2024年 10月 26日
中国の柿事情 栗山由利
秋の果物のひとつである柿も、涼しくなってからは店頭に並ぶようになった。自然豊かな那珂川市に住む友人の話では、今年の柿は例年に比べて色づきが悪いということだったが、売り物の柿は見栄えも良くおいしそうな色をしている。
先日、中国にいる息子から柿の写真が送られてきた。中国暮らしも三年ともなれば、最初のころに比べるとさほど驚くこともなくなったのか、送って来る写真も少なくなっていたのだがこれは珍しいと思ったのだろう。


写真の柿は卵パックのような容器に入って売られており、十分に熟してるよとの表示もあって、丁寧に見た目と熟しの程度も写真でしめされてありとても親切である。そもそも柿の種類も違うがこれで6.8元、140円くらい。息子によると皮も手で簡単に剝けて種もなく、食べやすくてとても甘かったそうである。夫はこの手の柿が大好きなのだが、たまに野菜屋さんの隅っこに「少しばかり傷んでますがよろしかったら……。」とでもいうように、お安い値段で売られているくらいだから、なかなか口にすることは無い。母も同じくで、うらやましいようである。私はカキンという音がするくらい硬いほうがいい。柿ひとつをとっても人それぞれ、わが家では意見が一致することの方が少ない。

調べてみると中国では柿はこのようにやわらかく熟したものが主流だそうで、硬い柿もあるにはあるが、数は少ないらしい。夫が日本語を教えている東京のビジネスマンくんに聞いたところ、それは間違いないらしい。日本で初めて柿を見た時は驚いたらしく、ただ食べてみると彼は中国のやわらかいものより日本の硬い状態で売られているもののほうが好みに合ったと言っていたそうだ。
因みに中国でも干し柿は作られているが、日本が吊るして作るのに対してその多くは平置きで作るので、まるでお餅のように蔕を上にしてペチャンとつぶれたような形状になっている。その形からか干し柿は〈柿饼〉、柿の餅と書く。

たかが柿、されど柿。中国の柿がおいしいという息子と日本の硬い柿がおいしいという中国の若者と、知るということは何物にも代えがたいことであるのは間違いないようである。

絵手紙の柿は色こくよびかける秋の野山にでておいでよと

