母の日 大西晶子


 今日は五月の第二日曜日「母の日」だ、ということで母を詠んだ好きな歌をいくつか並べてみた。

 

 長塚節

たらちね(垂乳根)の母がが釣りたる青蚊帳(あをがや)をすがしといねつたるみたれども             『斎藤茂吉選長塚節歌集』

いくたびか雨にもいでて苺(いちご)つむ母がおよびは爪紅(つまべに)をせり                     同

                   

 北原白秋

母の深き吐息きくとき最も深く母のこころにひたと触(ふ)りたり
                       『雀の卵』                        
急に涙が流れ落ちたり母上に裾からそつと蒲団をたたかれ  

                       『雀の卵』        

母としか湯に入らずと子は云へりひとりひたれり梅の萼見て

                       『風隠集』


 
 宮柊二

わが母と妻の母とがこもごもに訪(と)ひ来(き)ては帰る複雑なり 
                       『小紺珠』                         

三人子をつぎつぎと呼び囲らせばけぶるがにきよし妻なれど母  
                       『日本挽歌』                   

母のごと妻が恋しも見舞妻去りてひと日のいまだ経(た)たねど                     

                       『緑金の森』



  高野公彦

わが母は明治の女、洋服を着ず紅(べに)ささず簡(かん)に従ふ
                         『雨月』                         

母が作り我れが食べにし草餅のくさいろ帯びて春の河ゆく    

                         『雨月』

秋深し籠()もよみ籠()もち山に入りあけびを採らば妣(はは)にか会はむ
                         『水行』                  


 
 小島ゆかり

母を忘れつづけて生きてけふ会へば母はガーゼのマスクしてをり 
                          『獅子座流星群』                     

西へ行く雲の行列老いるさへ母は父より少し遅れぬ   『エトピリカ』

   

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苺を摘む母は節が好むゆえに摘んでいたのだ。 既に病んでいた長塚節の歌には蚊帳のたるみといい、爪紅といい母への感謝がこもり美しい。


白秋の二首目は感傷が、若い白秋らしいと思う。三首目「母としか」は寂し

そうな白秋の入浴が面白い。幼子には父は母には勝てないのだ。


柊二の一首目は二人の母たちの世話をする家長の立場にな

った柊二の責任の重さが「複雑」に込められているのだろう。二首目は聖母子像を思わせる。三首目では妻が母の役割をはたしているが「母」はいつも恋しく懐かしい存在だ。


高野公彦の一首目では明治生まれの凛とした、良き主婦の母の姿が見える。二首目では春の川のような母の豊かさ。三首目「秋深し」では亡くなった後の寂しさと、心に置く母の像のなんと懐かしいこと。


 男性歌人の歌に見える母はみな優しく作者をつつむような母だが、女性歌人の場合はどうなのだろうということで、ゆかりさんの歌を読みなおした。


「ガーゼのマスク」の歌はなぜかずっと心に残っていた歌だ。マスクをした母には病むイメージと同時に、顔がはっきり見えないことで違和感が感じられる。しばらく心にかけていなかった母のマスク姿は作者に弱って来た母という衝撃と、母を思うことをわすれていたことへの自省があるのだろう。すこし不思議さと寂しさのある歌。
 女性は自分自身が母である場合もあり、母に対する思いが男性歌人とは少し異なるのかもしれない。

 時代や背景は違うが同じように母を詠み、それぞれに個性がある。読み比べてしばらく楽しい時間をすごした。



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      享年が白寿にひと月足らざりし母の祥月命日ちかし

                                               晶子
    

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Commented by minaminouozafk at 2018-05-13 20:01
今日は母の日。それに因んだ素晴らしい作品をたくさん紹介いただき、ありがとうございます。母は、男性には聖域、女性には同志、そんな感じがします。私は母に電話をし、娘からはメールをもらいました。あっさりした母の日です。S.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-13 21:13
母の日にたくさんの短歌ありがとうございます。どの歌も心に沁みました。ちょっと感傷的な母の日です。Cs
Commented by minaminouozafk at 2018-05-13 22:16
改めて母親の歌をありがとうございます。
私も昨日、墓参りし、母が好きだった黄色のカーネーションを供えて来ました。
今日は超結社歌会への飛び入り参加、感謝です。会えて良かった。最後まで楽しく盛会でしたよ~。E.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-13 23:00
忙しい毎日に、ふっと母として立ち止まれる日です。超結社歌会、みなさんお疲れさまでした。ブログのことご存知の方が何人かいらっしゃいました。また、来年を約束して盛会のうちに終わりました。Y.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-14 06:38
たくさんの母の歌ありがとうございます。雨の夜、しんみり読みました。息子からの母、娘からの母、たしかに違いがありますよね。 N.
Commented by minaminouozafk at 2018-05-14 16:31
男性には聖なる母、女性には同志。その通りですね。母であることをしばらく意識せずにいましたが、孫誕生いらい母だったりババだったりすることを改めて感じる日々です。昨日の超結社の歌会、見学させて頂きありがとうございました。A
by minaminouozafk | 2018-05-13 07:00 | Comments(6)