2021年 04月 25日
廃刊 大西晶子
数日前に美容院に行った。家から徒歩圏内の美容院で、長く通い美容師さんも好みを知っていてくれるので安心して座っていられる。
美容院での楽しみの一つは自分では買うことのない雑誌を読むことだ。ヘアダイの待ち時間などに、写真が美しい大型の婦人雑誌を見るのは楽しい。美容師さんも私の好みを覚えていてくれて、「婦人画報」「家庭画報」「ミセス」などの新刊を持って来てくれる。ファッション、グルメ、旅行と写真を見るだけで楽しい。眼鏡を外して髪の手入れを受けていると字は読みにくいのでその手の雑誌が良いのだ。
今回は「婦人画報」を持って来てくれて「ミセス」が3月で廃刊になったと言われた。「あ、やっぱりね」と思う。内容や大きさ、一冊1000円以上する値段もだが、紙の本を買うのがだんだん時代と合わなくなっているのだろう。
「ミセス」は私が中学生だったころに創刊されたという。
同じ文化服装学院出版局からでていた「装苑」は独身の頃にときどき流行を知りたくて買った。当時〈装苑モード〉という洋服のブランドもあり、雑誌に載っていたのと同じ服をデパートで売っていて、カクテルドレス風の服を買ったことも記憶に残っているが「ミセス」を自分で買ったことは一度も無かったと思う。
結婚後、長女が生れたあとで家に籠もる生活がつづき、時間があるので洋裁をしようと思いついた。ほとんど遊び感覚で縫物を始めたがやっぱり指南書が必要になる。近所の人から教えてもらって買ったのが「ミセス」の別冊、「ミセスの子供服」だった。さすがにファッション系の雑誌の別冊だけあって洗練されたお洒落な子供服が満載で、写真がきれいだった。
それを見ながら型紙を作り、スカート、キュロットスカート、ワンピース、ジャケット、ツーピースとミシンを使うのがあまり得意ではない私にも縫えそうな物からかなりの点数を作った。兎のアップリケのある布でスカートを作ったり、娘二人にレースのドレスをお揃いで作ったりして楽しかった。
しかし当時は既製服が増えてきた頃で、手作りの洋服を子供に着せるような人が減っていたのだろう、「ミセスの子供服」はしばらくして廃刊になってしまった。
私も子供たちが小学校の3,4年になったころからはもっぱら既製服を買うようになり、いつの間にかミシンの出番もなくなった。作った洋服はお下がりで友人にあげたので残っていない。
しかしまだ子供たちは覚えていてたまにその話をすることがあるが、なにぶん3,40年ちかく前のことなのでその頃の熱心に縫物をしていた自分が本当の自分だったようには思えない程だ。
たまたま「ミセス」の廃刊を知り、芋づるを引くようにほとんど忘れかけていた洋裁のことを思い出した。写真の中の私が作った服を着た娘たちはいつまでも幼いままだ。
まだ鋏いれざる布の滑らかさ手にたのしみて型紙をおく
お嬢さんたち、手作りのドレスで可愛いらしいこと❗Y.
晶子さん手作りのワンピースもドレスも素敵です。お嬢さんたちのうれしそうな表情が印象的です。Cs
母の足踏みミシンがよみがえります。E.