2018年 02月 17日
男子厨房に 栗山由利
今年は九州福岡でも珍しく何度か雪景色を見ることができた。その雪も溶け始めたころに、庭隅に残った雪で一歳の孫が作ったご飯?の写真が送られてきた。庭の金柑の実や南天の葉っぱを使った出来映えは、緑の葉っぱと色と位置のバランスもよく、さすがに藝大で学んだママに似てお上手と思ったのは祖母の欲目である。寒いのに手袋もせずに、「中に入ろう!」の声にも耳を貸さずに集中していたそうだ。ただ、微笑ましいなと思った反面、なにかふうっとため息がでるような感覚もあった。台所好きの私でも時には立ちたくないこともある。一般的に台所仕事は女の役割とされている。
昭和ひと桁生まれの母は「女は鍋の底を追いかけているうちがいいんよ。人様にご飯を作ってもらうようになったら、おしまい」と言っていた。現に父が台所で何かを作ったことはない。右のものを左にもしないような人だった。夫はというと、インスタントラーメンとハムエッグは作れる。ハムエッグは私より上手だし、その二つがあれば後は何もいらない。そして息子は一人暮らしの頃から私にポトフや豚の角煮の作り方を聞いてきて、もうすっかり手に入ったようだ。北京で覚えたバラエティに富んだ餃子も美味しい。
さて、たった三代でこの進歩であるから、孫の世代では夫が台所で働くことが増えてくるのだろうか。積極的に社会に関わりたいという女性も増え、また社会もそのパワーを必要としてくるだろう。ただ、「男子厨房に入るべからず」とか「…入るべし」とかでなく「…入ってもいいよ」「…入ったらどうかしら」くらいの緩いスタンスがとれたらいいなと思っている。そして孫にも食事作りの楽しさを知ってもらい楽しく台所に立って欲しい。
私はといえば、台所は私の牙城であるから好きなように楽しんでいる。ただ、包丁研ぎだけは昔のお父さんのようにやって欲しいなあと思う。その時だけは「クリクリ厨房に入ったらどうでしょう」と言ってみようか。きっと「刃こぼれしても文句は言わないよね!」と念押しされるだろうが。
風の子の一歳がつくる雪まんま庭に散らばる冬をあつめて
クリクリ、くりやに入ってくり〜!
駄洒落でした。S.