2018年 10月 14日
鹿児島寿蔵の人形と短歌 大西晶子
先日知人から福岡県立美術館の「鹿児島寿蔵の人形と短歌」という展覧会の切符を頂いたので行ってきた。短歌を始めたばかりの頃(かれこれ三十年くらい前)に人間国宝・鹿児島寿蔵の人形の展欄会で見た美しい紙塑人形のかずかずを今も覚えている。それに鹿児島寿蔵の歌集「母のくに」も読んだことがある。
今回は県立美術館に寄贈された作品を中心に短歌の自筆の書や陶磁器の作品が多くはないが、じっくり見るのにちょうど良いほど並んでいる。
同時に福岡県の工芸品の久留米絣や博多帯、小石原焼も展示されている。鹿児島寿蔵は福岡市で生まれ育った人なので「郷土の工芸作家」の扱いなのだろう。
白秋などとほぼ同時期に生まれた鹿児島寿蔵は吉居勇、若山牧水などに影響されて短歌を詠み始め「アララギ」で存在感を示しつつ活動したという。生涯に22冊の歌集を刊行し、第2回目の釈超空賞を受賞されている。ほかに人形の写真集やエッセイなどの刊行物も置かれていた。
人形は古事記の神話、万葉集の歌を主題にしたものが多く、幻想的でロマンティックなのが特徴とキャプションに書いてある。どの人形も愛らしく、造形と衣装のゆたかな彩りが時代を越えて新鮮だ。
「濤を鎮むる弟橘比賣」
寿蔵の歌
上の写真の書(自筆)
紙塑のわざはゆめにあらざる夢なりき 求めもとめてもとめえし夢
ねがひたる一世(ひとよ)はつひにかすかにてわらべごころに人像(ひとが
た)つくる
もろもろのことのはげしき世にひそみ心直かれと人形つくる
ひとがたのちいさきものにこのやうに充ちて人には見えざるいのち
泣き顔と笑顔の面ふたつ持つ人形の名は「両面童子」
前に伸ばす尾を机にし香炉たく人魚像あり「南海の夢」と
紹介ありがとうございます。E.