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白秋の目   鈴木千登世

昨日のブログでちづさんが、主要同人として「日光」を率いた白秋と夕暮の交流について紹介されていた。ちづさんの「白秋とともにあった時間が慕わしく思われたのだろう」という言葉に胸を衝かれながら読んでいると、ふと思い出したことがあった。でもそれはもやもやとした思いでもあった。実は、ご紹介していなかったけれど、長澤先生は白秋と夕暮の交流についても話されていて、そのお話は、夕暮の入院中に白秋と迢空が見舞いに来たというお話だったような……。

確かめてみると、それは昭和12年のことではなく、遡って、大正13年の「日光」創刊時のことで、夕暮は重度の糖尿病を患い、このままでは失明すると言われて入院中で、そこに白秋や迢空がお見舞いに来ることがあったということだった。時は違うけれど、二人とも同じ病気を患って失明のおそれがあるのをそれぞれ見舞っていたとは。

夕暮は「日光」創刊のきっかけになった人物なのに創刊号に歌がないのはこの入院ためで、さらに白秋から「とても散文がいいからたくさん書け」と勧められて「日光」に散文を書くようになったとも。白秋の勧めで書き始めた散文が後に『白秋追憶』につながっていく……。文学上のことを含めて、夕暮の文中の「友の好意」に二人の親密さを改めて思った。そして才能を見抜く白秋の目の確かさも。

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柊の花。写真は10日前のものだけれど、庭に今も咲いていて、淡いけれど凜とした香りを放っている。例年はもっと早く11月ごろに咲き始めてこの時期にはもう散って花の姿はないはずなのに。



        ひひらぎの花白く咲きはるかなる歌人思ふその師を思ふ
 

さて、年を重ねると時間の流れは速いというのは本当で、今日は今年最後の木曜日。最後の担当。
慌ただしい中にも、少しずつ育っていくものがありますように。
そして、やってくる新しい年が皆様にとって幸多い年となりますように。


 お読みくださってありがとうございました。




Commented by minaminouozafk at 2019-12-26 22:25
うれしい話題をありがとうございました。
夕暮の歌が「日光」創刊号にないとは、びっくり! でした。
「日光」は復刻版が出ていますね。年明けにゆっくり読んでみようと思います。柊の花が象徴的です。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2019-12-27 00:26
ぼんやりと見えてきていた、夕暮が模索し続け、追い求めていたものはーー。
ちーさま、ナイスアシストありがとうございます。E.
Commented by sacfa2018 at 2019-12-27 17:21
ちづりんとちーさまのお二人のおかげをもちまして、白秋と夕暮のことがずいぶんわかりました。まだまだほんの入り口ですが。
ありがとうございます。S.
Commented by minaminouozafk at 2019-12-27 19:21
白秋と夕暮だけではなく尺迢空も知り合いだったのですね。そして夕暮も糖尿病だったなんて。ゆたかな大正時代です。白い柊の香り大好きです。長府でもまだ咲いています。N.
Commented by minaminouozafk at 2019-12-27 20:53
この時代には糖尿病が多かったのでしょうか。釈迢空や夕暮も糖尿病のだったとは。意外でした。ちづりんと千登勢さんのおかげで夕暮と白秋のことに興味が湧いてきました。面白そうなことが多く、来年は忙しくなりそうです。A
Commented by minaminouozafk at 2019-12-28 20:24
どんどん深くなっていくお話に、このブログの一面を見た気がします。このような素晴らしい効果もあるのだと感激です。勉強させていただきます。Y.
Commented by minaminouozafk at 2019-12-28 21:54
「日光」の創刊号に歌がないことで、「日光」の話題になっても夕暮の名前がでなくて、評価に影響していると長澤先生がおっしゃってました。夕暮の歌を何首か知っていたのですが、なかなか統一したイメージが持てませんでした。常に表現を追究し続けていたからだったんですね。もっともっと評価されて良い歌人だと思います。大正期の白秋と夕暮、茂吉も気になります。Cs
by minaminouozafk | 2019-12-26 07:12 | Comments(7)