『翻訳できない世界のことば』  大西晶子


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市内のユリックス図書館で娘がよく本を借りる。ときどき私も借りてきた本を見せてもらう。そんな一冊が上記の『翻訳できない世界のことば』。作者はエラ・フランシス・サンダース、2014年に発行されたときは20代の女性。さまざまな国に住んだ経験があるイラストレーターだそうだ。

みひらきの2頁にひとつの言葉が書かれ、左ページには作者のコメントと言語(例えばJAPANESE)、右ページには翻訳できない言葉(例えば KOMOREBI,木洩れ日)がイラストと書かれている。


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KOMOREBI 木の葉のすきまから射す日の光。木洩れ日>
作者のコメント「まばゆくて目を閉じてしまうほどに美しいもの。緑の葉のあいだをすりぬけた光は、魔法のように心をゆさぶるでしょう。」

日本語はTUNDOKU、WABISABIと木洩れ日の3つが紹介されている。


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わびさび生と死の自然のサイクルを受けいれ、不完全さのなかにある美を見出すこと。>

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                        つんどく


<PORONKUSEMA(ポロンクセマ) トナカイが休憩なしで、疲れず移動できる距離>フィンランド語
GURFA (グルファ) 片方の手の平にのせられるだけの水の量。>アラビア語



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KALPA(カルパ) 宇宙的なスケールで時が過ぎていくこと。>サンスクリット語

その国の生活や思想が滲んでいて、私たち日本人には思いつけない言葉だ。


くすっと笑ったのがDRACHENFUTTER(ドラッヘンフッター)ドイツ語。

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<直訳すると「竜のえさ」。夫が悪いふるまいを妻に許してもらうために贈るプレゼント。>

左ページの作者のコメント、「火を吐く龍はそうやすやすとは手なづけられません。夫が三時間遅れて帰宅したり、バスケットの試合を見ていて大切な記念日を忘れたり。妻はプレゼントでごまかされるべきではないけど、やっぱり許してしまうものです。」


<SAIDADE(サウダーデ) 心の中になんとなくずっと持ち続けている、存在しないものへの渇望や、または愛し失った人やものへの郷愁> ポルトガル語

 新田次郎の遺作を藤原正彦が完成させた小説『孤愁 サウダーデ』はサウダーデを胸に持ち続け、明治時代の日本に住んだポルトガル人の文筆家・外交官のモラエスが主人公。
日本人にも似た感覚がありそうだ。日本語では「翻訳がむつかしい」くらいなのかもしれない。


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他にも紹介したい面白いことば、美しいことばがたくさんある。できれば今しばらく手元において、お茶でも飲みながら読みたい、あるいはイラストも明るく綺麗なので眺めていたい一冊だ。


翻訳のできない言葉「ピサンザブラ」バナナいつぽん食べ得る時間 晶子


★ピサンザブラ マレー語







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Commented by minaminouozafk at 2018-05-20 22:05
手元において眺めたい絵本ですね。ドラッへンフッター、いいなあ。ポロンクセマ、グルファ…サウダーデは新聞連載中に読んでました。ことばの響きにことばの後ろにあるそれぞれの文化が匂い立つようです。Cs
Commented by minaminouozafk at 2018-05-20 22:51
本日は出前歌会参加のみなさま、お疲れさまでした。
挿絵も楽しい絵本ですね。ボロンクセマ、グルファ、どんな時に使うのか想像が広がります。
私ならドラッヘンフッターでは騙され無いけどなー。だから一人か……。E.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-21 00:09
言葉はそれぞれの国の文化を背負っているのですね。その文化を理解していなければ、言葉を置き換えてもそれは翻訳にはなっていないのだなあと、とても美しい絵本を見ながら考えました。S.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-21 06:20
美しい絵本です。トナカイとかバナナとか…言葉は生活から生まれるものなのですね。こもれび、わびさび、つんどく、この三つの選択おもしろいですね。日本が俯瞰して見えてきます。手にとって読んでみたいです。 N.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-21 08:29
子育てで忙しいなか、このような本を手に取られるお嬢さん良いなって思います。ゆうたくん、おおらかに育つことでしょう。言葉って難しいけど、楽しいですね。Y.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-21 13:27
わびさび、つんどく、こもれびから日本をイメージするとずいぶん不思議な国になりそうですが、それも面白いですね。『孤愁 サウダーデ』は新聞連載小説でしたか、知りませんでした。A
by minaminouozafk | 2018-05-20 00:00 | Comments(6)