2020年 01月 13日
素心 百留ななみ
春を感じるおだやかなひかり。
2020年はあたたかな冬。
午後の路地裏にただよう甘いかおり・・・
低い塀の向こうに蝋梅。つやつやとした透きとおるような淡黄色。
薄茶色の枝に下向きに咲く繊細な蝋細工のような小花。
お正月の壺に蝋梅は欠かせない。蕾ながらほのかな香りにはなやいだ。
もうすっかり咲いている。
そうだ。毎年はじめての梅に会う毛利邸に行ってみよう。
門をくぐって左手の陽だまりに若い梅の木が数本ある。
三分咲きくらいだろうか。紅梅も白梅も青空にうつくしい。
この香り・・・ふりむくと小さな蝋梅が一本。
ちょうど目の高さに可憐なはちみつ色の小花。
こんなにまじまじと観たのははじめて・・・
花の芯まですべて同じ淡黄色。
蝋梅ってこんなにぜんぶ蝋梅色だったかしら・・・小さな蝋梅の香りを独り占め。
ほっこりの心のままネット検索。
ロウバイはクスノキ目ロウバイ科。バラ科の梅とは系統的には遠い。
ロウバイは中心部の花弁が暗紫色。
全体が透きとおるような黄色の花はロウバイの変種のソシンロウバイ。
素心蝋梅と書く。明治になって中国から日本に入ってきたようだ。
中国では花弁、花芯まで同じ色の花を素心というらしい。
【素心】平生のおもい、かねての心、素志。 と広辞苑にはある。
一点素心という言葉も中国にはあって、人間らしく生きるためにはほんのわずかでも純真な心をもつ必要がある。という意味らしい。
幕末の馬関の開港のころに高杉晋作が作った漢詩にも素心が使われている。
悠々(騎兵隊軍艦、福田侠平の号)の詩に続けて詠んだもの。
次悠々道人韻 高杉晋作
詩酒悠々宜送日 男児成事豈無時
縦令市井呼侠客 一片素心未敢差
やはり平生の思い、平常心の意味。
素心の言葉をつかうたびに素心蝋梅の色、香りを思うだろう。
音もなく素心蝋梅の花芯から夕べの雨がこぼれおちたり
昨日から急に寒くなって驚いているかも~。E.
「一片素心」、簡素で惹かれる言葉です。ありがとうございます。Cz.