島旅  百留ななみ


陽差しに春を感じると瀬戸内海の小島に行きたくなる。

蜜柑の檸檬の色と匂いをたっぷりと身体にいれる。


しまなみ海道、とびしま海道あたりは巨人ならかんたんに歩いて渡れそうなぐらい、小さな島がたくさんある。

瀬戸内海には大小727もの島。

大好きな尾道からはじまるしまなみ海道。10年ぶりくらいだろうか。

今回はゆっくり島を巡りたいから生口島に宿泊。

車での旅であるが、なるべく歩きたい。


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因島に渡ったところのパーキングエリア、遊歩道があるから橋のたもとまで歩く。橋は上下二段構造で下の部分が二輪車、歩行者専用だ。途中まで行ったが往復はたいへんなので、とりあえず生口島までいそぐ。

生口島は平山郁夫の出身地で美術館もある。そのすぐ隣に耕三寺。この島を訪れる人のほとんどがこの二つを見たら次の島へとむかう。私も三度目の生口島だが、二度ともそうだった。

美術館での島の風景のスケッチ、そして島ののんびり温かい空気が名残惜しく、次回は泊まってゆっくりしたいの思いがかなっての旅。


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すこし靄がかかっているが春爛漫の最高の天気。

とりあえず、むかしながらの商店街を歩く。平日の10時まえ地元の人もちらほらだ。

海岸に突き当たると海岸線に沿ってのんびりすすむ。


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途中、海岸のベンチで商店街の老舗の鳥屋さんで買ったローストチキンをいただく。温かくてとってもやわらかくておいしい。振り返ると裏山に塔が見える。はじめてなのに懐かしい。たぶん向上寺の三重塔。


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スケッチに描かれている光景。心地よい潮風に心がほぐれ3月のひかりとなる。路地を通り抜け石段をのぼる。古い町並みそのむこうの海。目を閉じればたしかな潮の香り、船のエンジン音が遠ざかっていく。朱がのこる小さな国宝の三重塔を独り占め。もう少し登ると塔も眼下となる。鳶の声がはろばろ聞こえる。



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遠くに多々羅大橋がみえる。渡ってみたい・・・そうだ、自転車だ。さっきレンタサイクルのステーションがあった。自転車は5年前くらいに北海道の原生花園で乗って以来。そのときも20年ぶりぐらいだったがなんとかなった。たぶん大丈夫。かっこいいロードバイクがならんでいるが、ママチャリしか選択肢がない。


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風を感じながら海沿いを走るが、公道だから車も自転車の対向車もやってくる。よろよろふらふらで余裕はまったくない。ごめんなさい。多々羅大橋が近づいてきたが当然ながらずいぶん高いところに掛かっている。っていうことは・・・


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がんばって途中で押しながらママチャリで橋の入口に到着。1,480メートルの多々羅大橋。空も海もコバルトブルー。自転車、歩行者ともにけっこう行き交う。ゆっくり大三島に到着。蜜柑や檸檬の黄色が眩しい、しばらく春の海にこころをあずける、停まっていると海風はかすかだ。ちょっと休憩したらUターン、ふたたび多々羅大橋をわたる。多々羅大橋は途中に愛媛県と広島県の県境がある。


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ひと頑張りしてゆるゆる坂道を下ると、テントで柑橘類を売っている。試食の安政柑とってもおいしい。どうぞどうぞとおかわりいただき、大きな直径20センチはある安政柑を買い、自転車のカゴに。

残念ながら今回のサイクリングはここまで。もっと運転スキルを磨いてから再チャレンジします。

ぼちぼち体力切れの50代は今夜の宿へ。


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塩田の豪商だった堀内家の別荘だった100年以上前の建物。江戸末期の門や庭。ちょっと維持管理たいへんなのだろうと思う寂しさの外観。なかは、それなりにリフォームされて、遮るもののないオーシャンビュー。っていうより、まさに海のなか。目の前は瀬戸田水道、穏やかな瀬戸内の海はなつかしく、時間がゆっくりながれる。大林監督の転校生のロケ地にもなったらしい。


