2018年 04月 22日
街路樹の花 大西晶子
このところ、福岡に行く機会が多い。気温が上がり、初夏のような日が続いているが、そんなある日天神の〈きらめき通り〉と呼ばれている道路で、街路樹に濃いピンクの花がたくさん咲いているのに気が付いた。桐の花のように枝から花が塔状に立ちあがって咲いている、初めて見る花だ。
似たものと言えば、札幌の蜂蜜店で見かけた蜜を採取する花の写真のトチノキを思い出した。しかし北海道にあるものが九州にもあるのだろうか。トチノキと言えば栃木県の県木だが、こちらもずいぶん遠い。
疑問はすぐに調べるべし、ということで「福岡市、街路樹
天神」と検索したら、ヒットした。福岡市の「街路樹路線概要検索」というサイトの「福岡市中央区の街路樹路線概要」というページに市内の通りの名と街路樹が書かれた一覧表があったのだ。
きらめき通りの街路樹はベニバナトチノキとあった。成程、赤い花で納得した。
トチノキを調べてみたら、日本では東日本特に東北地方に顕著に見られる木で、近縁種のセイヨウトチノキがフランス語名マロニエとしてよく知られるとある。また、トチの漢字表記には栃と橡がある。
〈きらめき通り〉の街路樹のベニバナトチノキ(紅花栃の木)は北米南部原産のアカバナトチノキとヨーロッパ原産のセイヨウトチノキの交雑種だという。いづれにしても、初めて見るトチノキの花、巫女さんたちが〈浦安の舞〉を舞うときに手にする鉾鈴と良く似た形の円錐花序の濃いピンクが青空によく映える。
初夏を思わす青空のもと〈きらめき通り〉の花咲くベニバナトチノキの下を、大半はは若い歩行者たちが足早に、あるいは大きなスーツケースを引きずりながら通り過ぎていく。
閑(しづ)けかるかくのごときを我が云ひて黄の橡(つるばみ)の夕霧のいろ 北原白秋『橡』
この歌の橡は秋の落葉前の木なのだろう。
橡(とち)並木雪ふれる夜をえいえいと呼ぶ木、おうおうと応ふる木あり
高野公彦『水行』
冬の夜になればこんな風景も見られるかもしれない。
紅き花に近寄るわれを足早の若きら避けゆく橡(とち)の樹のした
晶子
春になるとむくむくと葉っぱが生えて大きな手の平が木を覆い、あっという間に花を咲かせます。
高木なのに下の方まで花が咲くのでじっくり観察も出来ます。
ベニバナトチノキ。教えて下さっってありがとう。E.
ベニバナトチノキは、アカバナトチノキとセイヨウトチノキの交雑種なのですね。冬の夜の風景を楽しみに待ちます。Cz.