2025年 10月 02日
伝わらない言葉で 鈴木千登世
先月大野英子さんが文芸誌「ざんぼあ」の発行のことをこのブログで紹介されました(9月19日)。その記事を読み進めている中で渡辺玄英さんのお名前に目が止まりました。
もう何年前になるでしょうか。高校生の文芸コンクールの詩の部門の審査をされた時の講評にこころを動かされたことを思い出しました。
それは「この文章は、たった一人のあなたに向けて書いています」という言葉から始まっていました。ことばで何かを表現したいと思っている高校生(若い詩人)への手紙として書かれた講評でした。

「言葉は伝わらない」ということをわかってほしいと語り始めた言葉が詩の本質的なところをゆっくり解き明かしてゆきます。
「文学、とりわけ詩は、あなたのような、たったひとりの人の心の内にある「簡単に言葉にならない何か」を、伝わらない言葉を使って、どこかに存在するはずの誰かに感じてもらえるように表現するのです。」とありました。
結びの「これからもあなたを応援しています。」が手紙の宛先でない私の胸にもあたたかい波となって沁みわたってきます。
ブログのおかげで段ボールに仕舞い込んでいた資料を取り出してふたたび読むことができました。「どこかに存在する誰かに感じてもらえるように」~遠くに灯りがぽっと見えるようです。
高らかに百舌鳴く秋の日のひかり透き羽さやけく蜻蛉浮けり

