっぱい。空にカメラを向けると屋根や電柱が写り込む。もう少しと思いつつ坂道を上るのだが、どんどん暗くなってゆく。



なぜ人は夕焼けに心を奪われるのだろう。純粋にうつくしい朱金の色。うっとり幸せになれる刹那。釣瓶落としの秋はすぐに暗闇につつまれる。




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とてつもなく長かった夏の太陽をダイレクトに浴びたのは小さきものたちも同じだ。そういえば法師蟬の声を聞かなくなった。夕暮れの空を鴉が西へと帰ってゆく。なんとなくホッとする。まだ金木犀の花の匂いがしない神無月尽。



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かけのぼる坂道の果て入り日落つ尾花も蜘蛛も夕焼け小焼け








by minaminouozafk | 2025-10-27 09:58 | Comments(0)