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鷗外「元号考」     有川知津子


鷗外最晩年の著述に、「元号考」がある。「大化」から「明治」に至るまでの二百四十有余の元号の出典を考証(鷗外全集「後記」森潤三郎)した労作である。



しかし残念なことに未完に終わった。そのことにいちばん心を残したのは鷗外本人であったろう。



おそらく死期の予測できていた鷗外は、賀古鶴所に宛てて、次のように書いている。このとき、もう余命五十日もなかった。


女、酒、烟草、宴会、皆絶対にやめてゐる此上は役を退くことより外ないしかしこれは僕の目下やつてゐる最大著述(中外元号考)に連繋してゐるこれをやめて一年長く呼吸してゐるとやめずに一年早く此世をおいとま申すとどつちがいいか考物である又僕の命が著述気分をすてて延びるかどうか疑問である

                   (*カタカナ及び略記号は平仮名に改めた。)


ここに「最大著述」と記されたのは、「元号考」である。



今以上に養生に努めよといわれるなら、あとは仕事を辞めるしかない。だが、退役し「最大著述」を止めて一年長く生きるのと、それを続けて一年早く「おいとま申す」のとどちらがいいか、と胸中を綴り、さらに、自身の生命が執筆意欲によって結ばれていることを仄めかせている。



この書牘から放たれる鷗外の言葉の波動はいったいなんだろうか。



さて、鷗外はその最期をどのように過ごしたか。

鷗外全集の「後記」には、その「数日前まで加筆を怠らなかつた」と記されている。



四月一日に新元号が発表されるという。

文久、元治、慶応、明治、大正を生きた鷗外は、みずからの考証に照らして「明治」「大正」という元号を否定的に捉えていたようである。



鷗外ならば、どのような新元号を出してみせるか。




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    うつむくはこの花のいろ元朝の曇りのもとの紅花襤褸菊




Commented by sacfa2018 at 2019-01-10 00:42
鷗外の情熱に圧倒されます。元号の出典になぜそこまでこだわったのか、知りたくなりました。ちづりん、ありがとう。
それにしても、新元号、どんな感じなんでしょうね。S.
Commented by minaminouozafk at 2019-01-10 08:52
延命にかえて情熱を注いだ「元号考」。生の言葉からは凄みが伝わります。
新元号は、どうなるのか、タイムリーな話題をありがとう。E.
Commented by minaminouozafk at 2019-01-10 11:21
鴎外の壮絶なまでの「元号考」への思い、 さすが鴎外!という感じです。4月1日に発表される新元号に安や晋が入っていませんように。A
Commented by minaminouozafk at 2019-01-10 20:57
新しい元号たのしみです。なんだか昭和生まれは遠くなりそうですね。平成もあと数カ月、ちょっとさびしいです。穏やかで平和な元号であって欲しいです。N.
Commented by minaminouozafk at 2019-01-12 10:20
元号の変わる節目に居合わせるなんて、……たのしみ。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2019-01-13 09:54
明治、大正、昭和三代を生きた人はすごいと思ってましたが、我々も昭和、平成、次の世と三代を生きることになりますね。Y.
Commented by minaminouozafk at 2019-01-13 09:58
意志の人、鷗外を改めて感じました。自分の終わりを見据えた眼差しと勁い思い。圧倒されます。平成も2ヶ月余りとなりました。時間の流れの早さを思います。コメント遅くなってごめんなさい。Cs
by minaminouozafk | 2019-01-09 06:30 | Comments(7)