2019年 05月 13日
カドミウムレッド 百留ななみ
四大工業地帯のひとつとして北九州工業地帯をならったのは昭和の小学校の社会科。
今は京浜・中京・阪神が三大工業地帯で、生産量の減少した北九州は工業地域となっている。
戦後景気の真っ只中で公害問題も深刻になったころ。官営八幡製鐵所を中心にさまざまな化学工場も建築ラッシュ。北九州工業地帯の最盛期。たしか洞海湾は死の海といわれていた。
その洞海湾にかかる橋が若戸大橋。若松と戸畑をつないでいる。何度か車で通ったことはあるがゆっくり眺めたことはない。環境問題に力をいれてとてもきれいになったという洞海湾を探検。初夏のような日差しのなか、戸畑駅から市営渡船乗り場へ向かう。5分ほどで若戸大橋のたもと。古い倉庫やビルがぽつぽつとあってノスタルジックな光景。若松は本当に目の前。大きな川の河口って感じ。青空に真っ赤な橋のコントラストがうつくしい。海の水もきれい。3分もかからずに到着。自転車で乗り込んでいたおじいちゃんたちも一緒。
レトロなビルもちらほら。関門海峡をぐっとコンパクトにしたような。しまなみ海道も関門橋、明石大橋など最近の橋は自然にとけこむ色が多い気がする。平戸大橋はたしか赤色だった。
調べてみると若戸大橋は昭和37年に日本初の長大吊橋として完成。日本では最古の吊橋。3万を超える応募者の中から若戸大橋の名前が決まる。赤色は、エネルギー・情熱・使命を象徴する色として若戸審美委員会によって決まったようだ。また工場からの煤煙でどんよりしていたために人工的な景観のなかで目立つように明るいカドミウムレッドを選んだともいう。
本当に綺麗な赤色。2012年に若戸トンネルが完成。さらに昨年12月からトンネル、橋ともに無料となった。もうすぐ還暦の若戸大橋。堂々としていて、高度成長期のエネルギーを今もその中に感じる。これから令和の時代も情熱の赤を受け継いで、ずっと見守っていてほしい。
明治38年に石炭商同業組合事務所として建てられたレトロなビルの一階にあるクロワッサンのお店。三日月屋。博多駅や福岡空港にもお店があるが若松が本店。クロワッサンラスク付きのソフトクリームを買って海沿いのベンチでのんびり。
かつて日本一の石炭積出港だった若松。沖の船に石炭を積み込んでいた<ごんぞう>さんの小屋も残っている。渡船乗り場から若松駅までの間は若松バンドとよばれ散策の場として整備されている。終着駅である若松駅そばの公園ではSL機関車が野ざらしのまま。市民館には火野葦平の展示室がある。今度は高塔山まで歩いてみよう。
あふぎみる若戸大橋 青空にカドミウムレッドの直線きらり
空は霞んでも、地上はくっきり色鮮やかな季節になってきましたね。E.
マンホールの蓋の色合いもすてき! Cz.