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猩々 百留ななみ


「猩々」の謡の稽古をしている。祝言の曲。短い切能だが登場場面では下り端という独特の浮かれ気分の囃子。秋風が吹き月の美しい夜、海中から現れる猩々。いくら飲んでも減らない菊の酒を酌み交わす。


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微笑を浮かべた赤い「猩々」の面はこの曲にのみ使う。装束も頭もすべて赤い。おどけた優しい妖怪。



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軍記物語などで甲冑の赤色を猩々緋と表現されているときがある。あざやかな朱色は猩々の赤からだろう。菊池寛の短編「形」での猩々緋も印象深い。形である猩々緋の羽織を失ったときに中身も失ってしまう。



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かつて霊長目ショウジョウ科があってオラウータンやチンパンジーが属していた。今は霊長目はサル目にそしてオラウータン亜科とヒト亜科に分かれる。ヒト亜科にヒト属チンパンジー属ゴリラ属がある。オラウータンの和名は猩々らしい。



「千と千尋の神隠し」にも猩々はたしかあらわれる。怪しげな大きな猿だがたぶんオラウータンなのだろう。森を崩す人間を恨み、人間を喰うという。


不思議な猩々はその緋色をもって人間たちに警告をしているのだろう。



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しっかり受け止めてはんなりと「猩々」を謡いたい。


〈酌めども尽きず。飲めども変わらぬ秋の夜の盃。影も傾く入り江に枯れ立つ。足もとはよろよろと。酔ひに臥したる枕の夢の。覚むると思へば泉はそのまま。尽きせぬ宿こそめでたけれ〉




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ひらきたる泰山木の白花にねむる猩々 みなづきの夢







by minaminouozafk | 2023-06-05 08:05 | Comments(0)