2021年 04月 24日
5月のころ 栗山由利
ウォーキングを中断してかれこれ一か月になる。あのころ枝いっぱいに花を咲かせていた桜の木も、今はやわらかな若葉をまとっていることだろう。先日、札幌で桜の開花宣言がでたとニュースが報じていた。これで南から北へ日本全国に春が訪れたことになるのだろう。やはり春の知らせは桜につきる。
ところ変わって中国では5月ごろに柳絮(りゅうじょ)と呼ばれる白い綿毛を持つ柳の種子が春を告げる風物詩だそうだ。日本にある柳はこの柳絮をあまり形成しない種が多く、柳自体が街路樹に使われることも少ないためあまり見られることはない。


私は一度だけ空中を飛ぶ白くふわふわした柳絮を見たことがある。およそ十年前、留学中の息子に会うために母と夫と三人で北京を訪れたときだった。天安門から南に下った前門大街を散策中に見かけた空中を浮遊する白い綿毛のようなものが、その柳絮だった。ただこの柳絮、通りすがりの観光客として眺めるだけなら風情のあるものだが、その中で暮らしている人々にとってはかなり厄介なもののようで、マスクは必需品だし衣服についたものもしつこく、なかには花粉症のようにアレルギーをおこす人もいるそうだ。
そう知って思い当たったのが札幌で聞いたポプラの話だった。ポプラも春に花が咲いたあとには綿毛のついた種子をつけ、これが風に飛ばされて花壇や歩道に積もって困っているという話だった。なにげなく調べてみると意外なことに、柳とポプラは同じヤナギ科に属しているということで驚いたことがある。柳の葉はシシャモを漢字で書くと柳葉魚となるようにシュッと細いもので、ポプラの葉は三角形またはひし形のものだし、立ち姿もまったく異なっているので、とても同種とは思えなかったのだ。
コロナ禍で旅に出ることが困難になってから、よけいにその土地でなければ体験できないものに強く憧れる。海外へはおそらく年の単位で行くことはかなわないだろう。5月のころもう一度北京を訪れて柳絮が舞う風景を見たいと思う。

つかもうとした指先をすりぬける柳絮きらりと北京の五月
今はコロナ禍、じっくり養生してしっかり完治させてくださいね。E.