藤の莢実  有川知津子


先日の晶子さんのオガタマノキの実(「実のなかの実」10月28日)を見ていたら、あ、と思い出したものがある。



f0371014_22172884.jpg



これは、母校・長崎県立上五島高等学校の中庭にある藤のその莢実。夏に帰省し、牧水の歌碑を見に行ったときに撮っておいたものである。今頃、この莢実は、どうしているだろうか。爆ぜるまでにはまだしばらく時がいるだろう。



藤の莢実は爆ぜるときに音がする。静かにしていると、ちょっと驚くような音だ。どのくらい驚くか、というと、かの寺田寅彦が「藤の実」という文章を書くほどのすごさである。寺田は「漱石山脈」に名を連ねる一人、名うてのエッセイスト。やや長いが、第一段落を引いてみよう。



   昭和七年十二月十三日の夕方帰宅して、居間の机の前へすわると同時に、ぴしりという音がして何か座右の障子にぶつかったものがある。子供がいたずらに小石でも投げたかと思ったが、そうではなくて、それは庭の藤棚の藤豆がはねてその実の一つが飛んで来たのであった。宅のものの話によると、きょうの午後一時過ぎから四時過ぎごろまでの間に頻繁にはじけ、それが庭の藤も台所の前のも両方申し合わせたように盛んにはじけたということであった。台所のほうのは、一間ぐらいを隔てた障子のガラスに衝突する音がなかなかはげしくて、今にもガラスが割れるかと思ったそうである。自分の帰宅早々経験したものは、その日の爆発の最後のものであったらしい。



12月が爆ぜどきのようである。

関係者の証言により、当たったらけっこう痛いらしいことも分かった。12月の藤の木には気をつけることにしよう。



f0371014_22173800.jpg



これは、同校の校庭。しばらく踊ってから帰った。誰も見ていなかったと思う。ああ、あの夏の日が、もうすっかり遠く思われる――。



 野茨の秋のいばらをくぐり来て革命のごとく夕顔ひらく



[PR]
Commented by minaminouozafk at 2018-10-31 09:53
本当に、あの暑い夏の日が遠い昔のように寒い。
ちづりんのひとり踊り、想像しています。E.
Commented by sacfa2018 at 2018-10-31 19:45
踊ったのー?見たかった。藤の莢実が爆ぜる時の音、考えたこともなかった。世の中、まだまだ不思議がいっぱいです。S.
Commented by minaminouozafk at 2018-10-31 21:47
しとやかな藤の花の莢実がそれほど激しくはじけるとは知りませんでした。ちづりんのひとり踊りも私の想定外でした(@_@)。Y.
Commented by minaminouozafk at 2018-10-31 23:54
踊りのち筋肉痛でしたわ~Cz.
Commented by minaminouozafk at 2018-11-01 06:07
ちづさんの踊ってる姿想像しました~。藤の花、立派な莢ですね。激しく弾けることに驚きです。マメ科はそうなのかしら。合歓やえんじゅの莢実が気になり始めました。Cs
Commented by minaminouozafk at 2018-11-01 07:18
たしかに藤の花の鞘は立派です。でも弾ける時に音がするほどとは驚きです。爆ぜ時は12月、どこかで聞けたら楽しみです。N.
Commented by minaminouozafk at 2018-11-01 22:42
藤の実が弾ける音がさかんにするなんて、想像もしませんでした。宮柊二も藤棚のしたの書斎で聴いたことがあるかもしれませんね。後で筋肉痛になるくらい踊るちづりん、これもちょっと想像外でしたが似合いそうな気がします。A
by minaminouozafk | 2018-10-31 06:39 | Comments(7)