2017年 10月 03日
下戸同盟 藤野早苗
会うたびごとに言われ、何度訂正してもなかなか記憶の上書をしていただけない事がある。
「いけるクチでしょ?」という誤解。
何度か宴席でご一緒したことがある、という方に言われることが多い。私の責任ではないのだが、やや造作の荒い男顔がいかにも酒豪といった風情を醸しているのかもしれない。で、そのたびに、「いえいえ、全然飲めないんですよ、残念ながら。」と返すのであるが、「またまた、ご冗談ばっかり。」と当然のようにビール瓶をボトムズアップして来られるので、言ったことを聞いてなかったんかい!と、プチ切れしてしまうこともしばしば。で、最近は宴席へ行く時も車を使い、「今日は運転しないといけないので。」とお伝えすることにしている。
いけるクチの方々には信じられないことだろうが、飲めない人間にとってアルコールは毒である。最近は個々人の肝臓のアルコール分解酵素の有無についてそこそこ知られるようになってきた。欧米人にはほぼ100パーセント、その酵素はあるらしいのだが、モンゴロイドには約20パーセントの酵素を持たない人間がいるのだそうだ。私はそれ。パッチテストをすると、腕の内側がアルコールに反応してたちまち真っ赤になるタイプ。実際に飲むと、心拍数が上がり、強烈な頭痛と吐き気が襲ってくる。味がどうこう言う以前の問題で、大袈裟でなく、命の危険を感じる状態になってしまうのだ。
あな醜賢しらをすと酒飲まぬ人をよく見れば猿にかも似る 大伴旅人
昔も今も、飲む人飲まない(飲めない)人の間の断裂は深い。
でも、
白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり 若山牧水
飲めないからこそ、牧水の一首は憧れであって、「酒好き」は決して批難の対象ではない。酒を注げない相手は困る、と言われては仕方ないが、私としては酒席に加わること自体は好きなのだ。
先日報告させていただいた筑紫歌壇賞贈賞式の懇親会での出来事。宴も酣、席をあちこち移動してみなさまにご挨拶してまわっていると、三人の方々とご一緒できた。一人はちづりん、こと有川知津子さん。言わずと知れた「南の魚座」メンバーで、この時は一緒に酒席を巡っていたのだった。二人目は、古島信子さん。「心の花」の歌人で、もう20年くらい前、宮崎のシンポジウムでご一緒させていただいた方。最近はフェイスブック上で親交を深めている。三人目は竹中優子さん。角川短歌賞受賞者で、現在福岡市在住。「未来」所属。今年の3月、学校と折り合いが良くない子どもたちに、表現の場を提供する「教室の隅っこ」プロジェクトを企画した竹中さん。不登校関連のNPOに所属している関係で、そのプロジェクトに参加させていただいたご縁がある。
4人、車座になったところで、杯を満たそうとした途端、全員が「あ、私飲めないんで。」・・・びっくり。
おおらかな印象の古島さんはいかにも酒豪、といった感じだし、竹中さんはじっくり味わって御酒を召す感じ。ちづりんが飲めないって・・・、え、そうだっけ?自分が飲めないことを忘れられていたらプチ切れするくせに、ちづりん、ごめん。もう忘れません。外見で飲める、飲めないを決められる理不尽を言いながら、古島さん、竹中さんごめんなさいね。
しばし、ウーロン茶で歓談。お酒を飲まないのがデフォルトの人間同士、けっこう盛り上がり、その場で「下戸同盟」を結成。4人、手に手を取って、次回の集結日を期して別れたのだった。
「下戸同盟」。今後の展開が楽しみである。今のところ会員は上記4名。希望者は委細面談の上、入会可否を通達します(なんで上から?)。下戸、上戸に関わらず(関わらんのかい!)、希望者は藤野までお申し出ください(笑)。
三日月に満たせる御酒をささ召され秋の夜風が杯を傾く
クリクリ
逆に羨ましい。新同盟結成おめでとー。さぁーて名乗りを挙げよ、下戸の皆さ~ん。ですね。私は、やっぱりスイーツより焼鳥~E.
次回の結集日、楽しみです。サンドイッチおいしそう! Cz.