2023年 02月 03日
埠頭の鴉 大野英子
寒波が明けた日曜日、一週間ぶりの朝の埠頭までの散歩。平日は人や車の往来が多くて近づけない北側のふ頭の、閑散とした日曜日が大好き。
気温は少し緩んだとはいえ、埠頭まで来るとさすがに風が凄かった。博多埠頭から中央ふ頭までの外海側には、広い空き地があり、そこにはいつも鳶や鴉がたむろしているのです。
強風に乗って鳶はすでにどこか上空へ飛んで行ったのかこの朝は鴉ばかりが、風の中でもがいている様子が面白くて、しばらく立ち止まって見入ってしまいました。
翔びたたんとする鴉らの海風に圧されておッとッとッ前へゆけない
やうやく翔びたつけれども旋回をするばかりなる埠頭の鴉
ほんのすこし海側へすすみ電線に止まる鴉の三十四羽
生きづらさ鴉は感じてゐるのかな媚を売らない気高さあれど
埠頭の塀の中にてミーティングする雀らはふゆごろも着て
マリン通りの白い山茶花もうすでに錆色となり雀出で入る
海を見るカモメは動かずせはしげなハクセキレイはわがまへを過ぐ
この、風に抗う必死さ、伝わるでしょうか。
街なかに出てしまえばもっと楽なのにとも思いますが、鴉には鴉の選んだ縄張りがあるのでしょうね。
埠頭にてスマホ画面を打つ指の石のやうなる海風のなか