2025年 09月 19日
文芸誌「ざんぼあ」vol.1 大野英子
桜川冴子さんが編集人の「ざんぼあ」の紹介です。今年四月にvol.1が発行されました。

桜川さんの文章「「ざんぼあ」と北原白秋」から一部抜粋して紹介いたします。
本誌「ざんぼあ」は、福岡在住の八名の詩人と歌人を同人として、スタートしました。
折しも、今年は福岡県出身の文学者、北原白秋の生誕百四十年の記念の年にあたります。近代文学の詩人であり、歌人でもあった白秋の作品に対して、私たちは十年後を見据えながら、詩人の目で、或いは歌人の目で何かを論じることが出来るのではないかと考えました。
白秋の系譜の歌人の端くれとしては、白秋の文芸誌「朱欒」を踏まえた誌名をつけられたこと、毎回白秋論を二名ずつ交代で論じられ
ること、嬉しくも楽しみしかありません。
同人は、桜川さんの他に歌人は有川知津子、小田鮎子、竹中優子、山下翔。詩人は石松佳、松本秀文、渡辺玄英。どの方もこれからの
福岡を背負っていかれる歌人、詩人です。特にわれらが有川ちづりんは、支部報水城でも毎号、「白秋と柊二」「白秋ノート」を連載さ
れていて、白秋を語るには欠かせない歌人です。
第一回の有川さんの白秋論は「白秋とスペイン風邪」
白秋は大正七年、スペイン風邪に罹患しています。スペイン風邪の流行期の白秋作品から、作品におけるその影響を繙いています。白秋は短歌から離れていた時期で、短歌作品には痕跡が残されない中、詩文「観相の秋」のなかの「紅葉を焚いて」という一遍からは、文章の構造から白秋の心情を、直接詠まれていない詩二編からは、スペイン風邪が時代に落とす影を読み取っています。
白秋のジャンルそれぞれの作品を、時代背景を意識しながら読まなければ見落としてしまいそうな考察を重ねる有川さんならではの、この一冊の第一回を飾るのにふさわしい文章でした。
もうお一方は詩人の石松佳氏が、白秋の童謡の抒情主体について初期作品を挙げて書かれています。①とありましたのでこれからの展開が楽しみです。
もちろんそれぞれの作品や、特集の「詩歌の音楽性」、評論、エッセイも読みごたえがありました。
もう一つ注目したのは「ざんぼあ歌壇 つながる」です。投稿会員一人5首の作品から3首を選歌し、掲載するという丁寧なお仕事をされています。第一回は36名の方が投稿されています。発表の場を持たない歌人の方の励みの場にもなることでしょう。
表紙は福岡在住の彫刻家片山博詞氏の作品です。私も、たびたび訪れる南市民センターでの2作品「明日への対話」「希望は新たな意志を生む」のファンです。桜川さんの紹介文によると、県内の多くの場所に展示され、どこかに林檎がある片山氏の作品にはマルティン・ルターの「たとえ明日世界が滅びるとも、今日わたしは林檎の木を植える」という思いが込められているそうです。毎号違う作品が登場すると書かれ、楽しみです。

裏表紙のざぼんのイラストがとってもお茶目。
Vol.2は10月1日刊行です。興味のある方はネットで検索してくださいね。


