2019年 01月 31日
いい感じをします 鈴木千登世
年末に息子からもらった目のマッサージ器。すっかり気に入って眠る前のひとときに愛用している。いくつかのパターンがあるということなので、どんなものかと付属の取扱説明書をひらいてみた。
最初はふつうのトリセツのようだった。けれど、読み進むにつれて、定番の(固い)言い回しにたどたどしい日本語が混じってきて、なんだか微笑ましい。
たとえば、
「お問い合わせの際には、製品名とご注文番号をご付属してください。」
「柔らかな上等の布を使って、肌にいい生地でいい感じをします。」
などなど
自動翻訳かとも思ったけれど、この微妙さは、外国の方が一所懸命訳している感じ。助詞が一字違うだけで違和感の生まれる日本語。改めて難しいなと思いながら、当初の目的を忘れて読みふけってしまった。
すると、
「ケーブルを抜けた後、何も点灯しません。ご注意くださいね。」
「コンピュータを接続して充電してくださいね。」
あああ。
「ね」が一字付くだけで、このやさしさ、丁寧さ。思わず、はい、わかりました。と答えたくなる。定番の言い回しだったら、意味を受け取るだけなのに、たどたどしさゆえに取扱説明書に愛おしさのようなものを感じて、頭をひねりながら訳しているだろう異国の人(と勝手に思っている)にあれこれ思いを巡らせてしまった。
実はこのマッサージ器、スイッチを入れると英語で語りかけてくれ、マッサージが終わるとsee youと挨拶して切れるのだ。耳元で語りかける器械とたどたどしいことばで書かれた説明書。作った方は意図してないだろうけれど人間味を感じるマッサージ器にますます愛着を感じてしまった。
たどたどしいことばで愛を告げたなら君は応へてくれただろうか