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そろそろ夕暮れ。

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目の前の高根島、瓢箪島、その先の大三島、と大小の島々の影が海面に奥行きをあたえる。オレンジからサーモンピンクに残照がかわったころガス灯が点る。気がつけば部屋は薄暗い。


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そろそろ夕食。畳にテーブルのモダンな個室。床の間には白木蓮。


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太刀魚の南蛮漬けなどのきゅっと冷たい前菜から。そして熱々茶碗蒸し。

お造りは桜鯛に栄螺にカワハギの肝和え。ゲンチョウの煮付け。

お運びのおばちゃんも親切であたたかい。タイミングも絶妙。

浜っ子鍋、味噌仕立ての牡蠣、穴子、河豚、蛸入り。炙り鰆の酢の物。

蛸飯。鰆のお吸い物。デザートはせとかのアイスクリーム。


お品書きが無いのにこんなに覚えている。もしかしたら一つ二つ抜けているかも。派手さはないが、すべて手作りで、ひとつひとつ熱々、冷や冷やで運ばれてくる。


私にとってはとても贅沢な時間だった。


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部屋付き露店風呂はもちろん温泉もない。おしゃれなフロントもロビーもない。部屋も清潔感はあるが古いし足音はひびく。


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この島の温かいゆったりとした時間。ていねいな素材のままの料理。たぶん島の風土がきっと私自身の心の底に共鳴するのだろう。少しだけ身体の奥底がきれいになり元気になった島旅。



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島かげを春の夕陽をその中にとろ()とろとろ濃藍となりぬ





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Commented by minaminouozafk at 2018-03-26 19:09
いつもながら、美しい風景とグルマンな旅の紹介をありがとう。
ママチャリでのサイクリング、頑張りましたね。私は無理~。ゆるゆる歩き派。
これから良い季節になります。次なる旅、楽しみにしてます。E.
Commented by minaminouozafk at 2018-03-26 19:57
同じ頃尾道にいました。よく晴れて海も島もきれいに見えました。ななみちゃんは島でサイクリング中だったかも。行動力さすが!写真がとても美しい。お料理もおいしそう。ゆったりとした良い時間でしたね。Cs
Commented by minaminouozafk at 2018-03-26 22:18
「渡ってみたい・・・そうだ、自転車だ」! これはもう、ななみさんです。この行動力は見ならうべし。そんなふうにして書かれた紀行文が、魅力的でないはずはありませんね。もっと読みたくなります。夕暮れにともるガス灯の色、あたたかい。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2018-03-26 22:22
島旅、ゆっくり充実した時間を過ごしたななみさん。また元気をチャージしましたね。美しい画像の数々。私の身体の奥底も綺麗になったような気がします。S.
Commented by minaminouozafk at 2018-03-26 22:44
ななみさんと一緒に旅を楽しみました。私もずいぶん以前に一度だけしまなみ街道を通ったことがありますが、それこそ生口島は耕三寺、平山郁夫美術館にしか寄りませんでした。こんな美しい夕ぐれや、ちいさな商店街など、再訪して見たいです。ご紹介ありがとう~ A
Commented by minaminouozafk at 2018-03-26 23:06
いつもながらのななみさんの行動力に感服です。これで行った気になってはいけませんね。行かなければ分からない空気感を体験しなければ。瀬戸内の春を味わいました。Y.
Commented by minaminouozafk at 2018-03-27 07:21
ありがとうございます。春の瀬戸内の島の空気は大好きです。自転車はあきらめて歩く方がいいですね。同じ頃、尾道にいらしたなんてシンクロニシティ!うれしいです。 N.
by minaminouozafk | 2018-03-26 07:47 | Comments(7)