人気ブログランキング | 話題のタグを見る

桜川冴子著『短歌でめぐる九州・沖縄』  大西晶子


先日桜川冴子さんが『短歌でめぐる九州・沖縄』という本を送って下さった。
写真が美しく、ぱらぱらめくってみるだけでも楽しく眺めることができる。


桜川冴子著『短歌でめぐる九州・沖縄』  大西晶子_f0371014_22072557.jpg
幅広い読者を想定した「短歌と九州」の本を作ろうとこの本を企画されたと、あとがきにある。
 九州の各県別に、桜川さんの選ばれた歌が挙げられ、それぞれの県に関わりのある万葉から現・近代歌人達のエピソードと歌が紹介されている。


桜川冴子著『短歌でめぐる九州・沖縄』  大西晶子_f0371014_22100621.jpg


そのような構成なので、どこから開いても気軽にその県の歌、歌人達のエピソードを読むことができる。九州の旅に持って行き、その場所で歌人達がどんな感慨を持ったのかを確かめるのも旅を深いものにできるだろう。
 しかし選ばれた歌は決して軽いものではない。


爆音を浴びし身体(からだ)は紙のごとあゆみゆくなり嘉手納〈かでな〉の昼を  吉川宏志

時に応じて断ち落とされるパンの耳沖縄という耳の焦げ色    松村由利子

葬礼はまづ歌詠みて始まるとふこころの種子をもつ種子島   伊藤一彦

その土地に人生きて死ぬ單純を椎葉の村に葛の花咲く    前登志夫

空洞となりたる花の万の眼がうつす水俣の青の深さよ   桜川冴子

一分ときめてぬか俯す黙祷の「終り」といへばみな終るなり   竹山広


などなど、土地の人の辛さやかなしみに共振するような批評性のある歌が見受けられる。
もちろんそればかりではない。


わだつみをほういと飛んでまた一つほういと飛魚(あご)の飛ぶよ天草  高野公彦

カササギを間近にみたるよろこびに船より降りつ柳川は春   大島史洋


このような楽しい歌もある。

歌のえらびかたに著者桜川さんの個性がでているのだろう、いづれも魅力的な歌が挙げられている。


桜川冴子著『短歌でめぐる九州・沖縄』  大西晶子_f0371014_22095201.jpg




桜川冴子著『短歌でめぐる九州・沖縄』  大西晶子_f0371014_22095996.jpg


 それにしても九州にゆかりのある歌人が多いことにあらためて驚いた。
 敬愛する高野さんやゆかりさんの歌が取り上げられているのも同結社の者として嬉しい。
 著者が意図されたように、短歌に興味がある人たちに広くお勧めしたい。



一冊の歌書にさそはれ秋ひと日旅に出でたしたとへば出水  晶子



Commented by minaminouozafk at 2017-11-19 22:14
晶子さん、ご紹介ありがとうございます。
歌もよくて、それに添えられた写真がまたすてきですね。多くの読者との出会いがありますように。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-19 23:58
九州に住んでいながら、知らないことばかり。この一冊があれば心強いですね。ご紹介ありがとうございました。S.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-20 03:13
九州の土地ならではの思いのこもる歌が心に響きます。写真もその土地の空気を伝えていて素敵ですね。高野さんの作品、桟橋の旅を思い出しました。是非手に取りたい一冊。ご紹介ありがとうございました。Cs
Commented by minaminouozafk at 2017-11-20 07:25
すてきな写真と作品、他のページも見てみたいです。九州ってやっぱり良いところだと改めて思いました。ご紹介いただきうれしいです。N.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-20 08:09
歌の読み方、鑑賞の仕方にこのような方向からというのもあるのですね。やはり私はふるさと大分のページを開いてみたいです。写真も美しい。Y.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-20 08:38
土地ごとに忘れてはいけないこと、思いを感じさせてくれる一冊ですね。E.
by minaminouozafk | 2017-11-19 10:14 | Comments(6)