2023年 02月 28日
第27回若山牧水賞授賞式 藤野早苗
亡羊さん、本当におめでとうございます。


授賞式は、15:00から、宮崎観光ホテル碧翠耀(へきすいよう)の間にて執り行われます。それに間に合うように、福岡空港13:00発。チケットは下戸同盟同志古島信子さんがゲットしてくださいました。地上を行くと遠い宮崎ですが、空路だとあっという間。機体が上昇態勢に入ったかと思うと、もう着陸準備に入ります。飛行時間40分弱。途中、高千穂の山々を見下ろし、高揚した気持ちで伺った会場は久しぶりの祝宴の熱気に湧いていました。懐かしいお顔、初めてお目にかかる方々……、ああ、本当にここは宮崎なんだなあと感慨一入。
そして15時、いよいよ式典開始です。式次第はこちら↓のパンフレットをご覧ください。

開会の言葉に続き、牧水の母校坪谷小学校全校生徒19人による牧水の歌斉唱。舞台に並んだ小学生のはにかみながらも誇らしげな様子が素敵でした。宮崎はこうして郷土の芸術家を大事にしているのですね。
続く若山牧水賞運営委員会委員長河野俊嗣知事、そして来賓祝辞を述べられた宮崎県議会議長中野一則さん、もうユーモアたっぷりのご挨拶で、宮崎の底力を存分に見せつけられました。この段階でもうお腹いっぱい。人間性の明るさは日照時間に比例するのでしょうか。そう思わずにはいられないお人柄のお二方でした。
さて、続いては、受賞者紹介をなさった伊藤一彦さん以外の選考委員佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、栗木京子さんによる講評です。お三方それぞれ『花』について、また歌人奥田亡羊について興味深いお話をされていました。佐佐木幸綱さんは亡羊さんの所属結社の主宰というお立場でしょうか。内輪ということで手放しで講評できないという慮りもおありだったのかと思います。主に、本歌集『花』の二行分かち書きという表記法に触れ、啄木、善麿などの近代短歌の系譜を引き、その試みがいかにチャレンジングなものであったか、また短歌に詩情を吹き込むための試行としていかに意義あることであるかをお話しなさいました。

高野さんはまず、パンフレット3ページの自選15首に触れてお話しされました。


この中で高野さんがいいと思われた作品に印をつけてます。4首ですね。この歌たちに共通するのは、「わかる」ということ。命の実感、手応えのある作品であるということ。逆に言うと、たとえば一首目、「鏡の奥にひと月ぶりの髭を剃る/空には竜の匂いがした」について、「竜の匂い」がわからないし、ここにその言葉が出てくる必然性がわからない、と評されました。こういう傾向の作品も多く含まれる歌集『花』については、色々考えさせられることがあったとのこと。「でも、伝わる作品は抜群にいいし、「わからない」作品をここで切り捨ててしまっていいのかという疑問も残る。今はわからなくても後世の人たちがその意味を、その価値を読み解いてくれるかもしれない、そう思った時にやはり大切にしなければならない歌集だと思った。」というお言葉、とてもとても沁みました。大歌人なのにこんなに謙虚。高野さん、さすがです。「時間の精査が必要」、こうおっしゃっていました。
そして栗木京子さん。栗木さんは奥田作品を評して、「感情がある。現場がある。メカニカルな最先端もある。わからないことも含めて場がある。」とおっしゃいました。自選作品の中にはない歌を引いて、自立支援相談員として活動する現場感があると語られ、カーテンと戯れるお子さんを詠んだ作品を紹介して自分とは異なる存在を見つめる「生っぽい」眼差しが面白いと評されました。わからないこともまた魅力なのかもしれません。

そんな選考委員の方々の講評の後、いよいよ奥田亡羊さんの受賞の辞です。満を持してのご登場。授賞に対するお礼と丁寧なご挨拶、そして、これまでのお話の中でさまざまに語られたご自身の作品のわからなさについて若干の補註を施してくださいました。以下、亡羊さんのお言葉で印象に残った(というか、私に理解できた)ものを記しおきます。
〈わからないと言われる作品について〉
・短歌はモノローグではなくダイアローグであってほしいと思っている。
・わからないことを問いかけて、どこからか答えが返って来ないだろうかといつも考えているし、返ってきてほしいと熱望している。
・無為自然な詠いぶりがいいという言い方をされるけれど、本当にそれでいいのかと考える。その問いに対する答えを待っている。
亡羊さんのお話を伺って、この『花』はまだまだ試作なのだとわかりました。亡羊短歌の目指す高みの頂上は凡人である私にはなかなか見えてこないのですが、先週私が当ブログにてご紹介した作品と自選作品が結構な確率で合致していたことを嬉しく思っています。
ご挨拶の最後に、自分は李禹煥(リーウーファン)の作品のような短歌を目指したいとおっしゃったのですが、その後懇親会②の最後、高野さんが李禹煥のことを亡羊さんと楽しげにお話しなさっていました。

この後、2部は亡羊さんメインのトークイベント。コーディネーターは伊藤さん。ゲストに小島なおさん(なおちゃーん!)、昨年の「歌壇賞」受賞者久永草太さん、「心の花」所属宮崎の実力歌人門田祥子さんを迎えての『花』にまつわるテーマトークが展開されました。もう少し時間があると良かったかな。みなさま、おつかれさまでした。

ここで授賞式は終了。その後は懇親会。テーブルに分かれて美味しいお料理をいただきながら、お祝いの言葉を拝聴いたしました。遠路はるばる、というねぎらいから、私も一言スピーチを。この日、当ブログに書いたことを手短かに申し述べ、最後に例の一首を詠み上げてスピーチ終了。「エロいとエロス」でどよめく会場。笑笑。亡羊さん、ありがとうございました。




そしてさらに会場を移しての懇親会②。インフォーマルな雰囲気で、日頃なかなかお会いできないみなさまとゆっくりお話しできました。とても楽しくて有意義な時間。ありがとうございました。





会果てて、ホテルに戻ろうとしていた信子同志と私、同じく帰宅しようとなさっていた伊藤一彦さんとバッタリ。もうこうなると、当然ニシタチ(宮崎の繁華街)の夜が始まってしまうわけですね。そこに合流されたのはもちろん亡羊さん、それから久永さん、そして宮崎大学の中村教授。ニシタチの銘酒居酒屋「糀素弓(はなさゆみ)」で下戸のわれわれ(信子同志と私)、なぜか大変楽しんでしまったのでした。宮崎のみなさまのホスピタリティ半端ない。ここのお店で、例の「竜の匂い」の秘密について、亡羊さんから聞くことができたのですが、それは創作上の秘密ということで内緒です。




世事に疎い私たち。宮崎がWBCのキャンプで賑わっているなどとはつゆ知らず。なんかホテルにガタイのいい男子多いなあとか、タクシー全然ひろえんなあとか思っていて、そのぼんやりぶりに笑えました。下手するとホテルも取れなかった可能性があったのですが、そこはそつない古島信子同志、12月中にさっとエアチケットと共に予約を入れてくれて見事最安値で快適な旅を楽しめたのでした。信子さん、ありがとうねー。

亡羊さん、おめでとうございました。お会いできて良かった。
伊藤先生、お世話になりました。ごちそうさまでした。
高野さん、なおちゃん、お会いできて嬉しかったです。
栗木さん、たくさんお話しできてラッキーでした。また9月に。
お会いできたみなさま、ありがとうございました。
牧水賞のますますのご発展をお祈り申し上げます。
ことほぎの席に背中を丸め座す奥田亡羊あなたこそ花
「天国」読んでみたいです。E.

