2018年 08月 04日
一念発起 栗山由利
海外を旅行するとき、やはり訪問国の言葉が話せた方がよりディ―プな旅になるのは言わずもがなである。近年は夫の嗜好に付き合って、中国旅行が増えている。わが家は長男夫婦はもちろんだが、夫も何とか一人旅が出来るくらいは中国語が話せる。それに近頃は息子が、プレゼントされた中国の絵本を読み聞かせしているので、二歳の孫もけっこうきれいな発音が出来ると聞いた。私だけが蚊帳の外なのである。
ただ、まわりがこれだけ話せると、私が話せなくても旅先でなんら不自由は無いので、中国語を勉強しようなどと考えたこともなかった。ところが、この考えを覆す事件が今回の上海ツアーでおきたのだ。
それはツアーも終盤の三日目のことだった。上海に新天地という観光地がある。1920年から30年代にかけて建てられたモダンな雰囲気の旧フランス租界の街並みを再生した街で、お洒落なカフェやショップが並ぶ中洋折衷の不思議な一角である。ここで30分ほどのお解き放ちをされて、ツアーの面々は自由に散策をすることになった。写真を撮ったり、お店を覗いたりしていると、夫の足がGODIVAの店の前で止まった。甘いものには目がないので店内に入って何を頼もうかと壁のメニュー表を見ていると、同じツアーの親子連れの娘さんが入って来た。やはり悩んでいる様子だったが、メニュー表は中国語だ。夫も決めかねているようであった。と、その娘さんは先に並んでいた人が受け取ったソフトクリームを指差して身振り手振りで注文をすませた。すると長いことメニュー表を見ていた夫が「私も‥‥」と日本語で言ったのだ。娘さんは店の人に「セイム、セイム」と言ってくれて、とりあえず注文は完了した。次はお会計だ。一つが50元、レジを見ていると50と表示された後に、75と出ている。えっ、中国に消費税はないはずだし‥‥何だ何だと娘さんと話していても埒はあかない。そこで、もしかするとこれは二つの値段なのかなということに私たちは気づいた。あーーっ、なにか話さねばと追い詰められた私は、たまたま夫から聞いていた二つという意味の中国語を思い出したので、とっさに「リャンガー セブンティファイブ?⤴」と叫んだ。すると店の人はうんうんと頷いた。なーんだ、一つ50元が二つで75元になったのかと、娘さんと顔を見合わせたのだが、その騒動の間、夫からは一言の中国語も聞かれなかったのである。わが家ではこれをGODIVA事件と呼んでおり、これに加えて、空港テイクアウト事件というのもあった。
夫は、どうも考えて考えて口に出すタイプのようだ。でも考えている間に事態は進んでいってしまう。
ここで私は決心をした。よっしゃ、中国語を始めよう。私が向こう見ずにしゃべっても横で夫はじっくりと聞いているだろうから安心である。
というわけで、一念発起して今月から中国語の教室に通い始めた。ここで宣言をしてしまったので頓挫するわけにはいかない(-_-;)。
テキストをひらけば街は近くなり上海、成都 朋友们好
クリクリさんの「空港テイクアウト事件」も今度聞かせてね。E.