2019年 10月 10日
ひっつきもっつき 鈴木千登世
風の匂いがかわって、秋が急に深くなったように思ったら、暦はもう「寒露」だった。庭に出ると、萩の葉の上には朝露がころんと置かれていた。
100均のマクロレンズで撮影してみました。
先週の土曜日、県立博物館のボランティアをされているコスモスの会員の方のご紹介で「秋の植物のふしぎを調べよう!」という植物教室に参加した。
秋の野を歩くといつの間にか洋服にくっついていた草の実。子どもの頃は友だちとくっつけあって遊んだりしていて、ひっつき虫と呼んでような気もする。そのくっつきの仕組みをマイクロスコープで観察して、植物の生き残るための工夫あれこれを学ぶというもの。別館の昔の理科室の匂いがする講義室で、小中学生に混じって、講師の先生のお話を聞いた。
「くっつく」と一言で括っていたけれど、実はくっつき方にもいろいろあって、①逆さトゲをもつもの ②こまかい鉤が密生する(面ファスナーの)もの ③鉤をもつもの ④鉤になるもの ⑤ねばねばの粘液をだすもの とさまざまなバリエーションがあるという。
ひっつき虫というと、まず、思い浮かぶオナモミは、③の鉤をもつ仲間。注意深く見たことはなかったとげとげを、マイクロスコープで覗くととげの先にくるんくるんとした鉤が付いていて、愛らしい。これなら繊維に深く食い込んでなかなか取れないはずだ。
白いひげのような鉤を繊維にひっかけて遠くへ運ばれる。ヒナタ(日向)イノコヅチとヒカゲ(日陰)イノコヅチという種があって、日陰の方は実の付き方がまばら。写真はヒナタの方。
チヂミザサ。⑤のねばねばの粘液をだすもの。
きらきらと光るチヂミザサは実を結ぶと、むらさきの三本の長い毛の表面に粘液を出して、相手にくっついて移動する。光っていたのは粘液だったとは。マクロで写して眺めると、苞と繊細な毛の取り合わせの美しさにしみじみする。
まだ、小学校にも上がっていないだろう女の子が、マイクロスコープを覗き、一心に観察していた。真剣そのものの瞳は静かな光が宿って未知への興味に満ちていた。学ぶことの原点を見たようで、すっと背筋が伸びる思いがした。
露草とヌスビトハギで作った自作の栞をお土産にして、2時間余りの楽しい講座は終了。帰途、道ばたの草地に目をやると、狗尾草に混じってイノコヅチやチヂミザサが揺れているのが見えた。目には映っていたけど見えていなかったんだなあ。
この前「白露」と思っていたらもう「寒露」なのですね。100均のレンズ、良いでしょ~。
この魚座、「植物」のカテゴリー分けもしたいくらい、勉強になる報告が多いです。あ、「昆虫」もですね。E.