2018年 11月 13日
Bohemian Rhapsody 藤野早苗
11月9日、この日は映画「ボヘミアン・ラプソディ」の日本公開日。イギリスのロックバンド、Queenのリードヴォーカル、フレディ・マーキュリーの自伝的映画で、世界中のファンが公開の日を待ちわびていた。
もちろん私もそのひとり。当ブログにも何度か、フレディにまつわる話を書いた(以下のサイトをご参照下さい)。
https://minaminouo.exblog.jp/25629661/
https://minaminouo.exblog.jp/25818850/
https://minaminouo.exblog.jp/26918390/
https://minaminouo.exblog.jp/29937371/
14歳の頃、深夜のラジオから流れてきた曲Keep Yourself Alive.を聴いて以来だから、ファン歴はもう42年だ。われながら驚く。
この期間、ずっと同じ濃度でファンであったかというと、それはちがう。ラジオで聴いて気になり始め、どうにかクィーンの正体に辿りついたとき(ネット検索などという行為はSFの世界にしかなかった時代である)、四人のヴィジュアリーな美しさに圧倒された。アイドルブーム全盛の日本ではあったが、容姿だけとってもこんなに図抜けた人々はいなかったし、なんせ曲がいい。しかも全曲自分たちで手掛けていて、演奏技術も半端ない。さらに、ギターのブライアン・メイはインペリアルカレッジオブロンドンの研究職に就いていて、天文物理学者として「世界の若手研究者10人」に選出されていたとか、金髪碧眼のドラマー、ロジャー・テイラーは歯科医の卵だったとか、地味だけどいい仕事するベーシスト、ジョン・ディーコンは当時最先端の電子工学学士だとか、フレディのあの独特のセンスは、イーリングアートカレッジ出身だからだ、とか、メンバーそれぞれのバックボーンの華やかさも魅力の一つだった。こんな人生もあるんだなあ、神様はいくつもの才能をひとりの人間に与えられることも(わりと頻繁に)あるのだなあ……、そんな気持ちではるか上空を見上げるようにこのバンドに憧れていた。10代のころ、懐かしい。
その後、フレディは突然の短髪、ヒゲ化。「私になんの断りもなく!」そう感じたファンは多い。エキゾチックな王子様キャラの封印は、若干、私のファン心理に影響はしたものの、女王様への忠誠心は揺らぐことはなかった。
けれど、いつしか噂されるようになったメンバー不仲説と、フレディご乱行の様子には胸が痛んだ。そしてそれを裏書きするかのような、フレディのソロアルバムMr. Bad Guy.リリース。20代も半ばにさしかかり、大人の事情もなんとなく分かり始めたころである。まあ、解散っていうのも一つよね、と諦観していたら、あのアフリカ救済のためのライブエイド、伝説のウェンブリーアリーナでのライブパフォーマンスである。すごい、すごいよ、クィーン。ここで再び、ファン指数、急激に上昇。
そして、運命の日、1991年11月23日。この日、私はフレディのHIV罹患を新聞で知った。ショックに打ちのめされた翌日、24日、フレディの訃報が舞い込んだのだった。
自分とは縁もゆかりもないひとりのロックスターの死に、こんなに衝撃を受けるとは思わなかった。29歳のころ。ああ、もうフレディには会えないんだなあ……。翌年、30歳の私は、夏休みを利用してロンドンへ行き、フレディ巡礼をしてきたのだった。
その後の結婚、出産、育児。低濃度ではあるが、クィーンは常に身に近く存在していた。妊娠中も聴いていたし、車に乗るときはいつも流している。そんな気もなかったのだが、結果的に娘にインプリンティングしてしまったようで、娘も父親よりはるかに年上のロックバンドのファンになった。お前、何歳だ?とよく聞かれるらしい。(笑)。
娘が不登校になったとき、修学旅行代わりにイギリスに行った。留学の下見でもあったのだが、新しい環境に適応しづらい娘が、ロンドンには瞬く間に適応してしまったのは、やはりクィーン効果であろう。ありがとう、クィーン。
で、現在公開中の「ボヘミアン・ラプソディー」。10月24日のプレス用試写会に行く機会があったので、11月9日の公開初日の観賞は二度目。一回目はただただ感動で、涙腺崩壊。
二度目でようやく色々なことに気づく。サウンドトラックは最高、フレディを演じるラミ・マレックをはじめとする俳優陣の演技力に感じ入った。似ているというより、憑依。そこには、オリジナルメンバーに対する深い畏敬の念が感じられた。「こんなに愛ある演技をありがとう。きっとフレディも喜んでいるね。」演じてくれた四人のBo-Rapボーイたちにこんなことを考えていた私、56歳。ふり仰ぐようにクィーンに憧れた10代の少女は、42年という時を経た今、フレディのお母さんのような気持で二度目の「ボヘミアン・ラプソディ」観賞を終えたのだった。享年45歳のフレディ。神様は彼に老いることを許さなかったのだ、きっと。
レコジャケの裏なる小さきクレジット No Synthesizer 女王の誇り
オペラやバラードも取り入れたボヘミアン・ラプソディの驚異的な曲の構成に度肝を抜かれた若き日だったけど、四人の優秀な頭脳のバックボーンを知ると納得~。あー、早く時間を作って観賞に浸りたい!E.