2021年 03月 24日
擣衣 有川知津子
砧をみる機会があった。
砧のことは、秋から冬にかかる季節に書くのがふさわしいと思うけれど、書いておこう。

この木槌でこの台の上で、衣を打つ。そうやって繊維をやわらげたり光沢を出したりしていたのだそうだ。秋の夜の女たちの仕事だった。
み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさとさむく衣打つなり 藤原雅経
秋の夜のしずかな空気をつたって遠くから聞こえてくる音はあわれを誘った。そういう静けさにこころを傾けていた。

この部屋からみる山並みは、このところずっとこんな感じにけぶっている。これはお彼岸明けの昨日のいろ――。
船室にふるさとの土ひろげゐし祖父のてのひら、てのひらの島
「擣衣」勉強になりました。ありがとう。E.