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「現代文」収載短歌Ⅲ  有川知津子

ああ、まだ閉じている


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これまで、現代文の教科書(第一学習社)の「短歌と俳句」の単元のことを、二度書いた。


今日は、「犬」「猫」「蝶」「走る・歩く」「飲む・食う」という五つの章のうち、

順番どおりに「蝶」の章をご紹介しよう。



 姫蜆蝶(ひめしじみ)のツートンカラーの触覚が人の気配を確め始む

                          真鍋正男

 幾十のからす揚羽のとぶ宙(そら)を夢と知りつつ夢みてゐたり

                          島田修二

 春潮(はるしほ)のあらぶるきけば丘こゆる蝶のつばさもまだつよからず

                          坪野哲久

 生きながら針に貫かれし蝶のごと悶(もだ)へつゝなほ飛ばむとぞする

                          原阿佐緒



歌の下には、姫蜆蝶と揚羽蝶の写真が載っている。


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この「姫蜆蝶」の歌に出合ってからというもの、

白いビーズと黒いビーズを交互に綴ったような蜆蝶の触角を見るたびに、

「ツートンカラー」という語が思い浮かぶようになってしまった。


自分なりの言葉で眺めたい、と思いつつ、

真鍋の語が浮かんでくるのを面白がっていないこともない。


ヒメシジミの生息は、

国内では北海道・本州の山地高原、それも西日本では中国山地にかぎるという。


このあたりでよく見かける蜆蝶、触覚がツートンカラーの蜆蝶はなんというのだろうか。



  容赦なし明日よりはもう十二月鉄棒に身を乗り上げながら

                (*1日フライング……)




――いつのまにか、もうみんな開いていた。


「現代文」収載短歌Ⅲ  有川知津子_f0371014_16155831.jpg


Commented by minaminouozafk at 2017-11-29 19:47
現代文シリーズ楽しみです。
ヒメシジミ、調べました。ツートンの触覚と開いた羽根のシックな色合いも素敵。このあたりのツートンは、ルリシジミでは。
高校生に阿佐緒の歌!!これも佐佐木幸綱さんでしょうか、さすがです。E.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-29 20:17
原阿佐緒の復権、教科書に掲載されているなんて。なかなか情念の濃い歌で、ちょっとビックリ。英子さんと同感です。高校の国語教科書の現在、ちづりん、教えてくださってありがとう。S.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-29 22:41
こんばんは~。英子さん、「ルリシジミ」の情報、ありがとうございます。
ほかにも記事を読んでくださった、かつての蝶少年少女から情報のご提供をいただきました。「ヤマトシジミ」というのだそうです。「るり」も「やまと」もかわいい。 お読みくださってありがとうございます。
早苗さんも書いてくださったけれど、原阿佐緒の歌、軽いおどろきです。高校生のときに授業で学びたかった~。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-30 06:27
シジミチョウ 大好きです。裏表で銀色と紫色なのはたしか雄だけだったような…なぜかヘッセの少年の日の思い出をなつかしく思いました。N.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-30 09:19
昆虫が苦手な私でも蜆蝶だったら怖くはありません。ただ、あまり親しくはなれない…。今時の高校の教科書を見てみたいです。Y.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-30 10:19
この秋、わが家でもよくルリシジミを見かけました。ツートンカラーの触角っってやっぱり印象に残って、ついそう思いながらシジミチョウを見てしまいそうですね。A
Commented by minaminouozafk at 2017-12-01 20:04
同じテーマでも詠む人によってさまざまですね。「ツートンカラー」や蝶の「つばさ」と言う言葉にはっとし、島田作品の幻想にくらりとし、原阿佐緒の傷みにどきどきし…。一首の世界に浸りました。ありがとうございます。Cs
by minaminouozafk | 2017-11-29 05:54 | Comments(7)