2019年 01月 17日
じよきじょきと 鈴木千登世
ときどき新聞を切り抜く。忙しい日々に、新聞は飛ばし読みばかりだけれど、気になる記事に出合うと忘れないようにじょきじょき切り抜いてとりあえず手元に取っておく。といっても生来のなまけもの。切り抜いたものを整理せずにあちこちに挟んでおくのでなかなか資料として利用できない。そのまま忘れてしまうこともしばしば。それでも、いつかじっくり整理して活用したいと懲りもせずに切り抜いている。
生家が毎日新聞だったので、他紙も購読したことはあるけれど、今も毎日新聞を購読している。最近よく切り抜くのは日曜くらぶの「炉辺の風おと」と「新・心のサプリ」。
「炉辺の風おと」は小説家の梨木香歩さんのエッセイだ。梨木香歩と言えば『家守綺譚』が思い浮かぶ。さるすべりの木に恋をされ、掛け軸から亡き友人が現れ、飼い犬のゴローがカッパの争いの仲裁をする……現実と幻想のあわいをどこか懐かしい筆致で描きながら心のひだ深くに染みいる文章が魅力的だ。「炉辺の風おと」では信州の山荘での生活や自然とのふれあいから生まれる思索が語られている。
「新・心のサプリ」は心療内科医でジャズシンガーでもある海原純子さんのコラム。暮らしの中でもやもやと抱えているものを解決するヒントを得たり、大きな別の視点に触れて目が開かれる思いがしたりすることがしばしばで、まさに心のサプリメントとなっている。もう一年以上も前になるけれど「オバマ前大統領のツイート」と題された一文は今も心に残っている。
ぢょきぢょきと切り抜いてをり 結局は言葉なのだわたしの欲しいものは
切り抜きが日の目を見る日は、もう少し先になりそう。
じょきじょきの内容の紹介も何時かお願いします。わたしもじょきじょきしたくなりました。E.
英子さんぜひぜひ『家守奇譚』お読みください。私の紹介文では荒唐無稽に感じますが、漱石の『夢十夜』の世界に通じるような不思議な世界に誘われます。晶子さん「海原純子のHarvard Diary」で検索すると「新・心のサプリ」のバックナンバー読めます。「オバマ前大統領のツイート」は2017年8月27日のものです。Cs