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しゃぼんだま 有川知津子


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 ひだりの方から流れてきたのは、しゃぼんだま、だった。

 これはチャンスである。



シヤボン玉の中へは

庭は這入(はひれ)ません

まはりをくるくる廻つてゐます

ジヤン・コクトオ作

堀口大學訳『月下の一群』(1925年)



 ほんとに這入れないのか確かめるチャンスである。

 …………

 庭がないので、とりあえず私が庭の気持ちになる。



 ああ、なるほどね~


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 しゃぼんだまの筋肉って、意外と弾力があってしなやかだ。

 これじゃあね。



 庭の私を見下ろしてしゃぼんだまは昇ってゆく。


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 もう、もどらないつもりだな。



 堀口は、白水社版の『月下の一群』訳者あとがきで、


  求められて訳したもの、目的があつて訳したものは、只の一篇もないのである。

  何のあてもなく、ただ訳してこれを国語に移しかへる快楽の故のみになされた

  のだつた。


と書いた。



 「ただ訳してこれを国語に移しかへる」ことが楽しくてたまらなかったのである。そうして成った一書は、佐藤春夫に捧げられた。



  海よりの風かがやかぬ曇り日に庭をあやしてゐるしやぼんだま



Commented by minaminouozafk at 2019-05-22 21:29
素敵な詩の紹介とともに、いつも詩情に溢れるちづりんのブログ、楽しみだよ~。
シャボン玉のまわりをくるくる廻っている庭!うっとり~。シャボン玉は何処に連れていってくれるのでしょう。
私も飛ばしてみたくなりました。ありがとう。E.
Commented by sacfa2018 at 2019-05-23 00:46
庭をあやしてゐるしやぼん玉…、素晴らしい。S.
Commented by minaminouozafk at 2019-05-23 05:51
しゃぼん玉、きれい。一緒に宙をただよってる気持ちになりました。堀口大学のエピソードも素敵ですね。ゆっくり時間が過ぎるようです。Cs
Commented by minaminouozafk at 2019-05-23 09:53
ただ訳して国語に移しかえる快楽。上田敏の海潮音、井伏鱒二の勧酒…翻訳にうっとりします。N.
Commented by minaminouozafk at 2019-05-23 16:56
ありがとうございます。みんな~見える? 3枚目の写真のしゃぼん玉~Cz.
Commented by minaminouozafk at 2019-05-23 18:27
はーい、写真を拡大して探しました~。すでに庭ではなく大空をあやしておりました。E.
Commented by minaminouozafk at 2019-05-23 23:00
英子さま~、ありがとうございます。うれしいなあ。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2019-05-23 23:37
しゃぼん玉のあれは筋肉だったのですね。虹色の筋肉で空までとんでいくしゃぼん玉!庭を空をあやすしゃぼん玉は子供達にも人気者です。A
Commented by minaminouozafk at 2019-05-24 00:12
しゃぼん玉の筋肉、はかなそうで実は強い!ちづりんの
〈筋〉もしなやかで強靭なのですね。Y.
by minaminouozafk | 2019-05-22 05:42 | Comments(9)