2018年 10月 13日
大分県人のカボス愛 栗山由利
秋も深まってくると魚屋の店先にきらりと光った秋刀魚が並び、昨日のように寒かった日にはテーブルの上で湯気をあげる鍋物が恋しくなる。そうなると故郷大分の家庭ではカボスが大活躍をはじめる。
カボスは大分県の特産果樹で、古くから竹田や臼杵地方の民家の庭先に薬用として植えられていたそうである。「カボス」という記述が文献等に登場するのは戦後しばらくたってからの昭和中期だが、臼杵市内には樹齢300年という古木があったそうで、今も樹齢200年前後の古木が数本あるという。他県にはこれほど古い樹は見られないことから大分県が原産とされている。旬は8月中旬から10月頃までだが、ハウス栽培や貯蔵技術の向上でいつでも手にいれることはできるようになった。とはいっても、手のかかったものは高価だし旬のものがいちばん美味しいに決まっている。
今でこそ一村一品運動のおかげで『大分のカボス』として広く知れ渡っているが、40年前はまだ関東では知名度は低く、知人にさしあげるたびに使い方を説明したものだ。
先日、妹からたくさんのカボスをもらった。妹夫婦がネギを育てている畑の脇にカボスの樹が三本ほどあるのだ。無農薬と言えば聞こえはいいが、特に手入れをせずともたくさんの実をつけてくれる果報者である。地主さんのご厚意で自由に採らせていただいていて、6月の中旬に畑を訪ねた時はまだ金柑くらいの大きさだったものが、直径5センチをこえ見事に育っている。
使い方はさまざまだ。定番の焼き魚、鍋物はもちろんだが、鍋物にはポン酢として利用するだけでなく、自分の皿に取った上から贅沢にたっぷりと果汁をかけると美味しい。この季節は高菜漬けの新物、青高菜が出てくるが、これにかけても酢が塩気を和らげて美味である。レモンの代わりに揚げ物に使うのもお薦めで、うちでは天ぷらにもフライにも使う。さっぱりとして塩分の摂り過ぎにも効果がある。人に教えて「えっ?」と驚かれるのが、味噌汁に二、三滴垂らすという使い方だ。微かな酸味がいつもの味噌汁の味をさわやかに変えてくれる。
また手に入ったらおすそ分けしますので、近くの方は楽しみに待っていて下さい!
手入れせぬカボスを無農薬と言ひおすそわけする ありがたきかな
くし切りにしてそのまま食べても美味でした。無農薬なので、皮もいろいろ使えそうで楽しみます!
ありがとう~。お味噌汁も試しますね。E.